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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第106号

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◆技術のおもて側、生活のうら側 2017年4月27日 第106号

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おいしい笑顔を世界に届ける、製菓機械メーカーのパイオニア

今回は、和菓子や洋菓子などが量産できる機械の開発をいち早く手がけ、業界を牽引してきた製菓機械メーカーである「株式会社マスダック」(本社:埼玉県所沢市)を紹介する。 

1. 設立経緯
 現在の社長の父が大学の工学部を卒業後、新聞社で設備や機械関係の仕事をしていたところ、九州で饅頭屋を営む同級生に遭遇し、饅頭を製造する機械の開発を持ちかけられたのが、同社設立のきっかけという。開発した機械を上野の西郷像の前で実演したところ好評を得たそうだ。
 その後、調べたところ食パンやロールパン等はすでに欧米の機械が日本にも導入されていたが、日本的な菓子パンや和菓子などはまだ製造する機械が無い事を知り、起業を思い立った。1957年3月のことである。
最初に作成した機械はあんパン製造装置であった。人があんこを詰める(包む)作業を自動化し、省力化にも成功したが、機械の部品点数が多く、洗浄や調整が困難であったため、実用化までは至らなかったそうだ。しかしながら、これを契機として、パン業界で評判となり、その後いろいろな開発依頼がまいこむこととなった。

2. 開発機械の変遷
1)  どら焼機
 ある企業から、ひな祭り用の桜餅(薄い桜色の皮で餡を包み込む和菓子)を大量生産できる機械の開発依頼があった。そこで、チェーンで回転させる銅板へ皮の生地を落として下から焼き、さらに上からも赤外線ヒーターで効率的に焼くことができる機械を開発。評判は良かったそうだが、機械が主に稼働するのは数日間だけと限られていたため、大きく普及するには至らなかった。しかしながら、この技術を応用し、次に「自動どら焼機」の開発に着手した。
 桜餅の時と同じ要領で両側から皮をふっくらと焼きあげた後、そのまま銅板上であんこを充填し、その後皮を重ね合わせることで、ほぼ自動でどら焼きが作れる機械が完成した。1959年のことである。都内有名店などにもこの「自動どら焼機」が導入され、全国各地でも導入が進んでいった。現在でも、自動どら焼機の相当数がマスダック製の機械だという。

2)  サンド機
 次に開発したのが、「自動サンド機」である。長いパンを背割りにし、そこへクリーム等いろいろな具材を挟み込んだパンを作る機械である。
 きっかけは仙台のパン屋から、ロールパンにクリームを充填する機械の開発依頼を受けたことによる。できあがったロールパンにスライサーで切り込みをつけて、クリームをスクリューによりホッパーで押し出せるように口金を調整し、うまく充填できるように工夫した。さらにそのままパンを包装機へ直結することにより省力化を図った。1961年のことである。マンパワーを一気に削減し、1時間で6,000個もの製造が可能となり、後のコンビニなどでのサンドパンの普及に大きく貢献することとなった。現在でもヒット商品の一つとなっている。

3)  充填機
 その後、思い通りに生地やクリーム、あんこなどを型枠などに定量充填できる機械を開発。堅さや粘性などが異なる様々な生地の物性や特性に合わせ、充填の方法や口金を変えることで多種多様な洋菓子、和菓子の製造が可能となった。生産能力の向上や簡単な操作で設定や変更ができるよう、機械の改良も継続して行っている。

4)蒸し機
 さらに、蒸し菓子を製造する機械を開発し、地方の銘菓の量産化にも大きく貢献した。
 例えば、東京ばな奈は、販売会社と共同で企画段階から何度も話し合いを重ね、同社がもつ菓子製法の“蒸す”ノウハウを活用した商品の開発を行った。
 この東京ばな奈の開発を契機に、機械だけではなく生産したお菓子も販売。1991年に食品工場を新設し、OEM生産を開始した。発売直後から人気を博し、現在では、ご存じの通り誰もが知る新しい東京銘菓の定番として定着している。この他、仙台の某有名銘菓などもこの機械により生産を行っている。

3. 衛生管理の強化
 機械製造事業のほか、食品事業も手がけるようになり、業績も伸びてきた頃、食の安全安心へ関心が高まり始めた。    このため、2004年の食品新工場(埼玉県所沢市)の建設を機に、食品製造工程における安全管理体制の強化・徹底を行う国際的なシステムであるAIB食品安全衛生監査・指導システムを国内でいち早く導入した。衛生管理の面でも、業界のモデルとなるべく積極的に国際基準への対応に取り組んでいる。

4. ヨーロッパへの展開
 グローバル展開を図るため、ブランド力の強化策のひとつとして、2002年にパリのパン・菓子の機械および資材の展示会へ出品を行った。注目を集めるため全自動どら焼機を持ち込み実演。サンドするのはアンコではなく、現地の嗜好に合わせチョコに変更したどら焼きの試食を行った。また、翌年の2003年以降、現在に至るまで数回にわたり、ドイツの製パン製菓機械展示会であるiba展へ出展し、単独ブースとしてどら焼機などを持ち込み毎回大好評を得ているという。国内用の一般仕様では1時間あたり2,400個製造のところ、大規模生産が主流の現地事情に合わせて1時間あたり6,000個の製造可能な機械を展示した。
 出展当初からつきあいのあったオランダの現地業界関係者が、同社製品を取り扱う代理店として、2004年にマスダックヨーロッパを立ち上げ、機械の販売やサービスを行うこととなった。「全自動どら焼機」は「サンドイッチパンケーキマシン」という名称で欧州などに販売されている。
 その後、リーマンショックによって日本から機械の輸出が難しくなったことから現地生産の開始を決定。設計・製造等にあたっては現地企業の協力も得つつ、2009年にヨーロッパでの生産を開始した。その後、2012年にマスダックヨーロッパ(現マスダックインターナショナル)の株式70%を取得し子会社化した。
 現在では、大規模機械はヨーロッパで生産、中小規模の機械は国内からの製造・輸出となっている。
ヨーロッパ展開はどら焼機が最初であったが、海外ではキャラクターものを焼くことができる人形焼き機械の注文を受けることが多いことから、この機械を製造している事業者と協力し、同社ブランドとして輸出を行っている。

5. 最後に
 菓子パンや洋菓子などの商品の多さ、品質の高さや繊細さは日本独特のものだそうだ。欧米の菓子類は、大規模な大量生産か、手作りに近い少量生産に二極化しているという。
機械化したなかで高品質で多種多様な商品を作り出せるのが、日本の強みである。これを実現するため、商品の特長や発注元の味などへのこだわりに応じて、個別に機械を生産・調整し、ほぼオーダーメイドに近い形で納入しているという。
 マスダックのモットーは、「最初に菓子ありき」だという。同じどら焼きでも、店舗による違いはあって当然。その店の味になるように調整することが大切だと考えている。
「菓子は無くてもこまらないもの。ただし、あったらより幸せにしてくれるもの。」、「菓子を通じて少しでも世の中への貢献したい。」そんな社長の思いのもと、我々に個性豊かな、安全でおいしい菓子を送り届けてくれている。
 

<取材協力>

株式会社マスダック
 代表取締役社長    増田 文治
 企画広報室リーダー  星野 謙一
 株式会社マスダックウェブサイト http://www.masdac.co.jp/
 

技術のおもて側、生活のうら側について

発行:経済産業省産業技術環境局産業技術政策課 執筆/担当 松本、大和田
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