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国際連合の活動への対応

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国際連合の活動への対応

地球環境問題に関する国際的な意識の高まりにより、国際連合は、1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで「地球サミット(国連環境開発会議:UNCED)」を開き、化学物質対策も含めた地球環境問題の解決策として、「アジェンダ21」と名付けられた具体的なアイディアを とりまとめました。化学物質対策については、アジェンダ21の第19章に「有害化学物質の環境上適正な 管理」として具体的に取り組むべき事項が明らかにされ、これが化学物質管理の国際的な取組の基礎となりました。また、地球サミットの開催から10年後の節目に当たる 2002年には、アジェンダ21の内容の見直しや新たに生じた課題などについて議論を行うため、南アフリカのヨハネスブルクで「持続可能な開発に関する世界首脳会議 (ヨハネスブルグ・サミット:WSSD)が開催され、各国の首脳の政治宣言である「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」 とともに、アジェンダ21の内容を実施するための指針となる「ヨハネスブルグ実施計画」が採択されました。この実施計画の中で、化学物質管理については、 化学物質の生産や使用が人の健康や環境にもたらす悪影響を2020年までに最小化することを目指すことや、国際的な化学物質管理に関する戦略的なアプローチを 2005年までに作成することなどが合意されました。

現在進められている化学物質管理に関する国際的取組の多くはアジェンダ21とヨハネスブルク実施計画の内容の実施を目指すものです。具体的には、それぞれの国が行っている化学物質対策に加えて、UNEP(国連環境計画)等の国連の下部機関やOECDIPCS(化学物質の安全性に関する国際プログラム)IFCS(化学物質の安全性に関する政府間フォーラム)といった国際的な枠組みの下で以下のような努力が続けられています。我が国も1992年の地球サミットや2002年のヨハネスブルクサミット等に参画するとともに、その実施に向けた活動に積極的に貢献しています。

  • 化学物質の分類と表示の調和システムの国際的合意及び実施に向けた検討
  • 有害化学物質の不法取引防止策の検討
  • 危険有害性が明らかになっていない化学物質の安全性点検
  • 化学物質の性状や取扱い方法に関する情報伝達を行うための制度(MSDS)の整備及び実施に向けた検討
  • 有害性のある多種多様な化学物質の発生源、排出量、移動量等を集計・公表するための制度(PRTR)の整備及び実施に向けた検討
  • 有害化学物質に関する情報交換システムの稼働
  • 化学物質管理改善に向けた国家戦略の策定

また、アジェンダ21第19章に掲げられた有害化学物質の国際取引を規制するロッテルダム条約と残留性有機汚染物質の廃絶・削減を目指すストックホルム条約が2004年にそれぞれ発効し、化学物質管理の国際的取組の強化に貢献しています。我が国は両条約の締約国として条約が定める義務を遵守しています。

国連環境開発会議(UNCED)の概要

  1. 会議の概要
    国連環境開発会議(UNCED:United Nations Conference on Environment and Development)とは、深刻化する地球規模の環境問題と持続的な開発の在り方について各国首脳及び国際機関の長が議論を行うことを目的に、1992年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロにおいて開催された国際会議です。約200カ国と多数のNGOが参加し、環境と開発を包括的に扱った初めてのサミットとなりました。
  2. 会議の成果
    21世紀に向けての地球環境問題に対応するための人類の行動計画を示すアジェンダ21が採択されたほか、環境と開発に関するリオ・デ・ジャネイロ宣言や気候変動枠組条約等の署名が行われました。
  3. 化学物質に関する主な成果
    21世紀に向けての人類の行動計画を示すアジェンダ21の中の第19章(有害化学物質の環境上適切な管理)として、化学物質の適正な管理を進めていくために取組んでいくべきプログラム領域とその課題が示されました。

アジェンダ21第19章の概要

化学物質は国際的な取引や環境中への排出等を通じて世界中に拡散してものであり、そのリスクには国境がないことから、化学物質をより一層適正に管理していくためには、国際的に協力して管理対策に取り組んでいくことが必要となります。

アジェンダ21の第19章では、化学物質の管理に関する基本的な方向性とその課題を明らかにしています。具体的には、リスク評価、有害性・リスク関連情報の提供、リスク管理のための体制整備等6つのプログラム領域を設定し、国際的な協力による化学物質管理への取組を求めています。

プログラム領域 アジェンダ21第19章の課題
A:化学物質のリスクの国際的評価の拡充と促進 国際的なリスクアセスメントの強化
健康又は環境の観点からの曝露限界と社会・経済因子の観点からの曝露限界の峻別、有害化学物質別の曝露ガイドラインの策定
B:化学物質の分類と表示の調和 化学物質の統一分類・表示システム(MSDS、記号含む)の確立
C:有害化学物質及び化学物質のリスクに関する情報交換 化学物質の安全性・使用及び放出に関する情報交換の強化
改正ロンドンガイドライン及びFAO国際行動規範の条約化と実施
D:リスク削減計画の策定 広範囲なリスク削減のオプションを含めた幅広いアプローチの採用と、広範囲なライフサイクル分析から導かれた予防手段の活用による、許容値以上のリスクの除去・削減
E:国レベルでの対処能力の強化 化学物質の適正管理のための国家的組織及び立法の設置
F:有害及び危険な製品の不法な国際取引の禁止 有害で危険な製品の不法な国内持込みを防止するための各国の能力の強化
有害で危険な製品の不法な取引に関する情報入手(特に開発途上国)の支援

持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の概要

  1. 会議の概要
    持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD:World Summit on Sustainable Development)とは、1992年6月にリオ・デ・ジャネイロにおいて開催された国連環境開発会議から10年になることから、当時策定した「アジェンダ21」の見直しや新たに生じた地球環境問題などについて各国首脳及び国際機関の長が議論を行うことを目的に、2002年8月にヨハネスブルグにて開催されました。
  2. 会議の成果
    各国首脳の政治宣言である「持続可能な開発に関するヨハネスブルク宣言及び」貧困撲滅、天然資源の保護と管理、持続可能な開発を実現するための実施手段等、持続可能な開発を進めるための各国の指針となる「持続可能な開発に関する世界首脳会議のための実施計画」が採択されました。
    ※持続可能な開発:
    「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」のこと。環境と開発を互いに反するものではなく共存し得るものとしてとらえ、環境保全を考慮した節度ある開発が重要であるという考えに立つ。
  3. 化学物質に関する主な成果
    (1)「環境と開発に関するリオ・デ・ジャネイロ宣言」の第15原則に記されている予防的取組方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価・リスク管理を行うことで、人の健康や環境への深刻な悪影響を最小化するよう化学物質を製造・使用することについて、2020年を一つの目標期限として設定しました。
    ※「環境と開発に関するリオ宣言」の第15原則:
    環境を保護するため、予防的方策は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期する理由として使われてはならない。
    (2) 化学物質管理に関する持続可能な開発に関する世界首脳会議のフォローアップとして、本会議で合意された事項等を具体的な行動につなげていくために、国連環境計画やOECD等の国際機関やIFCS(化学物質の適正な管理のための国際フォーラム)が連携して、2005年までにSAICM(国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ)を策定することが提唱されました。
    (3)化学物質の分類及び表示に関する新たな世界的に調和されたシステム(GHS)について、2008年までに実施することが提唱されました。

SAICM(Strategic Approach on International Chemical Management)

1.SAICMの概要
SAICM(国際的化学物質管理に関する戦略的アプローチ)は、WSSDにおける合意「化学物質が、人の健康と環境にもたらす悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成する」の実現を目標に、科学的なリスク評価に基づくリスク削減、情報の収集と提供、能力構築と技術協力などを進めることを定めた、国際的な合意文書です。SAICMは、政治宣言であるドバイ宣言と、適用範囲や必要性、目的等を定めた包括的方針戦略、SAICM実施のためのガイダンス文書である世界行動計画から構成されています。

2.経緯
2002年2月のUNEP管理理事会においてSAICMの必要性について決議され、2002年9月のヨハネスブルグサミット(WSSD)で定められた実施計画において2005年5月までの策定を決定されました。2003年11月の第1回準備会合(バンコク)、2004年10月の第2回準備会合(ナイロビ)、2005年3~5月の地域会合をへて2005年9月の第3回準備会合(ウィーン)でおおよその案文に合意、2006年2月に開催された国際化学物質管理会議(ICCM)で採択されました。
 
SAICMのフォローアップのため、国際化学物質管理会議が2009年(ICCM2)、2012年(ICCM3)、2015年(ICCM4)に開催されており、次回は目標年である2020年(ICCM5)に開催されます。
 
. 我が国の取組
SAICMに沿った化学物質管理政策の推進に関する連絡調整のため、関係省庁から成る連絡会議を設置しています。
また、平成24年9月にSAICM関係省庁連絡会議において、WSSD2020年目標の達成に向けた戦略を示すものとしてSAICM国内実施計画を策定し、平成27年9月にはSAICM国内実施計画の進歩状況を点検し、結果を取りまとめました。 
  

化学物質の安全性に関する国際プログラム(IPCS)の概要

  1. 設立の経緯
    化学物質の安全性に関する国際プログラム(IPCS:International Program on Chemical Safety)とは、化学物質による人の健康や環境問題への影響を科学的な基盤に立って評価し、対処することを目的に、国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Program)、国際労働機関(ILO:International Labor Organization)及び世界保健機関(WHO: World Health Organization)の共同事業として、1980年に発足したもの。
  2. 主な事業
    化学物質の安全性評価の参考となる科学的データ(主に学術文献)を網羅的に収集・評価した環境保健クライテリア(EHC:Environmental Health Criteria)を発行しています。

    環境保健クライテリアは、主に以下の項目から構成されています。

    • 同一性、物理化学的性質、分析方法
    • 製造・用途・暴露源
    • 環境中の生物への影響
    • 実験動物への影響
    • 人への影響
    • 人の健康へのリスク及び環境への影響に関する評価
    • 結論および勧告

化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)の概要

  1. フォーラムの概要

    化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS:International Federation of Classification Society)は、1992年6月にリオ・デ・ジャネイロにおいて開催された国連環境開発会議で採択されたアジェンダ21の第19章(有害化学物質の適正管理)の実施を促進するために設立されました。1995年3月に第1回目の会合を開催しています。

  2. IFCSに委任される主な事項

    化学物質の安全性に対する共同行動の優先順位を明らかにし、適切な範囲で、化学 物質の有害性の同定及びリスク評価、環境上適正な化学物質の管理のための協調した国際戦略を勧告する。

    化学物質の調和した分類及びラベル表示の国際的な合意及び遂行を促す

    化学物質の安全性に関して勧告された国際戦略の実施について、活動の効果を定期的に再検討し、さらに進んだ活動についての勧告を行う。

    化学物質による事故の防止、対策、対応について、国際協力を促進する。

お問合せ先

製造産業局 化学物質管理課
電話:03-3501-0080(直通)
FAX:03-3501-6604
お問合せメールフォーム: https://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/form/pub/kagaku/kannrika_toiawase

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