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テレビを床の上から脱出させよう
産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2013年8月29日 第62号
こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。
◆テレビを床の上から脱出させよう
液晶技術が一般化し、現在、ほぼ全てのディスプレイは薄型化して
いる。比較的大型のディスプレイを使用する製品として、多くの方
がパソコンとテレビを思い浮かべるだろう。多様な使われ方を想定
して様々なスタイルの商品が展開されているパソコンに対し、より
古くからあるテレビは、市場投入された数十年前と同様、居間の床
上にどっしり据えられているケースが現在も主流である。
本号で紹介するスタープラチナ株式会社は、同社の土方CEOが、ほ
ぼ全てが薄型となったテレビを壁掛けにするビジネスを展開すべく
2011年に起業したベンチャー企業である。地上放送のデジタル化に
伴うテレビの買換え需要がピークを過ぎた頃、当時所属していた企
業では「テレビ壁掛け化のビジネスはこれ以上伸びない」とみて事
業縮小を決めた。これに対し「壁掛け化はライフスタイルの変化に
もつながる。まだ伸び代はある」と考えた土方CEOは、同僚ととも
に社を出てスタープラチナ社を起業した。
独立した当初は、壁や柱にボルトで取付け具を固定する製品を扱っ
ていた。専門業者による工事が必要なため工賃がかかる上、賃貸住
宅では原状復帰経費も要する。自ずとマーケットは限られていた。
もっと良い技術はないかと探すうち、家庭用ステイプラーの針で取
付け金具を壁に固定する特許を活用し、フックや棚を製品化してい
る企業に出会った。
固定する仕組みは、以下のような仕組みだ。①格子状の穴が空けら
れた板状の取付け具・フックの上に、その穴にぴったり収まる凸部
が設けられた透明の樹脂フィルムを重ねる。②重ねたフィルム越し
にステイプラーの針を、かすがい形状のまま壁に打ち込む。
使用するステイプラーは、180度まで開くタイプの製品であれば機
種は選ばないが、取付け可能な壁の種類は、石膏ボード壁に限定さ
れている。専門技術を要さないので、素人でも取付けが可能だ。
フックの例では、固定に8本の針が必要で、静止耐荷重は6kgまで
保証される。石膏ボードには多くの繊維質が練り込まれており、そ
れが針に絡みつくために高い強度が得られる仕組みである。とは言
え、針一本単位で見れば強度には限界があるため、取り外すのはた
やすい。取り外した後の針穴は、近くで目を凝らさないと気がつか
ないほど小さい。
「この技術でテレビを壁に掛けられたら、インパクトは大きい。我
が社のキラープロダクツになり得る」そう考えた土方CEOは、この
企業とテレビ用壁掛け金具を共同開発。2012年から販売したところ、
家庭用ステイプラーで設置可という特徴が注目されマスコミで取り
上げられた効果もあって評判を呼び、順調に売上げを伸ばしている。
大型製品であれば優に20kgを超えるテレビの重量をステイプラーの
針で支えるということには、若干の不安もないではないが、石膏ボ
ードに適正に打ち込んだ場合、針一本の引っ張り強度は、水平方向
(壁に対し垂直)で1kg強、下方向(壁に対し水平)で3.7kg強あ
る。針の打ち込み方に問題がなければ、理論上は数百kgに耐えられ
る計算であり、仕様上の耐荷重は、相当な余裕を見込んだ設定とな
っている。実験を経て震度7まで耐えられることを確認した上で、
震度6までの耐震性能が保証されている。
土方CEOは、京セラグループ企業に在籍した経験があり、稲盛和夫
氏の薫陶も受けている。稲盛流経営に倣い、企業理念を定めて社員
全員に知らしめ、社会の役に立つ仕事をすることを理想に据えて事
業に取り組んでいる。テレビの壁掛けにこだわりを見せるのも、こ
れが室内空間の使い方を劇的に変えるポテンシャルを持つと信じる
が故だ。
メディアとタイアップし、ギターや自転車を壁掛けにする提案も進
めている。
賛同いただける方も多いと思うが、平らな空きスペースがあると、
人はつい、そこに物を置いてしまう。筆者の家の床もテレビ台の上
も物だらけである。解放された床はきっと快適で、ロボット掃除機
も優雅に動き回ってくれるだろう。床に物を置くことからの脱出は、
土方CEOが主張するとおり、確かにライフスタイルを変える起爆力
がある。
<取材協力>
スタープラチナ株式会社 CEO最高経営責任者 土方 秀企
田邊 雄介
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