- 統計
- 外資系企業動向調査
- 結果の概要
- 第32回 調査結果(1997年度実績)-平成12年3月刊行-
- 財務状況-平成11年7月6日公表-
外資系企業動向調査
財務状況-平成11年7月6日公表-
- 経常利益は2年連続の減益
- 82年度以前に参入した企業が堅調
- アメリカ系企業は4年ぶりの減益に
- 日本で高い各種コスト
- アメリカ系企業は製造業が、ヨーロッパ系企業は非製造業が10%台
- アメリカ系企業で高い配当率
- ロイヤルティ、配当金の増加続く
- 安定性の高い米欧系企業
経常利益は2年連続の減益
- 97年度の集計企業の経常利益は、全産業で8542億円(前年度比2.3%減)と、2年連続の減益となった。このうち製造業は6461億円(同6.2%増)で増益となったが、非製造業は2081億円(同21.8%減)で大幅な減益となった。1企業当たりでみると、全産業は5億65百万円(同8.1%減)で、93年から95年までは増益傾向であったが、96年に減益に転じて以来2年連続の減益となっている。このうち製造業は12億79百万円(同2.4%減)、非製造業は2億7百万円(同25.5%減)で、ともに減益となっている(第2-(3)-1-1表、第2-(3)-1-1図)。
- 外資経常利益率(注)をみると、全産業は3.1%で前年度比横ばい、製造業は4.7%で、同0.3ポイント上昇、非製造業は1.5%で同0.4ポイント低下となっており、非製造業の外資経常利益率は製造業の1/3程度となっている(第2-(3)-1-2図)。
- 売上高経常利益率(注)をみると、全産業は4.3%(前年度比0.5ポイント低下)、製造業は5.0%(同0.2ポイント低下)、非製造業は3.0%(同1.1ポイント低下)となっており、集計企業は製造業、非製造業ともに全法人企業の売上高経常利益率を上回って推移している(第2-(3)-1-3~4図)。
- (注)
- ・ 外資経常利益率=集計企業経常利益/全法人企業経常利益×100
- ・ 売上高経常利益率=経常利益/売上高×100
96年度 | 97年度 | 前年度比 | ||
---|---|---|---|---|
集計企業経常利益 | 8,744 | 8,542 | -2.3 | |
製造業 | 6,084 | 6,461 | 6.2 | |
非製造業 | 2,660 | 2,081 | -21.8 | |
1企業当たり集計企業経常利益 | 6.15 | 5.65 | -8.1 | |
製造業 | 13.11 | 12.79 | -2.4 | |
非製造業 | 2.78 | 2.07 | -25.5 | |
全法人企業経常利益 | 277,878 | 278,058 | 0.1 |
[出典]全法人企業:法人企業統計(大蔵省)
82年度以前に参入した企業が堅調
- 参入時期別に1企業当たりの経常利益をみると、82年度以前に参入した企業が13億5千万円と最も高く、次いで83~85年度の2億6千万円、86年~94年度の8千万円~1億8千万円、95~97年度の1千万円の順になっており、参入から年数の浅いうちは利益が小さいことがわかる(第2-(3)-1-5図)。1企業当たりの売上高経常利益率をみると、89~91年度に参入した企業が5.1%と最も高く、次いで82年度以前の4.9%、92~94年度の3.4%などとなっている(第2ー(3)-1-5図)。
- 参入時期別に赤字企業の比率をみると、参入直後の立ち上がり期にある企業は5割近くが赤字企業となっているが、参入後3~10年程度では20%台で推移し、それ以上経過すると赤字企業は10%台に減少している(第2-(3)-1-6図)。
アメリカ系企業は4年ぶりの減益に
- 1. 集計企業の経常利益を母国籍別にみると、
- a. アメリカ系企業は、全産業が5994億円(前年度比8.8%減)で、4年ぶりの減益となった。このうち製造業は4796億円(同2.1%増)、非製造業は1198億円(同36.0%減)となっている。売上高経常利益率をみると、全産業は4.8%(同0.9ポイント低下)、製造業は5.7%(同0.5ポイント低下)、非製造業は3.0%(同1.9ポイント低下)となっており、非製造業は3年ぶりにヨーロッパ系企業を下回った。
- b. ヨーロッパ系企業は、全産業が2382億円(同15.0%増)で、製造業1547億円(同17.8%増)、非製造業835億円(同10.3%増)ともに増益となった。売上高経常利益率は、製造業は3.8%と前年度を0.2ポイント上回ったが、非製造業は同0.5ポイント低下し、全産業では3.8%と同0.1ポイントの低下となっている。
- c. アジア系企業は、全産業が29億円で、製造業1億円、非製造業28億円ともに黒字に転じているが、売上高経常利益率は、全産業で全法人企業の1/4強となっている(第2-(3)-2-1~3図、第2-(3)-2-1表)。
- 2. 業種別にみると、製造業では電気機械が2302億円で最も高く、次いで化学の811億円、医薬品の768億円、一般機械の715億円の順となっており、非製造業では商業が1964億円となっている。売上高経常利益率をみると、製造業では医薬品が8.2%と最も高く、次いで電気機械の7.0%、一般機械の6.1%などとなっており、非製造業では商業が3.2%となっている(第2-(3)-2-4図、第2-(3)-2-1表)。
アメリカ | アジア | ヨーロッパ | 世界計 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
96年度 | 97年度 | 増減率 | 96年度 | 97年度 | 増減率 | 96年度 | 97年度 | 増減率 | 96年度 | 97年度 | 増減率 | ||
全産業 | 6,569 | 5,994 | -8.8 | -8 | 29 | - | 2,071 | 2,382 | 15.0 | 8,744 | 8,542 | -2.3 | |
製造業 | 4,697 | 4,796 | 2.1 | -2 | 1 | - | 1,313 | 1,547 | 17.8 | 6,084 | 6,461 | 6.2 | |
非製造業 | 1,873 | 1,198 | -36.0 | -6 | 28 | - | 757 | 835 | 10.3 | 2,660 | 2,081 | -21.8 |
[出典]全法人企業:法人企業統計(大蔵省)
日本で高い各種コスト
- 1. 売上高に対する各費用項目の比率をみると、
- a. 全産業では給与総額比率が8.2%と最も大きく、以下、減価償却費比率、荷造運搬費比率、賃借料比率、研究開発費比率の順で、それぞれ1%台となっており、費用比率計は14.1%となっている(第2-(3)-3-1図)。
- b. 製造業では給与総額 (注)比率が9.2%で最も大きく、次いで減価償却費比率2.4%、荷造運搬費比率1.7%、研究開発費比率1.6%、賃借料1.2%となっており、費用比率計は16.1%となった。これを全法人企業(費用比率計24.2%)と比べると、集計企業は賃借料を除き、全ての費用比率で全法人企業を下回っている。特に、給与総額比率は3.6ポイント下回っており、研究開発費比率は2.2ポイント、減価償却費は1.4ポイントそれぞれ回っている。また、日系海外現地法人(同14.4%)と比べると、減価償却費を除き、全ての費用比率で集計企業が日系海外現地法人を上回っている。地域別に日系海外現地法人をみると、集計企業の費用構造は北米における日系現地法人に近いかたちとなっている(第2-(3)-3-3図)。
- 2.
- (注)
- ・ ここでいう「給与」とは、「売上原価に含まれる給与」と「販管費に含まれる給与」を合算したものを指す。また、国内法人と現地法人のコスト構造を比較する場合、人件費については、内外における機能分担(本社機能、研究開発機能)に大きく依存するため、単純に内外を比較するには限界がある。
- [注]
- (1)売上高費用比率=費用/売上高×100
- (2)ここでいう「給与」とは「原価に含まれる給与」と「販売費に含まれる給与」の合算
- [出典]全法人企業:企業活動基本調査(平成10年速報、通産省)
アメリカ系企業は製造業が、ヨーロッパ系企業は非製造業が10%台
- 集計企業の自己資本利益率(注)は、全産業で10.3%と前年度に比べ1.5ポイント低下した。このうち製造業は10.9%、同0.4ポイント上昇とわずかな伸びとなったが、非製造業は8.5%、同7.8ポイントの大幅な低下となった。全産業について時系列で全法人企業と比べると、全法人企業は95年度からの3年間は3%台で推移しているのに対し、集計企業は95年からは10%台と全法人企業の3~4倍の水準で推移している(第2-(3)-4-1~3図)。
- 母国籍別にみると、欧米系企業のROEが高く、アメリカ系企業では製造業が12.0%、ヨーロッパ系企業では非製造業が10.9%と10%台になっている。全法人企業と比べると、欧米系企業は全産業で全法人企業の3倍強になっているが、アジア系企業は全産業で全法人企業の6割程度となっている(第2-(3)-4-4図)。
- (注)
- ・ 自己資本利益率(ROE)=税引後当期利益/自己資本×100
アメリカ系企業で高い配当率
- 集計企業の配当性向(注)は、全産業が71.3%(前年度比13.4ポイント上昇)となり、このうち製造業は68.0%(同5.2ポイント上昇)、非製造業は85.9%(同39.0ポイント上昇)となった。これを全法人企業と比べると、非製造業が4年ぶりに全法人企業の配当性向を上回り、製造業ではその差が拡大した。このため全産業では2年ぶりに全法人企業を上回った(第2-(5)-1~3図)。
- 配当率(注)は、全産業が19.1%(前年度比2.6ポイント上昇)、製造業は20.5%(同3.5ポイント上昇)、非製造業は15.3%(同0.1ポイント上昇)となり、製造業は9年ぶりに20%台の配当率となった。全産業を時系列で全法人企業と比べると、全法人企業の配当率は5~8%台と低めで推移しており変動幅は小さい。これに対し、集計企業の配当率は10~30%台と高めに推移しており変動幅は大きい(第2-(3)-5ー4~6図)。
- 内部留保率(注)は、全産業で42.5%となっている。これを時系列で全法人企業と比べると、集計企業は92年までは全法人企業を下回っていたが、93年に全法人企業が大幅に低下したことから、95年までの3年間は集計企業が上回り、96年以降は拮抗している(第2-(3)-5-7図)。
- 母国籍別にみると、配当性向、配当率はアメリカ系企業が最も高く、次いでヨーロッパ系企業となっている。一方、内部留保率はアジア系企業が最も高く、次いでヨーロッパ系企業、アメリカ系企業の順となっている(第2-(3)-5-8図)。
- (注)
- ・ 配当性向=配当金/税引後当期利益×100
- ・ 配当率=配当金/資本金×100
- ・ 内部留保率=当期内部留保額/税引後当期利益×100
ロイヤルティ、配当金の増加続く
- 集計企業の外国側出資者への支払総額は、全産業が5968億円(前年度比16.1%増)で、製造業は4932億円(同20.5%増)、非製造業は1036億円(同1.1%減)となっている。全産業の内訳をみると、ロイヤルティ(技術供与料、特許権使用料等)は3549億円、配当金は2354億円となり、93年度以降ともに増加傾向で推移している(第2-(3)-6-1~3図)。
- 母国籍別にみると、アメリカ系企業の支払総額は4899億円で全体の8割強を占めており、このうちロイヤルティが3049億円で6割強を占めている(第2-(3)-6-4図)。
- 外資比率別の支払額をみると、外資比率100%の子会社は3970億円と最も多く、次いで、50%の子会社の1007億円、50%超100%未満の子会社の878億円の順になっている。1企業当たりの支払額をみると、外資比率100%の子会社は4億円を超えており、50%~100%未満の子会社は3億円台となっているのに対し、1/3超50%未満の子会社では、1億円に満たない(第2-(3)-6-5~6図)。
安定性の高い米欧系企業
- 集計企業の固定比率(注)は、全産業で136.1%(前年度比2.8ポイント上昇)となった。このうち製造業は137.3%(同2.0ポイント上昇)、非製造業は131.9%(同5.6ポイント上昇)となっており、安定性はともに低下している。これを業種別に全法人企業と比較すると、製造業では輸送機械、電気機械などを中心に全法人企業を上回っている業種が多いが、石油を含めた製造業全体でみると集計企業は全法人企業を下回る(第2-(3)-7-1図、第2-(3)-7-1表)。
- 固定長期適合率(注)をみると、全産業は100.8%(前年度比3.9ポイント上昇)で、製造業101.2%(同1.0ポイント上昇)、非製造業99.7%(同13.3ポイント上昇)となっており、安定性はともに低下している(第2-(3)-7-2図)。
- 自己資本比率(注)をみると、全産業は30.4%(前年度比1.1ポイント低下)で、製造業32.5%(同0.7ポイント低下)、非製造業24.9%(同1.6ポイント低下)となった。これを業種別に全法人企業と比べると、製造業では石油、一般機械が全法人企業を上回っているが、それ以外の業種では全法人企業を下回っている。非製造業では商業、サービス業が全法人企業を上回っている(第2-(3)-7-3図)。
- 母国籍別にみると、固定比率、固定長期適合率ともアメリカ系企業、ヨーロッパ系企業の比率は低く安定しているが、アジア系企業の比率は高く、特に固定比率は欧米の約2倍になっている。また、アジア系企業は自己資本比率の低さに加え借入金依存度(注)も高いため安定性は低いものとなっている(第2-(3)-7-4図)。
- (注)
- ・ 固定比率=固定資産/自己資本×100
- ・ 固定長期適合率=固定資産/(自己資本+長期借入金)×100
- ・ 固定比率は自己資本をもって、固定長期適合率は(自己資本+長期借入金)をもって、どの程度固定資産(設備投資)を賄っているかを表す企業の財務安定性をみる指標で、100以下が理想とされる。
- ・ 自己資本比率=自己資本/総資本×100
- ・ 借入金依存度=借入金総額/総資本×100
固定資産 | 自己資本 | 総資本 | 借入金総額 | 短期借入金 | 固定比率 | 固定長期適合率 | 自己資本比率 | 借入金依存度 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全産業 | 54,417 | 39,989 | 131,576 | 31,787 | 17,811 | 136.1 | 100.8 | 30.4 | 24.2 | ||
製造業 | 42,448 | 30,917 | 95,182 | 23,219 | 12,174 | 137.3 | 101.2 | 32.5 | 24.4 | ||
化学 | 5,552 | 4,804 | 12,989 | 2,937 | 1,508 | 115.6 | 89.1 | 37.0 | 22.6 | ||
医薬品 | 2,615 | 2,383 | 7,447 | 2,183 | 1,050 | 109.7 | 74.4 | 32.0 | 29.3 | ||
石油 | 9,745 | 5,167 | 19,027 | 4,265 | 2,475 | 188.6 | 140.1 | 27.2 | 22.4 | ||
一般機械 | 4,103 | 3,794 | 9,664 | 1,344 | 906 | 108.1 | 97.0 | 39.3 | 13.9 | ||
電気機械 | 9,259 | 7,309 | 21,600 | 7,031 | 3,201 | 126.7 | 83.1 | 33.8 | 32.6 | ||
輸送機械 | 5,963 | 3,141 | 11,346 | 2,047 | 986 | 189.8 | 141.9 | 27.7 | 18.0 | ||
非製造業 | 11,968 | 9,072 | 36,394 | 8,568 | 5,683 | 131.9 | 99.7 | 24.9 | 23.5 | ||
商業 | 10,315 | 7,641 | 30,358 | 7,254 | 4,834 | 135.0 | 102.5 | 25.2 | 23.9 | ||
サービス業 | 823 | 613 | 2,421 | 650 | 372 | 134.3 | 92.4 | 25.3 | 26.8 |
最終更新日:2007.10.1