- 統計
- 簡易延長産業連関表
- 集計結果又は推計結果
- 1992年産業連関表(延長表)
簡易延長産業連関表
1992年産業連関表(延長表)
1995年6月22日(木)
調査統計部統計解析課
はじめに
通商産業省は、最新時点の経済構造を反映した産業連関分析を可能にするため、昭和48年(1973年)以降、毎年延長産業連関表を作成・公表している。「延長産業連関表」は、11省庁の共同事業で5年毎に作成される産業連関表(基本表)をベースとして、当省が最新の統計情報等により独自に延長推計したものである。
今回公表する「1992年産業連関表(延長表)」は、総務庁から公表された「平成2年(1990年)産業連関表」(平成6年3月公表)ベースで延長推計した第1回目の延長表(行525×列409部門)となる。
なお、以下では、特にことわりのない限り「名目値ベース」を用いている。
1. 92年のわが国経済構造の特徴
- 1-1.92年経済の特徴
- (1) 後退局面下で伸び率は大幅に鈍化したものの、建設やサービス業等の内需型産業のリードで、拡大を続けた「国内生産額」
- (2) 円高・一次産品価格の低下や製造業の低迷を反映して、低い伸びにとどまった「中間投入額」
- (3) 景気低迷を反映して労働分配率が上昇した「付加価値額」
- (4) 今回の成長の主たる原動力は、「公的総固定資本形成」と「民間消費支出」の内需項目
- (5) 後退局面と円高・一次産品価格の低下で減少となった「輸入額」
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1-2.92年の生産誘発効果は、90年よりも低下した
92年の国産品に対する生産誘発効果は、90年当時よりも低下する方向に変化した。 - (1) 92年の国産品に対する逆行列係数表を90年と比較すると、47部門中8部門で全産業に与える生産誘発力が「0.05ポイント以上」も低下している。
- (2) 生産誘発力が低下した部門は、生産誘発力の大きい製造業や建設業に多い。
全産業に及ぼす生産誘発力が、90年との比較で0.05ポイント以上も低下した部門をみると、上位2部門は、素材型の「金属製品」と「鉄鋼」、3位は建設のうちの「その他の土木」((注)公共事業以外の土木)、以下、加工型の「一般機械」、「その他の輸送機械」((注)自動車以外の輸送機械)、「民生 用電気機械」、建設のうちの「公共事業」等と、生産誘発力の大きい製造業や建設部門での生産誘発力の低下が目立つ。 - (3) どの部門に対する生産波及力が大きく低下したかをみると、素材型の「鉄鋼」部門への波及力が大きく低下しており、各産業の鉄鋼離れが進行している。
- 1-3.低い伸びにとどまった92年の最終需要による「生産誘発額」の伸び
- (1) 92年の最終需要の伸びの鈍化にともない、最終需要による「生産誘発額」の伸びも大幅に鈍化し、85年~90年の平均年率(5.1パーセント増)の約半分程度(対90年平均年率2.6パーセント)となった。
- (2) 92年の総生産額(909.3兆円)が、どの最終需要項目に何パーセント依存したかを大きい順にみると、以下のとおり。
「民間消費支出」(生産誘発依存度46.8パーセント)、「民間総固定資本形成」(同22.4パーセント)、「輸出」(同12.0パーセント)、「公的総固定資本形成」(同8.1パーセント)、「政府消費支出」(同7.0パーセント)の順である。
92年の生産誘発依存度を90年当時と比較すると、生産の「公的総固定資本形成」と「民間消費支出」への依存度がそれぞれ1.1パーセントポイントづつ高まった。 - (3) 90年に対する92年の生産誘発額の平均年率をみると、総合経済対策で顕著な伸びを示した「公的総固定資本形成」による伸び(平均年率9.8パーセント)が際だつ。総合経済対策による生産の下支え効果は大きかったといえよう。
- 1-4.92年の各最終需要項目の1単位当たりの生産誘発力は低下傾向にある
- (1) 92年の各最終需要項目の1単位当たりの生産誘発力をみると、90年に比べて軒並み低下した。「最終需要合計」の生産誘発係数は1.727倍で、90年当時からの低下幅は0.029ポイント低下となる。内需と外需に分けてみると、「国内最終需要計」はやや低く1.678倍(同0.028ポイント低下)であるのに対し、「輸出」は2.204倍(同0.019ポイント低下)と、最終需要項目中の生産誘発力が最も高い。また、90年からの低下幅も国内最終需要計よりも輸出の方が軽微で済んでいる。
- (2) 内需の主な項目をみると、生産誘発額ベースでは伸びを高めた「公的総固定資本形成」(1.870倍)や「民間消費支出」(1.585倍)ではあるが、最終需要額の規模の相違を除いた1単位当たりの生産誘発力をみると、他の最終需要項目同様やはり低下している。
「公的総固定資本形成」(90年との差0.051ポイント低下)の低下幅の方が「民間消費支出」(同0.014ポイント低下)よりも大きいのは、生産誘発力が大きく低下した「公共事業」や「その他の土木建設」などのウエイトが高いためである。これに対して、「民間消費支出」は、元々、生産誘発力がそれほど大きくない対個人サービスや社会サービス等のウエイトが高く、かつ、これらの部門の生産誘発力の低下幅は小幅にとどまっていることによる。
また、低迷を続けている「民間総固定資本形成」の生産誘発係数は、1.929倍(同0.044ポイント低下)で、内需項目の中での生産産誘発力は依然として最大ではあるが、90年と比べてその生産誘発力の低下が目立つ。 - (3) また、経済対策の効果を高めるとの観点から、公共投資の生産誘発効果を引き上げるためには、「公的総固定資本形成」の内容を土木関連投資から電子・通信機器関連投資などの生産誘発係数のより大きいものへシフトさせることが必要である。
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(「輸出マトリックス」(商品別×輸出先地域別)による産業連関分析)
1-5.92年の「地域別輸出額」がわが国の生産に及ぼした影響の大きさ - (1) 92年の輸出額(普通貿易)43.0兆円のうち、対米輸出は12.1兆円(シェア28パーセント)、対東アジア・アセアン輸出は11.7兆円(同27パーセント)、対EC輸出は7.9兆円(同18パーセント)。
90年に対する伸び率は、対米輸出が7.2%低下、対東アジア・アセアン輸出が11.6パーセント、対EC輸出が2.4パーセントと、対東アジア・アセアン輸出が高い伸びを示している。 - (2) 東アジア・アセアン向け輸出では、生産額の5パーセント以上を輸出しているものに「一般機械」や「重電機器」などの資本財生産部門が上位を占める。
- (3) 各地域別輸出1単位当たりのわが国への生産誘発の大きさをみると、「米輸出」(2.341倍)、「対EC*1輸出」(2.278倍)、「東アジア・アセアン輸出」(2.149倍)の順となる。
- (4) 各地域別輸出による「生産誘発額」および「生産誘発依存度」をみると、対米輸出による生産分が28.4兆円(全生産額に占める依存度3.1パーセント)、対「東アジア・アセアン輸出」による生産分25.1兆円(同2.8パーセント)、対EC輸出による生産分18.1兆円(同2.0パーセント)。
- (5) 「対米輸出」による間接波及を含めた生産誘発依存度が高い部門をみると、「自動車」、「電子・通信機器」に加え、直接の対米輸出ではそれほど大きくなかった「その他の電気機器」、「ゴム製品」の同依存度が10パーセント前後にまで上昇するのが注目される。
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(産業連関分析による「生産変動要因分析」)
1-6.もっぱら最終需要の変化によって、拡大した92年の「実質生産額」(90年価格) - (1) 92年の実質生産額は、90年に比べ20.9兆円増加したが、これはもっぱら最終需要の変化(需要規模、項目間構成比、商品構成比等の変化)によってもたらされた。
- (2) なかでも「消費」の変化による生産拡大の寄与が最大(寄与率99.9パーセント)で、増加額のほとんどを占める。
- (3) 85~90年当時の生産拡大に最も寄与した「民間総固定資本形成」が、一転して大きくマイナスに作用したが、総合経済対策による「公的総固定資本形成」の増加による生産拡大がこれをほぼ相殺した形となった。同対策の効果は景気の下支えとして一定の効果があったと評価できる。
- (4) 「国産品の投入構造から計算される逆行列係数(生産乗数)の変化」による生産波及効果は、90年当時よりも低下したため、生産拡大にはマイナスに寄与(同79.7パーセント低下)した。
- (5) この傾向は85~90年にも観察され、この時期は87年以降の拡大局面の方が長かったことから、92年が単に調整局面だからという循環的要因による一過性のものではなく、巨額の経常黒字の長期化等にみられるような構造的要因も作用しているものと考えられる。
- 2-1.産業連関分析による10パーセントの輸出減少が発生した場合の影響
- (1) 「生産額」は、全産業で1.2パーセントの低下、鉱工業では2.3パーセントの低下。減少額が大きいのは、自動車、電子・通信機器鉄鋼、一般機械の他、商業、運輸、対事業所サービス業等の非製造業にも影響が及ぶ。
- (2) 「付加価値」は、全産業で1.0パーセントの低下、鉱工業では2.1パーセントの低下。
- (3) 「輸入額」も、1.0パーセント低下する。減少額が大きい品目は、石炭・原油・天然ガス、非鉄金属、電子・通信機器。
- (4) 雇用者数にも多大な影響が及び、全体で49万人の余剰が発生、うち、製造業では26万人、サービス業では23万人の余剰労働力を抱え込む。
- (5) 輸出減少問題は決して「製造業」のみの問題ではなく、「サービス業」にも大きくのしかかる問題である。
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2-2.産業連関分析による価格波及分析
輸入物価(円高と国際価格)の変動が国産品価格に与える影響 - (1) 「円高」による国産品価格への引下げ圧力は、全商品(財・サービス)の平均価格を0.73パーセント引き下げる方向に作用する。
- (2) 同時に、「国際価格」の上昇圧力が全商品(同)の平均価格を0.66パーセント押し上げる方向に作用する。
- (3) 正味の輸入物価の変動が「国産品価格」に及ぼす効果は0.1パーセントの下げにとどまる。
- (4) 低下率の大きい品目は、「石油・石炭製品」(1.0パーセント低下)、「製材・木製品」(0.97パーセント低下)、「その他の輸送機械」(0.54パーセント低下)、「電子・通信機器」(0.38パーセント低下)等。
なお、現実の国内卸売物価は、計算値以上に低下しているものが多い。 - 2-3.85、90年、92年の投入割合にみる原材料構成の変化(90年実質価格)
- (1) 素材系の生産財では、「鉄鋼」の投入割合が低下し、「化学製品」や「プラスチック製品」の投入割合が上昇するという構造変化が生じており、この傾向は、素材型業種や建設業の投入構造に顕著に現れている。
- (2) 部品系の「電子・通信機器」の投入割合は、「一般機械」を除くすべての[加工型業種]で増加傾向にある。
- (3) [加工型業種]では、個々の業種段階での自部門投入も増加傾向にある。
これは、最終製品に対する電子部品等の投入割合が構造的に増加していることを反映したものと考えられる。
他方、「鉄鋼」の投入割合は、[加工型業種]でも減少傾向にある。
最終更新日:2007.10.1