経済産業省
文字サイズ変更

産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

めるまが登録

◆技術のおもて側、生活のうら側  2012年7月26日 第49号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆スマホ画面の裏方 たかが粘着、されど粘着

ある日、スマートフォン(スマホ)の表側に違和感を覚え、それが
何なのかわからなかったが、先日やっと気づいた。どうやって本体
とガラスや液晶パネルを留めているのかと。見えないところにネジ
でもあるのだろうか。

その貼り合わせシートを開発したという共同技研化学株式会社にお
話を伺うことができた。同社は元々粘着テープのメーカーとして創
業し、現在ではスマホなどの光学商品における部材の固定や回路基
板などの接合、自動車用の内装材などに用いられる両面粘着テープ
を開発製造している。

スマホは、落とした際のガラスの破損を防ぐために、液晶(LCD)
とタッチパネルの保護ガラスとの間に空気を入れている。その隙間
が原因で、特に屋外では光が反射して画面が見にくくなる問題があ
った。

このため、表面の保護ガラスと液晶の隙間を透明の樹脂で埋め、見
やすさを改善する技術が開発された。この樹脂も大別して液状のも
のとテープの二種類があり、同社はテープの技術を開発することに
した。

液状方式は、素材自体はシンプルだが、硬化させる必要がある。4
インチ程度の小さい画面サイズならともかく10インチ以上になる
と硬化収縮するためどうしても画面に歪みが出てしまう欠点があり、
さらに貼り合わせに空気が入らないよう真空にするなど製造工程も
複雑になる。

一方、テープ方式は、貼り合わせだけで済むので一見簡便であるが、
貼り合わせ面に段差があると気泡や剥離が生じやすくなる。そこで
同社が考えたのが液体を使って貼り合わせる方法である。テープと
貼り合わせ面に液体を介在させることにより気泡や剥離を生じさせ
ないで貼り合わせができる。また、テープの収縮と液体の膨張が打
ち消しあうため歪みが抑えられ、画面の乱れも発生しない。

ただし、テープをタッチパネルのガラス板に貼り合わせる機械がな
かったので、韓国メーカーと共同で製造した。当時、日本の機械メ
ーカーはとても忙しく、それどころではなかったためだ。

さらに、テープを作る技術にも溶剤を使うものと使わないものがあ
り、溶剤を使わない方が製造コストや環境負荷を低減できるので、
この方向に持っていきたいと考えているという。

この基となる両面粘着テープを作り始めたのは7年前だが、大きな
仕事は大手企業に行ってしまい、数年前には薄型テレビへの引き合
いがあったがとても応じきれる量でなかったので断ったらいつの間
にかスマホの時代になり、やっと出番が回ってきたと感じていると
いう。

これらの技術は当然特許を取得しているが、ノウハウ化している部
分があるので容易に真似されない。接着や粘着の世界は経験値が非
常に大事で、様々な要素を経験していないとできるものではないと
のことだった。

今の悩みは後継者問題だという。しかし、会社での地位が高くなる
と現場を離れる技術者が多い企業がある中、社長が現場の先頭に立
ってアイデアを出し、社員を引っ張っていく姿は実に力強い。自分
たちの会社には組織で仕事をするのではなく、一人でやれるところ
に魅力があるのかも知れないとおっしゃる社長の姿を見て、我が国
の技術を支えていることが実感できた。

<取材協力>
共同技研化学株式会社 代表取締役社長 濱野 尚吉、企画室長 三木 和幸

■PCからの配信登録
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/index.html
■PCからの配信中止
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/kaiyaku.html
■携帯からの配信登録
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/k_index.html
■携帯からの配信中止
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/k_kaiyaku.html
■記事へのご意見
innovation-policy@meti.go.jp

発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、木村
http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/innovation_policy/index.html
〒100-8901東京都千代田区霞が関1-3-1
電話:03-3501-1511(代表)

問い合わせ先

本ぺージに対するご意見、ご質問は、産業技術環境局 産業技術政策課
TEL 03-3501-1773 FAX 03-3501-7908 までお寄せ下さい。

 
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.