経済産業省
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経済産業省設備投資調査

当面の民間設備投資計画について

平成12年12月5日
通商産業省

通商産業省が、本年10月1日の時点で行った同省所管主要業種の設備投資に関する調査によると、平成12年度及び13年度の企業の設備投資は以下のとおりである。(調査回答企業1,299社)

1. 平成12年度設備投資計画の動向

(1) 全産業の動向(図-1)

 平成12年度の民間設備投資計画は、製造業、特に電子機械、一般機械等の情報化関連産業において設備投資額の増加が著しく、前回調査から2.4%上方修正され、前年度比では9.4%増と4年ぶりに増加する見込みとなった。

 産業別には、製造業は対前年度比14.9%増(前回調査からの修正率は8.3%増)、非製造業では同6.0%増(修正率は0.7%減)となった。

なお、11年度実績は前年度比4.1%減と3年連続の減少となった。

 このように、平成12年度の民間設備投資計画は、大幅な増加の見込みであり、要因として考えられるものは以下のとおり。

  1. 企業のバランスシートの改善への取り組みが続く中で、企業収益は全体として回復しておりキャッシュフローも増加している。また、世界的な情報化の進展による情報機器の需要の増加等により生産が増加傾向にあるなど、企業の投資意欲を高める環境が整備された。
  2. 製造業では、パソコン、携帯電話等の情報機器の需要の増加により、半導体、液晶等の電子機械を中心として生産が増加しており、こうした産業では生産能力増強のための設備投資が活発化している。
  3. 非製造業では、リース、卸・小売等で持ち直しの動きが見られる。

(2) 製造業の業種別動向(図-2、3、4、5)

1.基礎素材産業の動向(図-6)
 基礎素材産業の平成12年度設備投資は、対前年度比2.7%増と4年ぶりの増加となる見込みである。
 業種別に見ると、非鉄金属(対前年度比24.9%増)、窯業・土石 (同31.4%増)、紙・パルプ(同17.9%増)等が大幅に増加するものの、引き続き設備過剰感の強い鉄鋼(同16.8%減)、石油精製(同15.8%減)等は減少する見込みである。
2.加工組立産業の動向(図-7)
 加工組立産業の平成12年度設備投資は、対前年度比23.2%増と2年連続の増加となる見込みである。
 業種別に見ると、情報機器等の需要が増加している電子機械(同57.6%増)、一般機械(同26.1%増)等すべての業種で増加する見込みである。

(3) 非製造業の業種別動向(図-8、9、10、11)

 非製造業の平成12年度設備投資は、対前年度比6.0%増と2年連続の増加となる見込みである。なお、電気を除く非製造業では、9.3%増となる見込みである。

 業種別に見ると、リース(同6.5%増)、卸・小売(同36.7%増)等が増加する見込みである。

(4) 企業規模別の動向

1.大企業の動向
 大企業(資本金10億円以上、調査対象の設備投資全体における構成比;92.8%)の平成12年度設備投資は、対前年度比9.3%増加する見込みである。
 業種別に見ると、製造業では、鉄鋼(対前年度比16.9%減)、石油 精製(同17.5%減)等が減少するものの、電子機械(同59.3%増)が増加することから、製造業では、対前年度比14.8%増加する見込みである。また、非製造業でも、リース(同6.6%増)、卸・小売(同33.8%増)等が増加することから、非製造業全体では、対前年度比5.8%増加する見込みである。
2.中堅企業等の動向
 中堅企業等(資本金1億円以上かつ10億円未満、調査対象の設備投資全体における構成比;7.2%)の平成12年度設備投資は、対前年度比 10.5%増加する見込みである。
 業種別に見ると、製造業では18.9%増加、また、非製造業でも8.4%増加する見込みである。

(5) 目的別設備投資の動向

 上記のように、平成12年度製造業の設備投資は対前年度比で増加が見込まれているが、目的別に見ると、以下のとおりとなっている。

1.製造業全体(図-12)
 製造業の目的別設備投資(構成比)を見ると、「生産能力増強」のシェアが増加する一方で、「合理化・省力化」のシェアは減少する見込みである。
2.基礎素材産業(図-13)
 基礎素材産業の目的別設備投資(構成比)を見ると、製造業全体と同様に「生産能力増強」のシェアが増加している。
3.加工組立産業(図-14)
 加工組立産業の目的別設備投資(構成比)を見ると、製造業全体と同様に「生産能力増強」のシェアが増加している。

(6) 研究開発投資の動向

 研究開発は、付加価値を生み出す源泉であり、新しい商品・サービスの開発の基礎となるものであることなどから、その動向は大いに注目される。

 アンケート結果によれば、研究開発を行う上で不足している点としては、「研究員」(47.4%)、「専門的な知識・情報」(47.2%)といったソフト面に関する回答が多くなっており、「研究開発費(設備投資以外のもの)」(30.7%)、「研究開発設備・施設」(26.9%)といったハード面に関する回答を上回っている。

(7) 情報化関連投資の動向

 産業界における情報化の進展は、企業の生産性向上、競争力強化等の観点から、その動向が注目される。

 調査結果によれば、平成12年度の情報化関連投資額は、前年度比で+1.4%と小幅な増加にとどまる見込みであるが、平成13年度については、前年度比で+13.6%と大幅に増加すると見込まれる。一方で、設備投資額に対する情報化関連投資額の割合は、11-12年度共通回答企業ベースでは、平成11年度8.8%に対して平成12年度8.6%と割合は減少するが、12-13年度共通回答企業ベースでは、平成12年度10.1%に対して平成13年度11.8%と増加する見込みとなっている。

 情報化関連投資の目的としては、第一に重点をおいているものとして、「生産の効率化」(43.2%)を挙げる企業が最も多く、次に「管理部門の効率」(28.3%)を挙げる企業が続いている。

 こうした中で、過去3年間に行った情報化関連投資による企業収益改善の効果としては、「期待したほどではないが、売上げの増加、コスト削減等の効果は出ている」と回答した企業が41.3%と最も高かった。

 今年度行う情報化関連投資により、企業収益改善の効果が出る時期については、「1~2年で、期待どおり(売上げの増加、コスト削減等)の効果が出る」が31.4%、「3~5年で、期待どおり(売上げの増加、コスト削減等)の効果が出る」が23.9%という結果であった。

 情報化関連投資の実施状況を見ると、従来とあまり変化はなく、「執務環境のOA化」、「CAD/CAM」等は現在実施中も含めて実施の割合が高いが、相手方企業や営業所間の協力が必要でシステムが大がかりになりがちな「物流取引上のEDI」、「EC」等については未実施の割合が高い。「ネットワーク環境整備」の実施の割合が高い事と考え合わせると、企業内での情報化関連投資の着手がほぼ終了し、今後、徐々にではあるが整備されつつあるネットワークを利用した営業所間及び企業相互の情報化に移行していくものと思われる。

2. 平成13年度設備投資計画の動向(図-15、16、17、18)

 平成13年度の設備投資計画については、投資計画を未決定とする企業が多く不確定要素が大きいが、前年度比で2.1%の減(製造業5.3%減、非製造業1.1%減)が見込まれている。

3. 企業の資金調達を巡る動向

(1)資金調達・運用の内訳

 景気は緩やかな改善傾向にあるものの、アンケート調査によれば経済システムの懸念項目として、消費の低迷(63.4%)が依然として高い水準にあるなど厳しい状況も見られ、また、平成10年秋には86%を占めた金融システム不安も沈静化していたが、今回若干増加した(25.8%、前回22.5%)。
 企業の資金調達については、企業収益の回復を受け、内部資金も増加しており(12年度対前年度比+12.5%)、IT関連業種を中心に設備投資は増加している(12年度+9.4%)が、企業の資金需要は若干の増加にとどまっており(12年度+1.6%)、各企業とも財務体質改善のために積極的に借入金の返済を進めている(12年度構成比-13.6%)。
 一方、調達した長期資金の運用面では、その大半が設備投資に使われており、関係会社への投融資は若干増加(構成比10.0%、前年度8.8%)している一方、海外への投融資は減少(構成比4.4%、前年度6.5%)している結果となっている。

(2)間接金融に係る状況

 企業に対するアンケート調査によれば、今後の借入残高の見通しにおいて、「増加する」と回答した企業は減少(17.8%、前回18.7%、前々回 21.2%)し続けている一方、「減少する」と回答した企業は着実に増えており(48.3%、前回47.4%、前々回44.1%)、設備投資等による新規の借入需要は依然として伸びず、財務体質の改善のために積極的に借入金抑制を進めている傾向が伺われる。
 銀行等による資金調達に関する要望としては、「より効率的な条件(金利、期間等)での資金の供給」(79.6%、前回80.5%)が圧倒的多数を占めており、次いで「金利や手数料体系等の横並び体質の見直し」(35.3%、前回35.5%)を求める声が多い。
 また、取引金融機関に対する要望としては、前回と同様、「安定的・効率的な資金供給」(79.6%、前回80.5%)、「多様な資金調達・運用手段等に対するアレンジメント機能」(53.9%、前回55.0%)が多数を占めている。また、事業再構築への関心を背景に、「取引先紹介、企業提携・買収に関する情報提供機能」を挙げる企業が増加している(28.3%、前回26.9%)。

(3)直接金融に係る状況

 直接金融に対する関心は相変わらず高く、直接金融による資金調達を行う意向を持っている企業は43.1%(「今後も積極的に利用する」:9.9%、「今後も現状程度の利用を行う」:23.9%、「現在利用はしていないが、今後利用する」:9.3%)となっているものの、貸し渋りの緩和、外部資金需要の低迷を背景に、その利用に消極的な企業も若干増加している(39.5%、前回39.2%、前々回38.2%)。
 直接金融に対する具体的な要望としては、「金融仲介機関の競争促進」(28.7%、前回29.3%)、「社債等に係る手数料体系の見直し」(29.2%、前回36.2%)が多数を占めた。また、「社債、流通市場の整備(社債登録法の新たな制度への移行等)」(19.7%、前回14.4%)、「発行・流通段階におけるCPのペーパレス化」(8.6%、前回7.9%)、「減損会計の導入等、会計基準の適正化及び国際的調和の推進」(6.6%、前回5.9%)を挙げた企業が増加している点が注目される。

(4)政府系金融機関に対する要望

 政府系金融機関が積極的に融資すべきとして期待されている分野として、「物的担保は乏しくとも将来性のあるベンチャー・ビジネス」(55.4%、前回 65.4%)を挙げた企業が前回と比べて比率を下げているものの相変わらず高い水準にある。また、情報インフラ支援に対するニーズの増大を反映して「高度情報化基盤の整備等新社会資本」(44.9%、前回37.8%)及び「大規模な研究開発投資」(32.8%、前回28.5%)を挙げる企業が増加している一方、「経営難に陥っている中小企業」(36.2%、前回46.4%)を挙げる企業が減少していることが特徴的な動きとなっている。


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《参考資料》の目次(PDFファイルの内容)

業種別設備投資動向概要
  1. 製造業
    1. (1) 繊維
    2. (2) パルプ・紙
    3. (3) 化学
    4. (4) 石油精製
    5. (5) 窯業・土石
    6. (6) 鉄鋼業
    7. (7)-1 非鉄金属製錬・精製業
    8.   -2 アルミニウム圧延業
    9.   -3 電線・ケーブル製造業
    10. (8) 一般機械工業
    11. (9) 電子機械工業
    12. (10) 電気機械工業
    13. (11) 自動車工業
    14. (12) 自動車部品工業
  2. 非製造業の設備投資動向
    1. (1) 電気業
    2. (2) 都市ガス
    3. (3) 鉱業(非金属鉱業)
    4. (4) 卸売業
    5. (5) 小売業
    6. (6) リース
    7. (7)-1 情報サービス
    8.   -2 クレジットカード業、割賦金融業
    9.   -3 余暇関連産業

その他参考図表

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最終更新日:2007.10.1
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