経済産業省
文字サイズ変更

産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

めるまが登録

◆技術のおもて側、生活のうら側  20131128 第65号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆プロ料理人の“匠の技”を機械の刃で!

「我が社の製品で加工した食品を食べたことがない、という日本人
は、ほとんどいないのではないでしょうか。」株式会社ドリマック
スの松本英司社長は、静かにこう語る。

同社は、敢えて平易な言い方をすれば、生鮮食品を細断加工する機
械装置類を販売している企業である。ただし、その機械装置は、熟
練した職人でしか到達できない水準のカットを、人間以上の正確さ
とスピードで達成してみせる。それどころか、人間技ではとてもで
きない、例えば、堅いカボチャのツマ加工(径 0.7mm!)もできて
しまう。

松本社長も統計的な根拠を持つわけではないが、同社製品の最終ユ
ーザーとしては、大手コンビニエンス・ストアや外食チェーンの名
が、これでもかというほどに並んでおり、確かにその通り、と思わ
せる説得力が伴う。

自分はコンビニも外食も利用しない、という方もおられるとは思う
が、漬物や紅ショウガを製造・販売する食品加工メーカーも同社製
品を採用している。また、スーパーのバックヤードで製造されるこ
とも多い総菜や刺身のツマ、輪切りされた長ネギ、正確に均等分さ
れたカットスイカなど、同社製品によるカット品を上げていけば、
本当にきりがない。

ドリマックスは、先代社長の松本英夫氏(現会長)が、1960年に創
業した。大手輸送機器メーカー出身の技術力を生かし、3年後には、
現在も改良を加えながら販売が続いている「水流循環式電動刃物研
ぎ機」を開発し、今に至る企業としての礎を構築した。

1970年に株式会社化した後、大手企業への装置のOEM供給もしながら
事業を進めていたが、現在も同社の中核技術である「新・丸刃遊星
回転方式」の野菜類カットマシーンが考案された1996年に、企業と
して大きな転機を迎える。新開発した厨房用小型調理器を「DREMAX」
という自社ブランドで全国展開したのだ。

翌1997年には、外部からの出資も得て、株式会社ドリマックスコー
ポレーション(現ドリマックスの前身)を設立し、開発・製造部門
(現ドリーム開発工業株式会社)と販売部門を別会社化して自社ブ
ランドの積極販売を本格化させる。

同社が開発した新・丸刃遊星回転方式は、従来の同方式に比べ部品
点数が極端に少なく、低コスト生産と小型軽量化を実現させたとこ
ろが特徴だ。複雑な構造が解消されたため、防水・防塵対策がとり
やすく清掃もしやすい。この結果、食品加工の現場で最重要とされ
る安全と衛生が確保された上、故障頻度も大幅に減らすことができ
た。単純な構造は、個々の部品への負荷を減らせるため、刃の回転
を高速化させることも可能にし、食材に負荷をかけない切断も実現
できた。

今なお開発の現場に立つ松本会長が発案された技術だが、アイデア
を具体化させる段階で二人の御子息、現社長の松本英司氏と弟の光
司氏(同社技術開発部長)の協力が欠かせなかった。松本社長が、
大手メーカーのデザイン部門で培ったCAD技術でアイデアを現実化す
るための設計を進め、金型メーカーへの勤務経験で、1/1000ミリ単
位の精度を再現するノウハウを養った技術開発部長の技が、その設
計を実機に反映させた。

これらの技術は国内外で特許化されているが、製品には、図面や現
物の分析からでは見いだせないノウハウも組み込んであり、国内外
の他社が、図面や現物の分析結果からコピーを試みても、容易には
再現できない仕組みになっている。

2000年に至ると、その技術力が大手コンビニエンス・ストアチェー
ンの目に止まり、同チェーン専用工場への納品が進んだことにより
事業は拡大した。これを契機に、新・丸刃遊星回転方式を採用した
スライサーの市場評価が高まり販売も拡大したが、需要が一巡する
と業績の踊り場も生じた。この経験から、企業として常に業績の向
上を図っていくためには、新たな需要を掘り起こす新製品の開発が
不可欠と判断し、開発の手は緩めない。

研究開発を絶やさない背景には、国内外他社への対抗という観点も
ある。ノウハウが非公開とされていることもあり、「3年程度では
追いつかれない」との自信はあるものの、5年先、10年先は見通せ
ない。このため、“追いつかれる前に先に行く“戦略なのだという。

最近は海外進出にも積極的で、当初は、富裕層需要を狙い中東に力
を入れるところから始めたが、訪問した際に松本社長は、「インド
でのビジネスが拡大しとうに中東を超えた。」と語った。国内の顧
客でもある食品産業の海外進出に伴い、海外のビジネスが拡大する
ケースも増えている。

海外展開となると、国際分業による製造コストの削減も視野に入る
が、同社の場合、工程は全て国内。ほとんどは埼玉県内で完結して
いるという。“鋳物の街”として名を馳せた地元・川口市内に協力
企業が多いが、岩槻市にある協力工場では、パート経験のある近隣
主婦によるネットワークを作り、内職として部品の組立てを委託し、
「もしかすると中国より安い」(松本社長談)低コスト製造を実現
している。

製品開発もビジネス拡大も、ずっと経営者ファミリーが担ってきた
だけに、企業としては採用や後継者の問題が気になるところだが、
幸い、工業高校や大学技術系学部の卒業者を安定的に採用できてい
る。社員には、報奨金を用意して発明を奨励しており、この中から、
やがてドリマックスの次代を担う者が育つのかもしれない。

ここまで文字を費やしてきたが、同社製品のすごさを文字や写真で
伝えることは本当に難しい。時間がある方は、ぜひ、検索サイトで
社名を入力し検索していただきたい。ユーチューブに投稿された映
像のアドレスがヒットするはずである。動画を御覧いただき、私と
驚きを共有いただきたい、と切に思う。

<取材協力> 
株式会社ドリマックス 代表取締役 松本 英司
           社長秘書  川島 睦子

■バックナンバー
http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/innovation_policy/mmagazine.htm

■PCからの配信登録
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/index.html

■携帯からの配信登録
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/k_index.html

■PCからの配信中止
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/kaiyaku.html

■携帯からの配信中止
https://wwws.meti.go.jp/honsho/policy/innovation_policy/merumaga/k_kaiyaku.html

■記事へのご意見
innovation-policy@meti.go.jp

発行:経済産業省産業技術環境局産業技術政策課 担当/執筆:島津、小金澤、木村
〒100-8901東京都千代田区霞が関1-3-1
電話:03-3501-1511(代表)

問い合わせ先

本ぺージに対するご意見、ご質問は、産業技術環境局 産業技術政策課
電話 03-3501-1773 FAX 03-3501-7908 までお寄せ下さい。

 
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.