- 政策について
- 政策一覧
- 経済産業
- 技術革新の促進・環境整備
- 産業技術政策全般/イノベーション政策
- 産業技術メールマガジン
- 産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第123号
産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第123号
◆技術のおもて側、生活のうら側 2018年12月5日 第123号
こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支える産業技術を身近に感じていただければ幸いです。
今回は、産業技術環境局総務課専門官の尾谷洋平氏から、GROUND株式会社の訪問記事を投稿頂きましたので、配信します。
【物流×最新テクノロジーが切り開く”Intelligent Logistics”への挑戦
~GROUND株式会社 R&Dセンター『playGROUND(プレイグラウンド)』訪問記~】
産業技術環境局総務課の尾谷です。
今回は、ロボットやAIなどのテクノロジーを活用した物流ソリューションの開発・提供を行うGROUND株式会社の宮田啓友(みやたひらとも)社長に、ロボットやAI、および物流オペレーションの研究・開発を行うR&Dセンター『playGROUND』を御案内いただきましたので、その模様を御紹介します。
1.はじめに
近年、Eコマースが急速に成長する中、物流・流通業界は、多様化・高度化する消費者のニーズにスピーディに対応することが求められています。また、B to Bのモノの流れである企業間物流が増加していることや、慢性的な人手不足、物流オペレーションの複雑化などは、業界全体が直面する深刻な課題となっています。
playGROUNDは、新しいテクノロジーを日本国内の物流現場へと最適化し、そのスムーズな導入を実現するために、2018年8月に、大和ハウス工業が運営するマルチテナント型物流施設「DPL市川」の一角に整備された新しいR&D施設です。
今回は、GROUND株式会社が提供する“作業者の所へ商品を運んでくるGTPタイプ(Goods to person)の物流ロボット「Butler(バトラー)」と、同社が研究・開発を進める作業者と協働することによりその負担を減らすAMRタイプ(Autonomous Mobile Robot)ロボットの実証実験エリアを御紹介いただきました。
2.作業者の所へ商品を運んでくるGTP(Goods-to-person)タイプのロボット「Butler」
一般的な物流センターでは、入荷時に保管場所まで商品を運ぶ作業と、出荷時に保管場所から商品を取り出す作業を人が行っていたため、作業者の移動距離が長く、広い倉庫では1日に十数キロ~数十キロに及ぶ場合があり、作業者の大きな負担となっています。
「Butler」の導入により、作業者はステーションと呼ばれるエリアから動くことなく、ロボットが運んでくる棚に入荷した商品を保管したり、消費者の注文を受けて出荷する商品を取り出すことができるため、作業者は基本的に移動する必要がなくなります。
さらに、AIのアルゴリズムにより、出荷頻度が高い商品はステーションの近くに、頻度が低い商品は遠くに置くなどの在庫配置最適化が自動的に行われ、ロボットの移動距離を最短にし、生産性と業務効率化を図ることが可能です。また、棚には複数のブランド/企業の商品や違う種類の商品が納められ、人間には雑然として見えますが、オペレーション上は最適なものとなっているのです。
このオペレーションでは、「Butler」導入前と比較し、約4倍の生産性が期待されています。
3.人と協働するAMRタイプ(Autonomous Mobile Robot)のロボットについて
前述のGTPタイプ(Goods-to-person)のロボットは、従来のオペレーションと比較して生産性が大きく上がるものの、初期投資が大きく、倉庫のレイアウトや作業フローを抜本的に変更することが必要となるため、既設の物流センターを稼働させながら移行することが困難です。
人と協働するAMRタイプ(Autonomous Mobile Robot)のロボットは、物流施設内における既存のレイアウトや作業フローを変えることなく生産性を向上させることが出来ます。
GROUND株式会社が研究を進めるAMRロボットは、消費者からの注文を受けるとピックアップしなければならない商品が格納されているエリアへ自律的に移動します。作業者は、担当するエリア内に来たロボットがその液晶画面で表示する商品をピックアップして、ロボットのラックに入れ、画面上の操作でピッキング完了を入力します。すると、ロボットは次にピックアップしなければならない商品の置いてあるエリアに移動します。作業者は、担当エリアに留まり、次々とやって来るロボットに対して同じ作業を繰り返します。
作業者は担当エリアのみの移動となり、ピックアップしなければならない商品も自動的に表示されるため、業務効率化と作業者の負荷軽減が可能となります。
現在「playGROUND」では、作業者の負担軽減や負荷の平準化を目指し、ロボットの改良やオペレーションの調整が行われています。
4.今後の課題
(1)ピッキングの自動化
商品が多種多様で非定型であることから、現時点では棚から商品を取り出すピッキング作業は、いずれの場合も人が行っています。しかし、今後、さらなる省力化を目指すためには、ピッキングを自動化することも不可欠です。どんな商品でも人と同じようにつかむことが出来るロボットハンドの研究も進められていました。
(2)物流用マスタデータの整備
物流センターの作業を最適化するためには、商品の大きさ(3辺の合計値)や重さなどのデータ化が不可欠です。現在、多くの物流センターでは、現場の作業者が手作業で商品を採寸、計量し、データ化しており、商品の種類が増えると必然的に業務負荷が大きくなり、省人化のボトルネックになっています。ビジョンテクノロジーや3Dスキャンなどにより、これらの作業を自動化することや、データフォーマットの統一化などによる効率化・最適化が期待されています。
5.おわりに
物流業界は、空前の人手不足、人件費高騰にさらされています。海外の巨大Eコマース事業者との競争において、さらなる効率化・最適化は不可欠です。物流センターの最適化だけでなく、配送部門も含めた広い意味での最適化が期待されます。
<<取材協力>>
GROUND株式会社
共同創業者 代表取締役CEO 宮田啓友
プロジェクトマネジメント室 室長 池上裕亮
経営戦略室 広報チーム 山田亜希子
(敬称略)
GROUND株式会社ホームページ http://groundinc.co.jp/
技術のおもて側、生活のうら側
発行:経済産業省産業技術環境局総務課 執筆/担当 小宮恵理子、松本智佐子
〒100-8901東京都千代田区霞が関1-3-1
電話:03-3501-1511(代表)
お問合せ先
電話:03-3501-1773 FAX:03-3501-7908 までお寄せ下さい。