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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2013328 第57号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆身近な宇宙の実現へ
宇宙の利用といえば、莫大なコストと時間を要することが容易に想
像でき、日本に限らず、どこの国でも国家主導で行われる一大プロ
ジェクトであることは、誰も疑わないことであろう。また、このよ
うな中で、民間企業が宇宙を利用して事業を行うことなどまったく
想像もできなかったことである。

スペックを持ってくれば人工衛星を造るという会社に対し、顧客の
ニーズがどんな衛星を利用したら満たされるかを提案する、株式会
社アクセルスペースCEOの中村氏にお話をうかがった。同社は、
重さ100キログラム以下の超小型人工衛星を独自に設計開発する、
世界にも類をみないベンチャー企業である。

中村氏は元々、東京大学の研究室で、手のひらに乗るような小さな
人工衛星を造っていた経験がある。卒業までに3つの衛星を造り上
げたが、徐々に性能が上がってきたという手応えがあったため、小
さな人工衛星であっても、社会の役に立つものが造れるのではない
かという確信のもと、実用化に向けて準備を始めた。

一方、船会社などに航路の安全情報を提供するウェザーニューズは、
温暖化の影響により氷が陸地から離れた北極海航路の的確な情報を
得る手段がなかったが、自分で人工衛星を持ってしまえば、好きな
タイミングで好きなだけ北極海を撮ればいいので、数億円という投
資をしたとしても十分に元が取れると考えた。同社からこの新しい
ビジネスモデルが描けると言ってくれたのが起業への大きな決め手
となったという。

必要な機能を搭載した人工衛星を使いたいときに軌道に投入して使
うことができる。こういった専用人工衛星という考え方はこれまで
なかったという。実例を増やしていくことによって、超小型人工衛
星を使ってビジネスする会社が増えていってほしい。いろいろな人
が超小型人工衛星を使っていく世界を作りたい。同社がリスクをと
って、超小型人工衛星を打ち上げてインフラにして、そのインフラ
から得られるデータを使ってまた新しいサービスを作ってほしいと
いう考え方だ。

超小型人工衛星をたくさん打ち上げることによって、大型衛星1機
ではできないことができるようになる。超小型人工衛星そのものは
1機あたり数億円で持つことができるので、百機造っても大型衛星
1機分にもならない。人工衛星に様々な機能を盛り込んで大型にす
るのではなく、限定されたスペックの超小型人工衛星を複数同一軌
道に投入したり、それぞれに機能を持たせた超小型人工衛星を打ち
上げたりすることによって、より低コストでしかも今まではできな
かったきめ細かい観測ができるようになるという。

こういったビジネスのアイデアは、顧客などからの相談や引き合い
を受けて初めて出てくるもので、それだけ人工衛星には大きな可能
性があるということもあるが、それ以上に、同社から先にアイデア
を提案するとそれ以上の可能性の芽を摘んでしまうことを懸念する
からだというのが中村氏の経験だそうだ。

超小型人工衛星によりリアルタイムで地球の姿が分かるようになる
ことは、第2のインターネットぐらいの革命的なことだという。地
球の画像を世界中の人がリアルタイムで見られるということによっ
て、情報の確度が増し、よりインターネットというものの信頼度を
上げる。そういった役割の一部を超小型人工衛星が担えるという。

会社ができて今年で5年。人工衛星そのものの組み立ては実はそれ
ほど難しいことではなく、神田のビルの一室である同社内に設けた
クリーンルーム内で行っている。ネックはやはり打ち上げで、他の
衛星の打ち上げの際に相乗りさせてもらうことが多いが、そのタイ
ミングが合うかどうかにかかっている。本来であれば2010年に
インドで1機目の打ち上げを計画していたが実現せず、同じ年にロ
シアの会社との打ち上げ契約が成立した。衛星事業には国が関与し
ていることが多いので、政府の意向、事情が多く絡んでくるという。

中村氏をはじめ同社のスタッフの「宇宙を身近に、普通の場所にし
たい」という願いがかない、同社のたくさんの超小型人工衛星が、
地球の周りを、数々の用途で飛び回り、「超小型人工衛星といえば
日本だよね!」と胸を張って言える日が来るのもそう遠くないのか
もしれない。

<取材協力>
株式会社アクセルスペース 代表取締役CEO 中村 友哉

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