経済産業省
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外資系企業動向調査

財務状況(平成12年7月28日公表)


経常利益は2桁の減益

 98年度の集計企業の経常利益は、全産業で7286億円(前年度比14.7%減)と、3年連続の減益となった。このうち製造業は5438億円(同15.8%減)、非製造業は1848億円(同11.2%減)で、ともに2桁の減益となった(第2-(3)-1-1表)。

 利益
表2-(3)-1-1表 集計企業経常利益及び全法人経常 (億円、%)
  97年度 98年度 前年度比
集計企業経常利益 8,542 7,286 ▲14.7
  製造業 6,461 5,438 ▲15.8
非製造業 2,081 1,848 ▲11.2
1企業当たり集計企業経常利益 5.65 5.26 ▲ 6.9
  製造業 12.79 11.95 ▲ 6.6
非製造業 2.07 1.99 ▲ 3.9
全法人企業経常利益 278,058 211,642 ▲23.9

[出典]全法人企業:法人企業統計(大蔵省)

 外資経常利益率(注)は全産業が3.4%(同0.3ポイント上昇)、製造業が6.0%(同1.3ポイント上昇)、非製造業は1.5%で横ばいとなっている(第2-(3)-1-1図)。

経常利益。外資経常利益率の推移

 売上高経常利益率(注)は全産業は3.8%(同0.5ポイント低下)で2年連続の低下となっているが、製造業、非製造業ともに全法人企業の売上高経常利益率を上回って推移している(第2-(3)-1-2図)。

売上高経常利益率・GDP成長率推移

 1企業当たりの経常利益は、全産業は5億26百万円(同6.9%減)で3年連続の減少となった。これを参入時期別にみると、83年度以前に参入した企業が最も高く、次いで84~86年度となっており、参入から10年程度は利益は少ない(第2-(3)-1-1表、第2-(3)-1-3、4図)。

1企業当たり経常利益の推移

1企業当たり経常利益・利益率

 参入時期別に赤字企業の割合をみると、参入直後の立ち上がり期にある企業は約5割が赤字企業となっているが、参入後3~5年程度で30%台に減り、それ以降は20%台と、年が経るごとにその割合は減少している(第2-(3)-1-5図)。

経常利益赤字企業比率

(注)・外資経常利益率=集計企業経常利益/全法人企業経常利益×100
・売上高経常利益率=経常利益/売上高×100

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ヨーロッパ系企業が大幅な減益

集計企業の経常利益を母国籍別にみると、

  1.  アメリカ系企業は、全産業が5466億円(前年度比8.8%減)で、2年連続の減益となった。このうち製造業は4263億円(同11.1%減)、非製造業は1203億円(同0.4%増)となっている。
     売上高経常利益率をみると、全産業は4.4%(同0.4ポイント低下)、製造業は5.0%(同0.7ポイント低下)、非製造業は3.0%(同横ばい)となっている。
  2.  ヨーロッパ系企業は、全産業が1723億円(同27.7%減)、製造業1126億円(同27.2%減)、非製造業597億円(同28.5%減)と大幅な減益となった。
     売上高経常利益率をみると、全産業、製造業はともに3.0%(同0.8ポイント低下)非製造業は2.9%(同0.9ポイント低下)となっている。
  3.  アジア系企業は、全産業で25億円と集計企業の0.3%のシェアで、売上高経常利益率は、全産業で0.5%と全法人企業の1/3の水準となっている(第2-(3)-2-1、2表、第2-(3)-2-1図)。
第2-(3)-2-1表 母国籍別経常利益 (単位:億円、%)
  アメリカ系企業 アジア系企業 ヨーロッパ系企業 世界計
97年度 98年度 増減率 97年度 98年度 増減率 97年度 98年度 増減率 97年度 98年度 増減率
全産業 5,994 5,466 ▲ 8.8 29 25 ▲13.8 2,382 1,723 ▲27.7 8,542 7,286 ▲14.7
  製造業 4,796 4,263 ▲11.1 1 3 200.0 1,547 1,126 ▲27.2 6,461 5,438 ▲15.8
非製造業 1,198 1,203 0.4 28 22 ▲21.4 835 597 ▲28.5 2,081 1,848 ▲11.2
第2-(3)-2-1表 母国籍別売上高経常利益率 (単位:%)
  アメリカ アジア ヨーロッパ 世界計 全法人企業
97年度 98年度 増減 97年度 98年度 増減 97年度 98年度 増減 97年度 98年度 増減 97年度 98年度 増減
全産業 4.8 4.4 ▲0.4 0.5 0.5 0.0 3.8 3.0 ▲0.8 4.3 3.8 ▲0.5 1.9 1.5 ▲0.4
  製造業 5.7 5.0 ▲0.7 0.2 2.2 2.0 3.8 3.0 ▲0.8 5.0 4.4 ▲0.6 3.3 2.3 ▲1.0
非製造業 3.0 3.0 0.0 0.5 0.5 0.0 3.8 2.9 ▲0.9 3.0 2.8 ▲0.2 1.3 1.2 ▲0.1

[出典]全法人企業:法人企業統計(大蔵省)

母国籍別売上高経常利益率推移(全産業)

 業種別にみると、製造業では電気機械が1628億円で最も高く、次いで医薬品の1018億円、化学の738億円、輸送機械の612億円の順となっており、非製造業では商業が1647億円となっている。売上高経常利益率をみると、製造業では医薬品が8.7%と最も高く、次いで化学の6.0%、電気機械の5.8%などとなっており、非製造業ではサービス業が3.0%となっている(第2-(3)-2-2図)。

主要業種の経常利益・売上高経常利益率

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日本で高い各種コスト

売上高に対する各費用項目の比率をみると、

  1. 全産業は15.3%となっており、このうち給与総額比率が8.7%と最も大きく、以下、減価償却費比率、荷造運搬費比率の順で、賃借料比率、研究開発費比率が同率でこれに続いている(第2-(3)-3-1図)。
  2. 製造業は17.9%で、このうち給与総額比率が9.9%、原価償却費比率2.8%研究開発比率2.3%などとなっている(第2-(3)-3-2図)。

主要費用項目の対売上高比率の推移〔全産業)

主要費用項目の対売上高比率の比較

 製造業の費用構造を国内の全法人企業(25.3%)及び日系海外現地法人(14.3%)と比べると、

  1. 集計企業は、同率の賃借料を除き、全ての費用比率で全法人企業を下回っている。このうち、給与総額比率の差が3.3ポイントと最も大きく、次いで、研究開発費比率、減価償却費比率などとなっている
  2. 日系海外現地法人と比べると、減価償却費を除き、全ての費用比率で集計企業が日系海外現地法人を上回っており、日本におけるコストの高さがうかがえる。 また、地域別に日系海外現地法人と比べると、集計企業は欧米における日系現地法人に近いかたちとなっている(第2-(3)-3-2図)。

(注)
・ここでいう「給与」とは、「売上原価に含まれる給与」と「販管費に含まれる給与」を合算したものを指す。また、国内法人と現地法人のコスト構造を比較する場合、人件費については、内外における機能分担(本社機能、研究開発機能)に大きく依存するため、単純に内外を比較するには限界がある。

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欧米系企業で高い自己資本利益率

 集計企業の自己資本利益率(注)は、全産業で8.9%と前年度に比べ1.3ポイント低下した。このうち製造業は6.7%、同4.1ポイントの低下となったが、非製造業は17.2%、同8.7ポイントの大幅な上昇となった。
 全産業について時系列で全法人企業と比べると、全法人企業は95年度からの3年間は3%台で推移しているのに対し集計企業は10%台で推移しており、98年度は全法人企業がマイナスとなったのに対して、集計企業は8.9%となっている(第2-(3)-4-1~3図)。

自己資本利益率(全産業)

自己資本利益率(製造業)

自己資本利益率(非製造業)

 母国籍別にみると、欧米系企業のROEが高く、アジア系企業は全産業でマイナスとなっている(第2-(3)-4-4図)。

母国籍別自己資本利益率

(注)・ 自己資本利益率(ROE)=税引後当期利益/自己資本×100

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全法人企業との格差広げる配当率

 集計企業の配当性向(注)は、全産業が91.0%(前年度比19.7ポイント上昇)となり、このうち製造業は99.4%(同31.4ポイント上昇)、非製造業は78.8%(同7.1ポイント低下)となった。これを全法人企業で算出可能な製造業と比較すると、全法人企業は193.0%と、税引後当期利益に対し配当金が2倍近くになっているのに対し、集計企業は税引後当期利益と同程度となっている(第2-(5)-1表、-1図)。

第2-(3)-5-1表 利益処分状況 (単位:億円、%)
  資本金 税引後
当期利益
配当金 当期内部
留保額
配当性向 配当率 内部留保率
全産業 17,029 3,942 3,587 786 91.0 21.1 19.9
製造業 12,436 2,331 2,316 131 99.4 18.6 5.6
  内主要業種              
  化学 2,321 293 185 177 63.1 8.0 60.4
医薬品 1,572 520 560 ▲3 107.7 35.6 ▲0.6
石油 945 ▲104 221 ▲271 ・・・ 23.4 ・・・
一般機械 624 117 149 41 127.4 23.9 35.0
電気機械 2,930 692 552 241 79.8 18.8 34.8
輸送機械 2,298 309 19 127 6.1 0.8 41.1
非製造業 4,593 1,612 1,271 656 78.8 27.7 40.7
  内主要業種              
  商業 3,145 1,560 1,167 723 74.8 37.1 46.3
サービス業 626 46 85 ▲53 184.8 13.6 ▲115.2
全法人企業 781,314 ▲5,333 43,810 ▲56,836 ・・・ 5.6 ・・・
  製造業 300,908 11,542 22,271 ▲13,807 193.0 7.4 ▲119.6
非製造業 480,406 ▲16,875 21,539 ▲43,029 ・・・ 4.5 ・・・

[出典]全法人企業:法人企業統計(大蔵省)

配当性向(製造業)

 配当率(注)は、全産業が21.1%(同2.0ポイント上昇)、製造業は18.6%(同1.9ポイント低下)、非製造業は27.7%(同12.4ポイント上昇)となった。全産業を時系列で全法人企業と比べると、全法人企業の配当率は 5~8%台と低めで推移しており変動幅は小さい。これに対し、集計企業の配当率は10~20%台と上昇傾向で推移しており、全法人企業との差は拡大している(第2-(3)-5-1表、-2図)。

配当率(全産業)

 内部留保率(注)は、全産業で19.9%(同22.6ポイント低下)となっている。このうち製造業は5.6%(同25.2ポイント低下)、非製造業は40.7%(同53.3ポイント低下)となっている(第2-(3)-5-1表)。

 母国籍別にみると、アメリカ系企業は配当率が22.2%、配当性向は79.8%、内部留保率は23.1%となり、堅調ぶりがうかがえる。ヨーロッパ系企業は配当率は19.8%であったが、配当性向は140.4%、内部留保率は5.1%となっている(第2-(3)-5-2表)。

第2-(3)-5-2表 母国籍別配当性向、配当率、内部留保率 (単位:%)
  配当性向 配当率 内部留保率
アメリカ系企業 79.8 22.2 23.1
アジア系企業 ・・・ 0.4 ・・・
ヨーロッパ系企業 140.4 19.8 5.1
世界計 91.0 21.1 19.9

(注)・配当性向=配当金/税引後当期利益×100

・配当率=配当金/資本金×100

・内部留保率=当期内部留保額/税引後当期利益×100

・算式の分母が負数のもの、又は分子が零のものは算出していない。

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製造業でロイヤルティが減少

 集計企業の外国側出資者への支払総額は、全産業が6602億円(前年度比10.6%増)で、製造業は4954億円(同0.4%増)、非製造業は1648億円(同59.1%増)となっている。支払内訳をみると、ロイヤルティ(技術供与料、特許権使用料等)は製造業で2656億円(同13.2%減)と5年ぶりの減少となったため、全産業で3350億円(同5.6%減)となっている。配当金は全産業で3200億円(同35.9%増)となり、製造業、非製造業ともに増加している(第2-(3)-6-1表、-1図)。

第2-(3)-6-1表 外資系企業出資者への支払状況(前年比較) (単位:億円、%)
  全産業 製造業 非製造業
97年度 98年度 前年比 97年度 98年度 前年比 97年度 98年度 前年比
借入金利息 66 53 ▲19.7 54 40 ▲25.9 11 13 18.2
ロイヤルティ 3,549 3,350 ▲ 5.6 3,060 2,656 ▲13.2 488 694 42.2
配当金 2,354 3,200 35.9 1,817 2,258 24.3 537 941 75.2
合計 5,968 6,602 10.6 4,932 4,954 0.4 1,036 1,648 59.1

外資系出資者への支払状況(全産業)

 母国籍別にみると、アメリカ系企業の支払総額は5395億円で全体の8割強を占めており、このうちロイヤルティが2997億円となっている(第2-(3)-6-2図)。

外国側出資者への支払状況(母国籍別)

 外資比率別に支払額をみると、外資比率100%の子会社は4264億円と最も多く、次いで50%の子会社(1063億円)、50%超100%未満の子会社(1050億円)と続いている。1企業当たりの支払額をみると、外資比率100%の子会社は5億円を超えており、50%~100%未満の子会社は4億円台、1/3超50%未満の子会社は、2億円などとなっている(第2-(3)-6-3~4図)。

外資側出資者への支払状況(外資比率別)

支払額合計及び1企業当たりの支払額

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安定性の高い欧米系企業

 集計企業の固定比率(注)は、全産業で135.1%(前年度比1.0ポイント低下)となった。このうち製造業は134.9%(同2.4ポイント低下)、非製造業は136.0%(同4.1ポイント上昇)となっている。これを業種別に全法人企業と比較すると、製造業では輸送機械、電気機械が全法人企業を上回っていて、製造業全体では、集計企業が全法人企業を4.0ポイント上回っている(第2-(3)-7-1表、第2-(3)-7-1図)。

第2-(3)-7-1表 業種別・固定比率、固定長期適合率、自己資本比率 (単位:億円、%)
  固定資産 自己資本 総資産 借入金総額 短期借入金 固定比率 固定長期適合率 自己資本比率 借入金依存度
全産業 59,597 44,100 134,685 28,762 16,391 135.1 105.5 32.7 21.4
  製造業 46,848 34,724 97,378 20,403 10,855 134.9 105.8 35.7 21.0
  化学 4,675 4,199 10,283 2,616 1,572 111.3 89.2 40.8 25.4
医薬品 3,132 5,408 11,193 2,608 1,679 57.9 49.4 48.3 23.3
石油 8,743 4,348 17,522 2,724 1,668 201.1 161.8 24.8 15.5
一般機械 4,094 3,762 9,175 1,341 850 108.8 96.3 41.0 14.6
電気機械 8,290 6,433 18,230 6,408 2,456 128.9 79.8 35.3 35.2
輸送機械 14,367 7,765 21,519 2,202 1,452 185.0 168.7 36.1 10.2
非製造業 12,749 9,376 37,306 8,359 5,536 136.0 104.5 25.1 22.4
  商業 10,828 7,914 30,431 7,139 4,829 136.8 105.9 26.0 23.5
サービス業 1,027 648 3,115 720 459 158.5 113.0 20.8 23.1

業種別・固定比率

 固定長期適合率(注)をみると、全産業は105.5%(同4.7ポイント上昇)で、製造業は105.8%、非製造業は104.5%でそれぞれ4~5ポイント上昇しており、安定性はともに低下している(第2-(3)-7-2図)。

業種別・固定長期適合率

 自己資本比率(注)をみると、全産業は32.7%(同2.3ポイント上昇)で、製造業35.7%(同3.2ポイント上昇)、非製造業25.1%(同0.2ポイント上昇)となった。これを業種別に全法人企業と比べると、製造業では石油、一般機械が全法人企業を上回っているが、それ以外の業種では全法人企業を下回っている。非製造業では商業、サービス業が全法人企業を上回っている(第2-(3)-7-3図)。

業種別・自己資本比率

 母国籍別に安定性を比較すると、固定比率、固定長期適合率ともアメリカ系企業、ヨーロッパ系企業の比率は低く安定しているのに対し、アジア系企業の固定比率は欧米の2倍程度になっている。また、アジア系企業は自己資本比率が低く、借入金依存度が高いため安定性は低い(第2-(3)-7-4図)。

母国籍別・安定性比較(全産業)

(注)・固定比率=固定資産/自己資本×100

・固定長期適合率=固定資産/(自己資本+長期借入金)×100

 固定比率は自己資本をもって、固定長期適合率は(自己資本+長期借入金)をもって、どの程度固定資産(設備投資)を賄っているかを表す企業の財務安定性をみる指標で、100以下が理想とされる

・自己資本比率=自己資本/総資本×100

・借入金依存度=借入金総額/総資本×100

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最終更新日:2007.10.1
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