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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第109号

◆技術のおもて側、生活のうら側 2017年7月27日 第109号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支える産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

【軽くてコンパクトでありながら、強くて快適で機能性を追求するトップ・クオリティ企業】

<はじめに>
今回は、かつては村上藩の城下町として栄え、市内を流れる三面川の塩引き鮭で有名な、新潟県北部に位置する村上市にある「株式会社新潟ジャムコ」を紹介する。
航空機のギャレー(厨房設備)やラバトリー(化粧室)、フライトデッキ(操縦室)の装備品を製造し、世界トップクラスのシェアを誇る企業である。創業は平成元年。
東京の立川市に本社を置く株式会社ジャムコのグループ企業である。グループ全体では、新潟ジャムコ等が手がける航空機内装品製造のほか、航空機シート製造(ファースト及びビジネスクラス シート)、航空機器製造(熱交換器、エンジン部品、炭素繊維構造部材)、航空機整備(機体整備、車輪・ブレーキ等の装備品整備)を手がけており、ボーイング社をはじめとする機体メーカーや世界中のエアラインと取引を行っている。

<厳しい基準>
新潟ジャムコが扱う航空機のギャレーやラバトリーなどの内装品は、航空機部品の絶対条件である「軽量ー高強度」、「難燃性」が強く求められる。また、キャビン・クルーが最も効率的に使いこなせるための「機能」や「耐久性」、あるいは「デザイン」なども重要であり、かつ、必要な設備を限られたスペースにコンパクトに収めることが同時に求められる。
航空機部品の一部であるため、ギャレーやラバトリーといえども、その部材や構造は非常に厳しい条件をクリアしなければならず、アメリカ連邦航空局が定める基準が世界標準となっている。このため、新規参入できる企業も少なく、同社以外に、国内ではこれらの製品を製造している企業はほとんどない。アメリカやフランス、ドイツなどにある数社が主だった製造メーカーという。

<軽量化技術>
特に重要となる軽量かつ耐久性、強度に優れた部材の製造、開発を自社で手がけることで、厳しいコスト競争や品質の向上に取り組んでいる。
ギャレーやラバトリー等の内装品の壁材には、「ハニカムコア」と呼ばれる蜂の巣状の素材が使われている。
その原材料は、強度や耐熱性に優れる和紙のような薄い特殊な紙である。2m×1m程度の大きさの紙に、青色に着色した糊を決められた間隔で塗布する。その上に同じように糊付けした紙を何百枚と重ねていくのだが、その際、糊をつけた青色の線が次の紙に重ならないよう線の中央に来るように1枚ずつ目視で確認しながら丁寧に配置していく。このように糊付けし重ね合わせた紙をプレスして糊を固めた後、両側から均一に引き延ばす。そうすると、無数のごく小さな蜂の巣状の空隙のある六角柱になる。
次に、これをフェノール樹脂に浸漬し乾燥させる工程を2回繰り返し、ハニカムコアが完成する。このハニカムコアをある決められた幅で裁断し、樹脂を含浸させたガラス繊維やカーボン繊維の薄い板で挟み込んで加工したものが内装品の壁材として利用されている。
こうして生産されたハニカムコアのサンドイッチパネルは、機体のカーブに合わせ3次元曲面に加工するため、大きなオートクレーブで加熱、加圧して成型される。このようにして、非常に軽く、強度などにも優れた壁材を製造しているのである。

<オーダーメイド>
ギャレーは、各航空会社がサービスの差別化を図るため、様々な仕様の調理用機器などを装着するため、間仕切りの大きさや配線などがそれぞれ異なる。また、ラバトリーについても、限られた空間の中でいかに快適で、くつろげる空間を作るか、航空各社とも質感や機能に非常にこだわっており、照明や壁紙は基より、流し台、照明流し台や照明は基より、壁紙に至るまで細かい注文があるという。
ギャレーやラバトリーは、機体内での設置場所も必ずしも決まっておらず、このため外枠の大きさも注文ごとに異なり、その生産はほぼオーダーメイドとなっている。

<手作業による組み立て>
ギャレーやラバトリーの組み立てにあたっては、ハニカムコアのサンドイッチパネルで外枠や内壁の構造を作成するとともに、その内部や壁の裏側に1,000点以上もの配線や配管などのパーツを間違うことなく取り付けなければならない。このため、工程のほとんどを手作業で行っている。しかも、これら一つずつ異なるパーツの取り付け作業を、限られた非常に狭いスペースで行っている。
同社では、少しでも作業の効率化や正確性を上げるため、一つの台車にのせて流れ作業で生産を行うムービングラインを導入するとともに、製品ごとの作業状況や部品の過不足等がグループ企業全体で一目に把握できるようIoTを活用し可視化するなどの工夫を重ねている。
こうした取組と社員の教育により、手作業でありながら正確かつ繊細にオーダー通りの製品を仕上げている。例えば、ラバトリーの壁紙を貼る作業においても、複雑な曲面で1ミリもずれないように壁紙をつなぎ合わせている。
こうして、世界から高い評価を得ることができる製品を作りだすことに成功している。

<終わりに>
このようなたゆまぬ努力の結果、世界の中・大型旅客機に搭載されるギャレーのおよそ30%、ラバトリーのおよそ50%が同社製となっている。また、ボーイングの最新旅客機787型機に搭載されるギャレー、ラバトリーはすべて同社製である。
軽量化技術を基軸とした技術革新と、同社の持つ人のチカラや製品のクオリティが世界のトップブランドへと導いているといえよう。

<<取材協力>>
株式会社 ジャムコ
 経営企画部 執行役員付部長 知財グループ長  保住 裕之
株式会社 新潟ジャムコ
 第一製造部部長  板越 賢一
 第二製造部部長  五十嵐 隆次

株式会社 ジャムコウェブサイト https://www.jamco.co.jp/外部リンク
株式会社 新潟ジャムコウェブサイト http://www.niigata-jamco.co.jp/外部リンク

技術のおもて側、生活のうら側

発行:経済産業省産業技術環境局総務課 執筆/担当 松本賢英、松本智佐子
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