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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第103号

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◆技術のおもて側、生活のうら側 2017年2月2日 第103号

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はじけるアイデア満載で国内シェア80%を占めるパーティークラッカーメーカー

  愛媛県の宇和島駅から徒歩で約20分、住宅街を抜けた山の麓に日本一の会社がある。パーティークラッカーを製造、販売する(株)カネコである。元々は打ち上げ用の花火製造会社として、宇和島で明治17年に創業。

仕事が主に夏場に集中し、経営が不安定になりやすいことなどから、少量の火薬で安全に製造できるパーティークラッカーのメーカーとして、1969年に現在の会社を設立。

昭和38年より、アメリカ、ヨーロッパに直接パーティークラッカーを輸出する。

1970年頃、国内では主に中国製のパーティークラッカーが多く輸入されていたが、現在、同社によるパーティークラッカーの国内シェアは80%を占める。

パーティークラッカーの起源はイギリスだそうだ。プレゼントの入った円柱形の箱の両側に糸が付いており、それを両側から引っ張ると「ポン」という音ともに、プレゼントが飛び出る仕掛けになっている。今でもイギリスでは、クリスマスパーティーには欠かせない伝統的なアイテムだそうだ。
 このほか、海外では片側の糸を引っ張る円柱形のクラッカーもよく見られるそうだが、日本でパーティークラッカーといえば円錐形のものが主流である。

パーティークラッカーの構造は、現在に至っても極めてシンプルである。糸の先端に0.01グラム程度の火薬をつけ、その部分を紙で巻き、糸を引くことで摩擦熱が生じて火薬が発火。それと同時に小さな爆発が起こり、中から細長く裁断されたテープが勢いよく飛び出す仕組みとなっている。
 安全面に関しては、パーティークラッカーのように一定量以下の火薬を使用するがん具煙火については、業界団体による自主検査が行われ安全性が確保されている。

類似する花火類の多くが中国などからの輸入品で占められているのに対して、このようにシンプルな構造のパーティークラッカーの国内シェアの80%を、なぜ同社が占めることができているのであろうか。そのカギは、同社の開発力と技術力にある。

最初のヒット作は、40年前。パーティークラッカーではないが、当時駄菓子屋などで売られていたがん具ピストル弾の「カネキャップ」が爆発的にヒットし、業績を伸ばした。ピストルの弾の代わりにリング状に火薬を10個前後埋め込み、それを回転式の弾倉(シリンダー)に装着し、連続して音が出せる構造となっている。当時の男の子達に大人気を博した。

パーティークラッカーでは、「テープが散らからないクラッカー」を開発し、大ヒットさせたほか、「音だけ出るクラッカー」、「メッセージが飛び出すクラッカー」、さらには、高さ100センチメートル直径35センチメートルの「巨大クラッカー」、ロシアンルーレット風の「パニックルーレット」、においの少ない「クリーンクラッカー」、華やかにテープが広がる「遠くまで投げテープ」、「ボトル型クラッカー」、「バズーカ型クラッカー」など、遊び心を満たすような商品を次々に開発し、ヒットさせてきた。本体のデザインのほか、テープの形状、色、飛び出し方などにも様々な工夫が凝らされており、あらゆるシーンで楽しめるようアイデアが満載されている。独創的な企画力と洗練されたパッケージで、パーティークラッカーの新たな分野を切り拓いてきた。
  
このように様々な形状や大きさのパーティークラッカーの製品化にあたっては、安全かつ狙ったような勢いや角度でテープが飛び出すよう、本体の筒状の部分の長さや角度、経などが最適となるよう、試行錯誤を繰り返す必要があるという。

さらに製造にあたっては、機械化による合理化を進め、一部の製品においては全自動化を導入するなど、低コストと高品質化を実現してきた。また、テープや本体の紙型も自社で製造するなど、徹底した低コスト化にも取り組んでいる。

これらの努力の結果、現在の売り上げは約10億円。製造方法や構造にかかる300を超える特許や意匠を保有し、他社がまねできない製品づくりを続けている。
 かつては50社ほどあった国内の同業他社が廃業し、現在では2社にまで減る中、中国や韓国からの輸入攻勢や価格競争に勝ち抜き、国内シェア80%を確保し続けている。

商品開発は、毎週1回、企画会議を開催。数あるアイデアや試作品の中から、毎年5アイテムほどを新規に販売している。

子供の頃、クリスマスパーティーなどで小さな円錐形のクラッカーを使った経験のある方、最近パーティークラッカーを使っていない方、ぜひ様々な場面でアイデア満載の多種多様なパーティークラッカーを活用して、楽しい思い出を演出されてはいかがでしょうか。

<取材協力>

  株式会社カネコ 機械・開発部部長 岡村 信也
  株式会社カネコウェブサイト:http://www.p-kaneko.co.jp/
 

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