ここでちょっと実験をしてみましょう。用意するものは生のパイナップル。缶詰のパイナップルでは実験できません。パイナップルにはちょっと面白い化学物質が入っています。実験と言っても、とても簡単、食べ過ぎるだけです。目標は2分の1個です。 ひと切れめ、おいしい。甘味も酸味も充分です。ふた切れめ、三切れめ、ほんの少し舌の先に違和感が出てきました。ザラザラした感じ。四切れめ、五切れめ、これで目標の半分。舌の上や横までザラザラが広がってきました。どんどん食べていくと唇の内側にも違和感が出てきて、舌をこするとちょっと痛い。10分ちょっとで目標達成。熱いお茶で舌を軽くやけどをした感じです。 これはプロメリンというたんぱく質を分解する化学物質の働きです。パイナップルにはプロメリンが豊富に含まれていて、口の中の敏感な部分が影響を受けたのです。もちろん一度にパイナップルをそんなに食べる人はないので、ふだんは気づきません。なんでも食べすぎ、取りすぎはいいことがないようです。 このプロメリンの働きを料理に利用することも出来ます。パイナップルの果汁の中に漬け込むと肉が柔らかくなるのです。逆に失敗の原因になることもあります。ゼリーを作るときにゼラチンを使いますが、この中にパイナップルを入れると固まりにくくなってしまいます。ゼラチンはたんぱく質なのでプロメリンに分解されてしまうのです。 ところが缶詰のパイナップルではこんなことは起こりません。プロメリンは熱に弱く、缶詰は加熱されているのでプロメリンがこわれて働くことはないのです。でも、どうしても生のパイナップルゼリーをつくりたいときは、寒天で固めてください。寒天はたんぱく質ではないので、プロメリンに分解されることはないのです。ほかにも、たんぱく質を分解する酵素を含んでいるものに、メロンやパパイヤ、キウイがありますよ。 生ハムにメロン、酢豚にパイナップル・・・。こんなところに理由があったのです。私たちがいつもおいしく食べている天然物の中にも取りすぎると危険なものがあります。化学物質もパイナップルと同じようにそれを知ってちゃんと管理して使えば、安全に安心に、そして私たちの生活を便利で豊かなものにしてくれるものなのです。 |