輸出向けは上昇したものの、国内向け生産財の低下から停滞が続く平成27年7月の鉱工業出荷
2015.9.15
鉱工業出荷指数と貿易統計を再編集して、国内生産されたものが国内と輸出のどちらに向けられているかを示す指標として、「鉱工業出荷内訳表」を作成しています。7月分の出荷内訳表の結果を紹介します。
平成27年7月の鉱工業出荷確報値は、前月比▲0.4%と2か月ぶりの低下となりました。うち、輸出向け出荷は前月比4.3%で、2か月連続の上昇です。一方、国内向け出荷は前月比▲1.6%低下と、6月に5か月ぶりに前月比上昇となったものの、7月に再び低下に転じてしまいました。基調的にみると、輸出向け出荷は、年初2月からの落ち込みを脱し、横ばい程度に戻ってきていますが、7月の国内向け出荷は、引き続き弱含んでいると言わざるを得ません。
◎財別の動向
7月の国内向け出荷を大きく引き下げたのは生産財で、前月比▲2.6%低下でした。鉱工業生産の停滞や発電量の低下など、生産活動への原材料投入が減少した形です。国内向け出荷の前月比低下は、ほぼ生産財の低下によるものと言って良いと思います。
最終需要財では、資本財、建設財、そして耐久消費財の国内向け出荷は前月比上昇となりましたが、非耐久消費財は前月比低下となりました。
いずれにせよ、企業、家計が日々使用する生産財や非耐久消費財の出荷が悪く、企業や家計が資産的にストックとして利用する投資財や耐久消費財の出荷が伸びていました。このように、最終需要財に対する需要は出てきていますが、在庫調整のために生産は抑制されており、そのため生産財の出荷がふるわず、国内向け出荷の不調を招いているという様相です。
一方、輸出向け出荷では、非耐久消費財のみが前月比で低下しており、それ以外の財分類は前月比で上昇しました。寄与としては、最終需要財、つまり完成品の輸出の上昇寄与の方が、原材料や部品である生産財の上昇寄与よりも大きくなっています。
◎業種別の動向
7月の輸出向け出荷については、輸送機械工業、鉄鋼業、プラスチック製品工業など14業種中11業種において前月比上昇となりました。特に、輸送機械工業の輸出向けの上昇寄与は、2位の鉄鋼業の5倍以上と非常に大きく、7月の輸出向け出荷の原動力となっています。
一方、国内向け出荷については、石油・石炭製品工業や電子部品・デバイス工業など14業種中8業種において前月比低下となりました。国内向け出荷においては、国内の鉱工業生産の停滞(調整)や電力事業における天候要因などから、原材料やエネルギー源となる財が低下要因となっています。
輸送機械工業は出荷全体でも前月比2.1%上昇で、そのうち輸出向け出荷では、鋼船の伸びが大きく寄与しています。また、駆動伝導・操縦装置部品なども上昇に寄与しています。鋼船の輸出向け出荷は、前月比で8割を超える増加ですし、駆動伝導・操縦装置部品を含む自動車部品の輸出も増加しています。ただ、輸出向け出荷への上昇寄与は大きくありませんが、乗用車も増加しており、輸出向け出荷の上昇に貢献していました。他方、国内向け出荷は、前月比▲0.4%低下でした。乗用車の国内向け出荷は前月比プラスでしたが、船舶関係と自動車部品が全体を押し下げています。輸送機械工業の生産は、生産調整のため、前月比▲1.4%低下ですので、輸送機械工業の国内向け生産財出荷が低迷するのは仕方がありません。
輸送機械工業を例に取りましたが、業種別の動きをみても、生産財の国内向け出荷が弱かったことを確認できます。
○結果の概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/b2010_result-2.html
○鉱工業出荷内訳表、総供給表(いわゆるバランス表)をちょっとながめてみました

(出荷内訳表の見方を解説する資料)
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/iip_bl_gaiyou.pdf
○データ冊子

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result-2/pdf/b2010_blnc.pdf
○ポイント

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/utiwake/result-2/pdf/b2010_blnc_getsujigaiyo.pdf
○図表集

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/sanko_201507.pdf
平成27年9月15日
経済産業省 経済解析室長 石塚
<おしらせ>
○本メールに記載された数値や内容は他に転載、引用していただいて構いません。また、クリエイティブコモンズCCBY( http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ )の条件でご利用ください。
○問合せ先
経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室 鉱工業指数班
Tel : 03-3501-1511(代表)(内線2853)、03-3501-1644(直通)
FAX : 03-3501-7775
E-MAIL:bzl-qqcebc■meti.go.jp (■を@に置き換えてください)