輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業が上昇を牽引し、稼働率指数は2か月連続の上昇
2015.12.16
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平成27年10月の製造工業稼働率指数は98.7で、前月比1.3%上昇と2か月連続の前月比上昇となりました。10月の鉱工業生産指数が、前月比で1.4%上昇となっていますので、生産の上昇、すなわち稼働率の上昇ということになっています。
機械工業と非機械工業(除.機械工業)にわけると、機械工業の稼働率が前月比2.2%上昇と2か月連続の上昇で、9月と同様に全体の上昇幅よりも、特に大きく上昇しています。非機械工業の稼働率は前月比▲0.2%低下と2か月ぶりの低下です。
機械工業の稼働率は、9、10月と前月比2%を超える改善が続いています。水準そのものは、いまだ前年同月比マイナスが今年の1月から10か月連続で続いているので、決して高いとは言えませんが、昨年後半のような機械工業の高い稼働率に戻っていくのか要注目かと思います。
業種別では、7業種で前月比上昇、残り7業種が低下と、鉱工業生産と同様な動きとなっています。稼働率上昇業種の中で、特に製造業全体の稼働率を引き上げていたのは、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業でした。この2業種は鉱工業生産においても生産上昇寄与が大きかったのですが、稼働率の面でもこの2業種がけん引役でした。
逆に、低下に寄与したのが、非機械工業の化学工業と機械工業の電子部品・デバイス工業でした。電子部品・デバイス工業は、生産自体は増加しているものの、その勢いは弱く、10月は生産能力が定期的な見直しのために上昇していたこともあり、稼働率は低下しています。電子部品・デバイス工業の稼働率は、前月比に加えて前年同月低下幅も今年で最も大きい▲6.5%低下でした。昨年10月の電子部品・デバイス工業の出荷を支えていた輸出向け出荷の勢いが弱いことから懸念材料ではあります。
次に、10月の生産能力指数です。指数値は95.3で、前月比0.2%上昇と5か月ぶりに前月比上昇となりました。前年同月比もプラス0.1%上昇とかろうじて前年水準を上回っていました。
上昇業種は、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業、電気機械工業などです。ただ、10月の生産能力の上昇については、ライン編成の見直し等によるものであり、設備の量が増えたわけではない一方で、低下業種については、繊維工業や非鉄金属工業といった素材系業種において、設備廃棄、工場閉鎖といった実際に稼働設備量が減少することによる生産能力の低下が散見される状態です。
生産能力指数を機械工業と非機械工業とで分けると、非機械工業の生産能力は横ばい推移ですが、機械工業は前月比プラス0.4%上昇と3か月ぶりに上昇しています。この上昇幅は、今年の1月以来の高さですが、その内実は「見直し」によるものであり、物理的に設備が増えているというものでありませんので、多少割り引く必要があります。機械工業の稼働状況が昨年の同時期のレベルに戻っていませんので、設備を大きく増強するという環境にはないのかもしれません。
非機械工業については、窯業・土石製品工業や金属製品工業などの生産能力は上昇となったので、繊維、非鉄金属、鉄鋼といった業種の生産能力は低下していましたが、非機械工業としては横ばいに留まりした。これで3か月連続横ばいとなっています。
ただ、先ほどいいましたように10月の生産能力低下業種では、実際に設備廃棄などの結果、生産能力が低下している一方で、生産能力上昇業種では実際の設備が増えているということではありませんでした。よって、非機械工業の生産能力が3か月連続で横ばいになっていることをもって、素材系業種における設備廃棄の動きが「止まった」と評価することは避けたいと思います。
平成27年12月16日
経済産業省 経済解析室長 石塚
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