産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2012年11月29日 第53号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。
◆真空で断熱
最近、日本でも、省エネ・節電意識の高まりを受けて、二枚のガラ
スの間に乾燥した空気を挟んだペアガラスがかなり普及してきた。
ガラスよりも熱伝導率が低い空気やガスをサンドイッチしているた
め通常の1枚ガラスに比べて断熱性能が高いという。
これに対し、今回話をうかがった日本板硝子株式会社の「真空ガラ
ス」は、二枚のガラスの間に魔法瓶のように真空層を挟むことによ
り熱の伝導を抑制するため、優れた断熱性能、遮熱性能を発揮する。
真空ガラスの歴史をたどると、基本技術は、シドニー大学のリチャ
ード・コリンズ教授の研究成果によるもので、それに同社が着目し、
94年にライセンス契約を結ぶと同時に商品開発にとりかかり、そ
の後の3年間で量産技術を作り上げ、97年に世界で初めて住宅用
の窓ガラスとして発売した。
真空ガラスは、真空層を、1枚ガラスと特殊な金属膜をコーティン
グしたガラス(Low-Eガラス)で挟み込んでいるが、この真空層と
Low-Eガラスの働きにより、1枚ガラスの約4倍、一般的なペアガ
ラスの約2倍の断熱効果を実現しているなど、非常に大きな省エネ
効果がある。
また、真空ガラスは、その真空層が僅か0.2ミリの厚さで、ガラ
ス全体でも6.2ミリと、1枚ガラスと変わらないその薄さにより、
既存の1枚ガラス用サッシをそのまま使ってガラスの入れ替えがで
きるのも大きな魅力。サッシ取替え工事のような大規模な改修の必
要もないため、入れ替え作業も短時間で終わる。
空気よりも真空層の方が熱を伝えにくいことは言うまでもなく、真
空ガラスの発想自体は特段奇抜なものではないが、では実際の製造
となるとそう単純ではない。真空にすると大気圧で押されて二枚ガ
ラスがくっつき、断熱効果がなくなってしまう。これを防ぐため、
スペーサーと呼ばれる非常に薄く小さい金属部品を一定間隔で配列
し、どの部分においても0.2ミリの真空層を保持するようにして
いる。
この量産技術だけでも相当なノウハウがあるらしく、同類の真空ガ
ラスを製造しているのは世界で同社だけという。
昨今の全国的な電力不足で節電対策の必要性が高まる中、真空ガラ
スの需要が高まっているが、自治体の中でも積極的に省エネルギー
に取り組んでいる三鷹市や、大手牛丼チェーンの開口部の大きい店
舗(路面店)などにおいて、同社の真空ガラスの導入が進んでいる。
なお、導入に当たっては、省エネに関する優遇税制や、補助金制度
を利用しているという。
しかし、真空ガラスのメインのターゲットは既存の住宅だという。
新築住宅とは桁違いの戸数の既存の住宅の市場には、ペアガラスな
どの省エネガラスはほとんど使われていないため、これらの市場に、
どうやって普及させていき、省エネを行っていくかが販売面での課
題だという。
ポピュラーな窓枠建材であるアルミサッシは熱伝導率が高いので、
サッシのところから熱が逃げてしまう。各サッシメーカーは、10
年以上前から断熱性能の高いサッシの開発に力を入れているという。
最終的にはお客に窓として使っていただくので、ガラスの性能だけ
でなく、周辺の部材との適合性を考えていくことが重要であるが、
真空ガラスは窓の断熱化に大いに貢献できるという。
今年発売した、特に遮熱効果に大変優れた真空ガラスは、夏場のピ
ーク電力の節電、ピーク電力を下げるという効果がとても大きい商
品で、特に東京以南の地域にもっと普及させたいという。年明けに
は、そのグレードアップ版として、さらにハイレベルな省エネガラ
スを発売する予定とのこと。
東日本大震災以降、事業所はもちろん、一般の家庭においても省エ
ネ対策への関心が高まっている中、真空ガラスの住宅、ビルなどへ
の一層の普及、省エネに貢献するさらに高度な商品開発に対する同
社への期待は非常に大きい。
<取材協力> 日本板硝子株式会社
建築ガラス事業部門 機能硝子部 新商品開発・評価グループ 担当部長 浅野 修
建築ガラス事業部門 アジア事業部 日本統括部 営業部
営業企画グループ主任 朝香 寛
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