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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第102号
◆技術のおもて側、生活のうら側 2016年12月22日 第102号
こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支える産業技術を身近に感じていただければ幸いです。
海外からも注目される、イカ釣りの技術革命
今回、ご紹介する技術に関するテーマは「イカ(烏賊)」。
イカ釣りというと何をイメージされるだろうか。イカ釣り漁船が、夕方暗くなると沖合にこうこうと明かりを灯し、漁り火が輝いている光景を思い浮かべる人も少なくないだろう。その昔、数百年前は小型の磯船に松明(たいまつ)を灯した漁り火を利用し、イカを釣ったそうだ。
イカとタコはどことなく姿が似ているが、タコは世界ではあまり食されていないのに対して、イカはアメリカ、ヨーロッパ、南米、アジアなどの多くの国で漁が行われ、世界中で広く食されている。
イカは、コレステロールが高いと言われているが、一方で近年、動脈硬化の抑制や疲労回復に効果のあるアミノ酸の一種であるタウリンが豊富に含まれていることで注目されている。ちなみに総務省の家計調査によると1世帯あたりの年間購入量は、全国平均で2,125グラム、都道府県別では青森県が4,529グラムと全国第一位となっている。また、するめいか1匹100グラム、都道府県民1人あたりに換算すると、全国平均で年間8.1匹、トップの青森県では14.4匹のイカを食しているという試算もある。
日本人がよく食べるスルメイカは、九州付近から暖流に乗りながら日本海を北上し、稚内あたりまでたどり着いた後に南下し、九州付近で産卵を終えた後約1年で死んでしまうという。
このスルメイカで最も有名な漁港といえば、函館ではないだろうか。
この函館に、全自動式イカ釣り機を開発した地元企業の株式会社東和電機製作所がある。
1963年に創業した当時から、地元の漁師の依頼で自動イカつり機の開発に取り組んでいる。
開発に携わる社員は、漁師のニーズを把握するため、イカ釣り漁船に乗り込み、漁師の細かな要望や現場目線での課題解決に取り組むなど、徹底した現場主義の開発・制作を行っている。
こうした中から、漁師からの要望が高かったイカを呼び寄せるための「しゃくり」の細やかな動きや、海中で数十本にもなる仕掛けの釣糸が絡まないための調整も自動で行えるよう開発を行った。また、波によって船が傾き、釣糸のハリが強くなったり弱くなったりすることで、イカの足が切れたり、仕掛けがバレて逃げてしまうことを防ぐため、揺れに応じて、釣糸の出し方を自動調整し、一定のハリを保つことでこの課題もクリアしている。
こうしてみると、もはやベテランの漁師の技を超えたのではないかと思われるが、実はそうではないという。短時間での釣果を競わせたら、最新の全自動イカ釣り機をもってしてもベテランの漁師にはかなわないという。とは言え、機械であるので長時間フルで働き続けることが可能であり、経営上の大きなメリットがある。
同社では、設計、製造、営業からソフトのプログラミングに至るまで、ほぼすべてを自社で行っている。実際、部品のほとんどを自社内の工場でプレス加工し、製造、組み立てを行っている。
これにより、漁師からの要望があれば社内のチームが連携し、試作品をすぐさま作り出し、開発や改良を短期間で行うことができるのだという。
また、社内は、営業部門、開発部門の垣根なく異動することも珍しくなく、様々な部門が連携した取り組みが可能となるよう配慮されている。
同社は、輸出にも積極的に取り組んでいる。国内のイカ釣り漁の伸びが大きく期待できないことも背景にあるが、現在では、中国の大連、舟山(上海近郊)、台湾の高雄、韓国の釜山、アルゼンチンにも拠点を置いている。オーストラリアやメキシコも今後検討する予定とのこと。
中国には、30年ほど前にイカを加工する会社を立ち上げ、イカをあまり食さなかった中国に「さきイカ」を食べる習慣を広めたという。これがきっかけとなり、中国でイカ漁が盛んとなり、同社の全自動イカ釣り機も売れるようになった。今後もさらなるグローバル展開を目指している。
イカつり機以外には、マグロの一本釣り機や養殖用ホタテを海中につるすための自動ホタテ穴あけ機なども開発している。マグロ漁で有名な大間での一本釣り機のシェアは95%程度を占めている。
イカ釣りには冒頭に述べたように明かりが利用されるが、これには大量の燃油が必要となる。このため、LED照明の開発が望まれている。
すでにサンマ漁用のLED漁灯は従来の照明に劣らない釣果を収めているが、何故か原因はわからないが、イカ用のLED漁灯は従来の照明のような釣果が未だ上がらないという。波長を変える等様々な工夫をしながら何年も開発を行っているが、イカは青魚と違い、非常に賢い魚種ということもあり従来の照明とのわずかな違いを感じ取り釣果が上がらないのではないかと考えられている。
非常に難しい課題であるが、イカ釣り漁師にとっては経営の大幅な改善が見込まれる技術であるので、ぜひ開発に成功してほしい。
イカで有名な函館から、日本の、そして世界のイカ釣り技術をこれからも着実に進化させ続けてくれることを期待したい。
<取材協力>
株式会社東和電機製作所 専務取締役経営戦略室長 浜出 滋人
東和電機製作所ウェブサイト:http://www.towa-denki.co.jp/
技術のおもて側、生活のうら側について
発行:経済産業省産業技術環境局産業技術政策課 執筆/担当 松本、大和田
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