機械工業と非機械工業で明暗を分けた7月の稼働率指数
2015.9.17
平成27年7月の製造工業稼働率指数は96.9で、前月比▲0.2%低下となりました。6月の稼働率は今年の1月以来5か月ぶりの前月比上昇となりましたが、稼働率上昇は2か月続くことはありませんでした。結局、7月の鉱工業生産指数が前月比▲0.8%低下となりましたので、生産の低下、すなわち稼働率の低下ということになっています。
稼働率指数の業種別動向をみると、7業種で前月比低下、6業種で上昇、1業種で横ばいとなっています。稼働率低下業種の中で、特に製造業全体の稼働率を引き下げていたのは、電子部品・デバイス工業とはん用・生産用・業務用機械工業の2業種です。これに電気機械工業、情報通信機械工業、輸送機械工業と続き、全ての機械工業の稼働率が大きく低下(機械工業の前月比▲1.6%低下)しました。生産調整とその調整による中間投入の国内需要減が7月の稼働率指数を悪くしています。
一方、稼働率が上昇した業種をみると、化学工業、石油・石炭製品工業といった非機械工業業種の上昇(非機械工業の前月比2.5%上昇)が大きく寄与しています。両業種とも、7月は生産増、出荷減、在庫増となっており、プラントの稼働調整(定期修理など)のため、7月の稼働状況が高くなっています。
このように、年明け以降、どちらも下がり気味であった機械工業と非機械工業の稼動率指数は、ここにきて差が出て来ています。
7月の生産能力指数は95.3で、前月比▲0.1%低下と2か月連続の低下となりました。生産能力指数は、昨年の8月以降、今年の2月まで前月比でマイナスのない状態が続いていましたが、3月以降は5月のプラスを除いてマイナスが続いています。
この生産能力指数の低下は、非機械工業の生産能力の低下によるものです。7月も前月比▲0.3%低下と2か月連続の低下で、横ばいを含めれば平成26年3月以降、前月比でプラスになったことはありません(17か月間プラスなし)。
一方、機械工業の生産能力指数は、前月比0.1%上昇です。今年の3月に前月比▲0.1%低下がありますが、これを除けば昨年8月以降プラス基調が続いています。
ただし、機械工業の生産能力増強が、非機械工業の生産能力削減(設備の廃棄)を補えなくなっており、製造工業全体では、生産能力は低落傾向となっています。
生産能力指数を業種別にみると、5業種で低下、2業種で上昇、7業種が横ばいとなっています。生産能力低下業種の中で、最も寄与が大きいのは化学工業でした。廃業や設備廃棄といった設備整理が行われており、7月だけで前月比▲0.8%低下となっています。
一方、上昇業種は、はん用・生産用・業務用機械工業と電子部品・デバイス工業といった、この1年の能力増強サイドの常連が並んでいます。ただ、7月の能力上昇については、生産体制の見直しによるものが多く、設備を新規に増設するようなものは多くありません。
稼働率の面では、生産能力を削減している非機械工業で水準感も方向感も良好です。一方で、機械工業は今年の2月以降、稼働率は下がり気味で推移していますが、多少能力増強の勢いは鈍化しているものの、その増強の動きは変わっていません。
設備廃棄を進めた結果、稼働状況が良くなっている非機械工業と、生産体制の増強を続けているために生産が落ちてきて、稼働状況が悪くなっている機械工業とが対比されます。
○「生産能力・稼働率って何ですか?」(生産能力・稼働率指数のしくみを紹介しています)

https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/pdf/iip_capa-ope_gaiyou.pdf
○データ公表冊子

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2010_201507nj.pdf
○参考図表集

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/reference/sanko_201507.pdf
○鉱工業指数のしくみと見方

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/pdf/b2010_mechanism_iipj.pdf
平成27年9月17日
経済産業省 経済解析室長 石塚
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