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旅客運送業へのコロナ禍の影響とは;特に航空旅客運送業への影響が顕著

新型コロナウイルス感染症(以後、感染症という)の流行により打撃を受けた業種は多く、旅客運送業もそのうちのひとつです。今回はこの旅客運送業について、第3次産業活動指数を用いて感染症の流行による内訳業種毎の動きの違いなども含め、みていきたいと思います。

旅客運送業はいずれも軒並み低下。なかでも航空旅客運送業への影響が著しい

第3次産業活動指数における旅客運送業は、大きく分けて、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業の4つの内訳業種から成っています。これら4業種の動きを比較してみると、感染症の流行前は、航空旅客運送業が目立った上昇をみせていました。

しかしながら、感染症流行開始後の落ち込みはこの航空旅客運送業が最も大きく、その指数値は2020年5月に5.4と、それまでの最低水準だった2013年4月の87.1からは想像もできないほどの低下をみせました(2015年=100、季調済指数)。4業種いずれも、この2020年5月を底にして翌6月以降は上昇に転じましたが、回復の勢いは、航空旅客運送業が最も弱く、10月時点でも極めて低い水準です。

その要因として、航空旅客運送業は、国内航空旅客運送業と国際航空旅客運送業の2つの内訳業種から成っていますが、国際旅客運送業のウエイトが4割弱と高いため、国際的な人の往来の激減の影響を他の旅客運送業より大きく受けていることが考えられます。

国際的な人の往来消滅が、航空旅客運送業に大きく影響

航空旅客運送業について、国際と国内の動きの違いをみてみると、感染症の流行前は、国内よりも国際の方が勢いよく上昇していました。感染症の影響により、国際・国内とも本年2月以降、大きく低下しましたが、落ち込みからの回復は国内の方が早く、国際はいまだに底を這っているような状態です。

国内に関しては、本年4月に全国に発出された緊急事態宣言が、5月に段階的に解除されました。また、6月19日には都道府県をまたぐ移動自粛要請が解除されたことに加え、7月下旬からは旅行費用の一部が助成される“GoToトラベル事業”が開始された効果もあってか、6月以降は比較的順調な回復をみせています。

一方の国際に関しては、感染症の世界的大流行を背景に、海外への渡航者も日本への入国者も激減しているため、回復度合いは微々たるものとなっています。

訪日外客数及び出国日本人数の動向比較

実際に「訪日外客数」と「出国日本人数」の推移をみてみましょう。両者の動きを比較すると、感染症流行前は訪日外客数の上昇が非常に大きく、上昇角度は国際航空旅客運送業のそれに似通っていることがわかります。

訪日外客数は、感染症流行の影響により、本年2月以降激減していましたが、7月以降、ビジネス渡航再開の動きが徐々に進んでいることもあり、10月には7か月ぶりに2万人を超えるなど、ほんの少しずつですが回復の兆しが見えてきています。出国日本人数も含め、今後の更なる復調に期待したいところです。

旅客運送業の今後

旅客運送業における感染症の影響は、近距離の通勤・通学等の需要から、より長距離の観光需要・ビジネス需要まで、陸・海・空問わず幅広い業種に及んでおり、これらいずれの業種も、感染症拡大前の水準への回復にはかなりの時間を要することと思われます。

先に触れた“GoToトラベル事業”については、年末年始は一旦全国で停止となりましたが、 観光庁の発表や宿泊旅行統計から試算すると、それによる延べ宿泊者数は10月速報値で全体の4割強にのぼり、延べ宿泊者数の前年同月比の減少幅も大幅に改善していることや(6月:マイナス66.1%→10月:マイナス26.8%)、加えて日帰り旅行も対象であること、さらに人々の外出意欲にもたらす間接的効果も考えると、旅客運送業の回復にも効果が出ているものと思われます。

しかしながら、やはり、各国が厳しい入国制限を継続している現況下においては、ビジネス需要も観光需要も国際的な人の往来の大幅回復はまだまだ見込めない状態であり、加えて、オンライン会議等の普及や人の接触機会を避ける行動様式が続く可能性、感染症の世界的流行収束まで時間を要する可能性なども考えると、旅客運送業、中でも国際の割合の高い航空旅客運送業の低迷は長く続いてしまうかもしれません(注)。来夏の東京オリンピック・パラリンピックや今後のワクチン普及も契機に、感染防止と国際的な人の往来回復の両立を期待したいところです。

(注)国際航空運送協会(IATA)の見通しでは、感染症拡大前(2019年)の水準への世界の航空需要の回復は、有償旅客キロベースで2024年になるとされています。

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最終更新日:2020年12月23日
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