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- 日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)
日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)
1.背景
- 米国では、1970年代後半の米国経済の国際競争力低下を背景として、1980年に、政府資金による研究開発から生じた発明についてその事業化の促進を図るため、政府資金による研究開発から生じた特許権等を民間企業等に帰属させることを骨子としたバイ・ドール法を成立させた。これにより企業等による技術開発が加速され、新たなベンチャー企業が生まれるなど、米国産業が競争力を取り戻すこととなったと言われている。
- 我が国では、従来より、政府資金による研究開発から派生した特許権等の帰属について、国が所有することとなっていたが、総理主宰の第4回の産業競争力会議において、民間側から制度改善についての提言が相次いだ。このため、平成11年に策定した産業競争力強化対策(政府産業構造転換・雇用対策本部決定)において、「開発者のインセンティブを増し、国の資金による研究開発成果の普及を促進するため、米国のバイ・ドール法を参考として、国の委託研究開発に関する知的財産権について、開発者にその利益を帰属させるための措置を講ずる。」旨決定した。これを受け、いわゆる日本版バイ・ドール制度を、産業活力再生特別措置法第30条(平成十一年法律第百三十一号)で措置した。
- 平成14年に策定した知的財産戦略大綱(知的財産戦略会議)において、「国・特殊法人等の委託による研究開発の成果たる知的財産権を受託者に帰属させることができる産業活力再生特別措置法第30条(いわゆる日本版バイ・ドール制度)を、特別な事情のあるものを除き、全ての委託研究開発予算について、2002年度中に適用する。」旨決定し、その後の知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画(平成15年7月知的財産戦略本部決定)、知的財産推進計画2004(平成16年5月知的財産戦略本部決定)等においても「日本版バイ・ドール制度の利用を徹底させる」旨決定された。
- 平成19年に、日本版バイ・ドール制度は、特別措置法である産業活力再生特別措置法から恒久法である産業技術力強化法第19条(平成十二年法律第四十四号)に移管された。
- 平成31年4月1日より、不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成30年5月30日法律第33号)により、産業技術力強化法第17条、第18条に規定されていた特許料等の減免規定が特許法に移管されたため、産業技術力強化法第19条に規定されていた日本版バイ・ドール制度に関する規定が、改正により同法第17条に規定された。
2.日本版バイ・ドール制度の概要
(1)受託者が委託者と約する事項
以下の4つの条件を受託者が約する場合に、各省庁が政府資金を供与して行っている全ての委託研究開発(国立研究開発法人等を通じて行うものを含む。)に係る知的財産権について、100%受託者(民間企業等)に帰属させうることとする。
- 研究成果が得られた場合には国に報告すること。
- 国が公共の利益のために必要がある場合に、当該知的財産権を無償で国に実施許諾すること。
- 当該知的財産権を相当期間利用していない場合に、国の要請に基づいて第三者に当該知的財産権を実施許諾すること。
- 当該知的財産権の移転又は当該知的財産権を利用する権利の設定・移転の承諾にあたって、あらかじめ国の承認を受けること。
(2)受託者に帰属させうる知的財産権
- 特許権、特許を受ける権利(特許法)
- 実用新案権、実用新案登録を受ける権利(実用新案法)
- 意匠権、意匠登録を受ける権利(意匠法)
- 著作権(著作権法)
- 回路配置利用権、回路配置利用権の設定の登録を受ける権利(半導体集積回路の回路配置に関する法律)
- 育成者権(種苗法)
(3)請負ソフトウェア開発
国が請け負わせたソフトウェア開発の成果に係る知的財産権を受託者(民間企業等)に100%帰属させうることとする。なお、「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(平成30年3月30日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)及び「政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン実務手引書」(内閣官房情報通信(IT)総合戦略室および総務省平成27年3月19日)において、「国が請け負わせたソフトウェアの開発の成果」について、国の業務に特化した汎用性のないもの及び継続的な機能改修が見込まれるものを除き、一般に、産業技術力強化法17条に基づき、受注者側に知的財産権が帰属するものであることに留意するものとすることが示された。
3.日本版バイ・ドール制度の適用を受ける特許等出願(願書の様式)
産業技術力強化法第19条に規定されていた日本版バイ・ドール制度に関する規定が、改正により同法第17条に規定された。
これにより、改正後(平成31年4月1日以降)に日本版バイ・ドール制度の適用を受ける特許等出願(特許願)への記載は以下のとおり。
なお、分割・変更出願等についても、現実の出願日を基準とする。また、PCTの国内移行出願については、国際出願日(≠優先日)を基準とする。
- 委託事業の例
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】
令和○年度、○○省、○○委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願 - 請負事業の例
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】
令和○年度、○○省、○○請負事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
<産業技術力強化法に基づく特許等出願の願書の様式の根拠条項>
- 産業技術力強化法(平成十二年法律第四十四号)第十七条第一項に規定する特定研究開発等成果に係る特許出願をするときは、願書にその旨を記載しなければならない。(特許法施行規則第二十三条第六項)
- 産業技術力強化法(平成十二年法律第四十四号)第十七条第一項に規定する特定研究開発等成果に係る意匠登録出願をするときは、願書にその旨を記載しなければならない。(意匠法施行規則第二条第六項)
- 産業技術力強化法(平成十二年法律第四十四号)第十七条第一項に規定する特定研究開発等成果に係る実用新案登録出願をするときは、願書にその旨を記載しなければならない。(実用新案法施行規則第一の二条第三項)
(参考) ナショナルプロジェクトの知的財産戦略事例集
- ナショナルプロジェクトの研究開発成果を社会実装につなげて新たな価値を創出している9つの事例を掲載した事例集
- 各事例を、ナショナルプロジェクトから研究開発成果の社会実装へ向けた道のり、ナショナルプロジェクトにおける取組・成果・知財マネジメント、ナショナルプロジェクト後の活動に加え、プロジェクト参加者からのコメントもつけて紹介
- ナショナルプロジェクトの研究開発成果を社会実装につなげるにあたってのポイントと対応策も掲載
お問合せ先
イノベーション・環境局 研究開発課
電話:03-3501-9221
最終更新日:2023年11月30日