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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2013725 第61号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆我が社にしかできない冷却技術を!
ツインバード工業株式会社という家電メーカーを御存じだろうか。
スタンド照明の分野で高い国内シェアを持つほか、大手企業があま
り手を出さないニッチ市場を狙った、創意工夫を凝らした小型家電
を製品化することで知られている。

例えば、最近同社が力を注いでいるのが防水性AV機器。入浴好きの
日本人の心にヒットして販売は順調という。入浴時間が長いのは女
性だという観点から、ハンディタイプの製品の外装色をホワイトと
ピンクに絞るなどの小技も利かせている。

もともと贈答用のスプーン等を多く扱うメッキ業を営んでおり、ギ
フトカタログ掲載用の製品開発・販売で業績を伸ばした。やがてギ
フトカタログで家電製品が扱われるようになると、そのマーケット
に参入すべく家電の開発を始めたという、驚くほどチャレンジング
な決断をして現在に至っており、今もギフト用家電では一定の国内
シェアを維持している。

本稿で紹介する、世界で初めて量産化を実現したスターリング・ク
ーラーの開発には、このような企業風土が影響しているのかもしれ
ない。

製品の作動原理であるスターリング・システムは、1816年に発明さ
れた外燃機関である。シリンダー内に封入したガスを外部から加熱
・冷却し、ガスの体積変化によりピストンを動かす仕事をさせる。
温度差を運動エネルギーに変えるメカニズムを逆用し、運動エネル
ギーから温度差をつくり冷却に利用することも可能で、同社の製品
もこの延長線上にある。

理論上、内燃機関を超えるエネルギー変換効率が期待できる装置で
あるが、小型品の低コスト生産には課題が多い。潜水艦の補助動力
として実用化された例では、比熱容量の大きいヘリウムガスを使用
することで出力の確保と一定の小型化を両立させているが、ヘリウ
ムは僅かな隙間からも漏れるため高度なシーリング技術が必要で、
これは当然、コスト増要因になる。軍用であれば、コストよりも性
能を優先させる考え方もあり得るが、民生用となるとそうはいかな
い。

加熱用の燃料は何でもよく、また、内燃機関のように爆発過程を含
まないため静かなことなどが注目され、近年になって再び脚光を浴
びているものの、上記の欠点などから小型品の量産化は困難とされ
てきた。それを克服した同社の量産化技術は社会的に高く評価され、
2009年には、第3回ものづくり日本大賞の特別賞を受賞している。

同社SC開発課の曽根課長に、この高いハードルに挑戦した理由を伺
ったところ、「当社には、他社では得られないコア技術と言えるも
のがない。それをぜひ確保したかった」という。次に「では、なぜ
スターリング・システムだったのか」を尋ねると、「自社製品のア
ウトドア用ポータブルクーラーの冷却能力向上の要望が強かったの
で、替わるものを探した結果、たどり着いた」と、通常の製品開発
業務の一環と言わんばかりの回答をいただいた。

同社のスターリング・クーラー製品の中には、-200℃以下の温度帯
まで到達させられる高性能品もあり、研究開発や医療現場の最先端
で活用されている。そのような装置の開発に着手するきっかけがク
ーラーボックスだったというのは、いかにも同社らしい。実際、低
スペックのユニットを搭載したポータブルクーラーも販売されてい
る。

もちろん、開発が平易だったわけではない。とりわけ困難を極めた
のは、量産に当たり、ヘリウムガスを漏らさない精密な金属加工を
内部に施す必要があったこと。シリンダーとピストンの隙間は0.01
mmと、自動車用エンジンの10倍の精度を要する。その克服には、地
元・燕市の金属加工業の協力も欠かせなかった。

ギフトカタログ商品をきっかけに、世界初の技術開発を達成したツ
インバード工業。この発想の豊かさで、これからも我々を驚かせて
くれる活躍を期待したい。

<取材協力> 
ツインバード工業株式会社 SC事業推進部 SC開発課長 曽根 和哉

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