平成27年6月速報の鉱工業生産は前月比0.8%上昇も、平成27年第2四半期は前期比低下
2015.7.30
平成27年6月の「生産」は、季節調整済指数98.0、前月比0.8%上昇と2か月ぶりの上昇、「出荷」についても指数値96.3、前月比0.3%上昇と、生産同様2か月ぶりの上昇となりました。一方、「在庫」は指数値114.4、前月比1.3%の上昇となったものの、「在庫率」は指数値113.5、前月比▲1.6%の低下となりました。
このように、生産、出荷は前月比で上昇、在庫も上昇、しかし在庫率は低下ということで、6月だけをみる限り生産活動は悪くない状況です。ただし、5月の鉱工業生産の前月比は▲2.1%低下であり、この分を6月の生産上昇は補ったとは言えません。また、平成27年4-6月期の鉱工業生産は3期ぶりに前期比低下となっており、指数水準も昨年10-12月期と同様の水準まで下落しました。このような状況を踏まえ、6月の鉱工業生産の基調判断については「一進一退」と据え置きました。
6月の鉱工業生産を業種別にみますと、15業種中、上昇9業種、低下6業種となっており、このうち、生産の上昇に寄与した上位3業種は、輸送機械工業、化学工業(除く医薬品)、プラスチック製品工業となっています。
輸送機械工業については、乗用車販売が内外需共に5月からは回復しており、6月の生産をけん引していました。生産上昇寄与3位にプラスチック製品工業が上がってくるのも、自動車生産向けの部品類やシート類の生産が好調であったことによります。ただし、輸送機械工業の在庫が増えており、今後の出荷動向にもよりますが、やはり「造りすぎている」印象はぬぐえません。
生産寄与が2位の化学工業については、化粧品類の生産が好調です。6月の専門量販店調査(速報)の結果でも、ビューティケア商品がドラッグストアの販売上昇のけん引役であったことが伺えます。新製品の投入効果や外国人観光客の影響もあるのかもしれませんが、身の回りに支出する余裕が家計に出てきている兆候かとも思えます。
出荷については、15業種中、上昇10業種、低下4業種、横ばい1業種となっていますが、出荷の業種別の動きは少し生産とは違っており、生産面では必ずしも寄与が大きくなかったはん用・生産用・業務用機械工業が出荷上昇に最も影響を及ぼしました。これは、水管ボイラや一般用蒸気タービンといった電力業界向けの品目の出荷が好調であったことが主な要因です。
他方、在庫ですが、6月の在庫上昇の要因となったのは、はん用・生産用・業務用機械工業のショベル系掘削機械や建設用クレーンといった土木建設機械と輸送機械工業の乗用車などでした。土木建設機械はオフロード規制の経過措置期間ということで、現在、積極的に在庫積み増しを行っているためです。この土木建設機械の在庫変動を取り除くと、鉱工業全体の在庫は今年の年明けから前月比で低下傾向となっていました。
しかし、この6月は輸送機械工業の在庫上昇の影響が大きかったこともあり、土木建設機械を除いても、在庫は前月比でプラスになり、在庫、そして在庫率が高水準となっているのが気掛かりなところです。
なお、7月実施の生産予測調査の結果では、7月見込みは化学工業等の増加見込みにより前月比0.5%上昇、8月見込みも電子部品・デバイス工業等の増加見込みにより前月比2.7%上昇という予測となっています。この見込み値から生産実績は2%程度下方修正されるのが常なのですが、今月6月の生産実績は6月初旬の見込み値に近い生産上昇を実現しましたし、7月の生産計画も先月から修正されていないので、比較的確度の高い生産計画となっているようにも見受けられます。いずれにせよ、在庫水準が高い状況にある中、予測調査の結果のように、生産が2か月連続で上昇するのか否か、引き続き注視が必要かと思います。
平成27年7月30日
経済産業省 経済解析室長 石塚
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