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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第125号

◆技術のおもて側、生活のうら側 2019年8月22日 第125号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支える産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

■人工コラーゲンで眼疾患に挑む

 再生医療といえば欧米のベンチャーがけん引していたのは、今は昔でしょうか。山中教授のiPS細胞の発見により、日本における再生医療のムーブメントもより盛り上がってきているのでしょうか。このような中、人工コラーゲンという新しいシーズで、再生医療に挑んでいる京都のベンチャー(コラジェン・ファーマ)をご紹介します。
 
【1 コラジェン・ファーマとはどのような会社でしょうか?】
  コラジェン・ファーマは、角膜や網膜疾患の治療のため、独自技術である人工コラーゲン様ポリペプチドの研究開発を主体に行っている会社です。また、マウスやラットへの薬物投与に関する評価試験等も行っています。2011年に、製薬企業に勤務していた能勢氏(現代表取締役)が、大学の同期会で20年ぶりに研究室時代の仲間と再会したのを切っ掛けに、起業しました。
  もともとは、東京にオフィスを構えていましたが、2013年、再生医療が盛んで行政の支援も手厚い京都(京大桂ベンチャープラザ内)にオフィスを移転しました。今は、京都の地の利が活かされ、移転は正解でした。
 
【2 今はどのような開発をされているのでしょうか。】
  弊社が開発しているのは人工コラーゲン様ペプチドです。再生医療に必要な3つの要素(細胞、増殖因子、足場)のうち「足場」にあたるものです。細胞をそのまま人体に移植しても再生医療はできませんが、細胞に心地よいクッションとして、この足場である人工コラーゲン様ペプチドを与えることにより、損傷した細胞を蘇らせることができます。
  ヒトの体内に存在しているコラーゲンは全タンパク質の1/3ほどを占めており、生体内で様々な働きをしています。我々が開発した人工コラーゲン様ポリペプチドの特徴は、(1)天然コラーゲンが持つ機能を自由に選択して必要な機能(細胞接着機能や止血機能等)を増幅させられること、(2)ジェル状、シート状など自由に成型ができることです。
  これらの特徴を生かして、何を対象に実用化するのかを考える際に、社会のニーズ等を医療関係者へのヒアリングなどを踏まえ、ニーズに対してサプライが追い付いていない角膜や網膜の再生に焦点を絞り、これら専用の「足場」を開発することにしました。
  眼の病気については、角膜ですと国内ドナー数が圧倒的に足りないし、輸入角膜でも対応が難しい(生体適合性が必要などの課題がある)。網膜についても、黄斑円孔という網膜に穴が開く病気がありますが、手術をしても視力が回復できない患者さんも3割位いますし、術後1週間うつぶせになる必要があります。手術時間の短縮等、様々な観点からのQOLの向上が必要です。
 現在は、ウサギやサルなどの動物を使った有効性・安全性の評価を主体に非臨床POCの取得段階です。
 
【3 課題とこれから】
 バイオベンチャーである弊社の当面の課題は資金調達です。金銭的な資源が不十分な中で、研究を進めていく必要があります。また、ヒトと動物で見え方が異なるなど、今後は動物検証の後のヒトへの適応―動物で得られた成果がどれだけヒトで通じるか―も課題です。
  2023年に上市を目指しており、その際には、自社で医療機器として製造販売を開始する予定です。
今後の事業展開については、2016年に出願した特許が国内で成立し(筆者注:京都市からの支援が大変助かったそうです!)、並行的に米国と中国と欧州にも特許を出しており、眼の病気が多い中国への展開を視野に入れています。
 
■ 後記
  コラジェン・ファーマでは人工コラーゲン様ペプチドを他疾患へ応用する試みも検討しているとのことでした。日本の医療系のベンチャーの勢いが増す中、同社がその勢いをけん引し、人工コラーゲンの技術も世界へも大きく羽ばたいていくことを、切に期待します。
 
<取材協力>
コラジェン・ファーマ株式会社 代表取締役 能勢 博
コラジェン・ファーマ株式会社 ホームページ https://www.kolagen-pharma.com/about/

技術のおもて側、生活のうら側

発行:経済産業省産業技術環境局総務課 執筆/担当 新川元康、松本智佐子
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