鉱工業生産の低下を反映して稼動率指数は低下したものの、電子部品・デバイス工業の増加によって4か月ぶりの上昇となった5月の生産能力指数
2015.7.21
平成27年5月の製造工業稼働率指数は96.4で、前月比▲3.0%低下と4か月連続のマイナスとなりました。5月の鉱工業生産指数が、同じく前月比で▲2.1%の低下となっておりますので、生産の低下、すなわち稼働率の低下ということになります。
他方、5月の生産能力指数は95.5で、前月比0.1%上昇と4か月ぶりの前月比上昇となりました(2月が横ばいなので、前月比低下は2か月連続の低下に留まる)。
稼働率は、11業種で前月比低下、3業種で上昇となっています。
稼働率低下業種の中で、特に製造業全体の稼働率を引き下げたのは、輸送機械工業でした。これに次いで寄与が大きい「はん用・生産用・業務用機械工業」の影響度合いの3倍以上の寄与を、輸送機械工業が見せています。また、稼働率の低下寄与が大きい順に2位から6位までの業種の低下寄与合計と、輸送機械工業の低下寄与が同等程度であり、この輸送機械工業の低下寄与は、製造業全体の稼動率低下のほぼ半分を占めることになります。
5月の乗用車の生産は前月比▲6.2%低下、生産者出荷も▲7.7%低下と芳しくない状況にありましたので、その通り稼働率にも反映されたということになります。
前月比で4か月ぶりに上昇した生産能力では、2業種で前月比上昇、2業種で低下、横ばいは10業種となりました。
生産能力が上昇したのは、電子部品・デバイス工業と電気機械工業の2業種でした。特に、電子部品・デバイス工業の生産能力上昇の影響度合いが大きくなっています。この生産能力上昇は、実際に設備を増設して能力を増強しているとのことです。
5月の鉱工業生産や6月の予測調査の結果からは、ここ1、2か月の電子部品・デバイス工業の生産の勢いは、あまり良いとは言えませんし、5月の稼働率も昨年末から今年の1、2月までの時期と比べると落ちてはいます。しかし、電子部品・デバイス工業の5月の生産能力指数は、前月比0.5%上昇となっています。前年同月比のマイナスもこの5月で止まりました。5月の電子部品・デバイス工業の能力変動については、見直し要因ではなく、実際に設備を増強しているようです。電子部品・デバイス工業については、足元での生産実績や7月までの生産予測は今一つではありますが、この先更に底を超えた部分では生産見通しは悪くないということなのかもしれません。
ただし、生産能力-稼働率の循環関係(参考図表集12ページ参照)を見ると、5月の状況は大きく左に動いています。要すれば、動きが遅れる生産能力は横ばいで、稼働率が低下していることになります。グラフの右にあります「17年Ⅰ」という点が、前回生産能力が大きく上昇する転換点なのですが、確かに上昇局面に移るまでに多少点が行ったり来たりはするようです。現在の局面が、この「行ったり来たりする局面」に過ぎず、昨今の報道のように国内設備投資が盛んになって、生産能力指数が継続的に上昇していく局面が到来することを期待したいところです。
○データ公表冊子
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2010_201505nj.pdf
○参考図表集
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/sanko_201505.pdf
○鉱工業指数のしくみと見方
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/pdf/b2010_mechanism_iipj.pdf
平成27年7月21日
経済産業省 経済解析室長 石塚
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