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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2014424 第70号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆消費者向けヒット商品に生まれ変わった業務用塗料

ショーウィンドウの装いも切り替わる春。ガラスに貼られたポップ
なアートに目を留める方もおられるだろう。

実は昨年夏から、ガラスを彩るのに便利なペンタイプのツールが発
売され、ヒット商品となっている。建物の壁やガラス、金属、プラ
スチックの表面等に自由に絵を描くことができ、乾燥すれば指で簡
単に剥がせる。汚れが付着しなければ、再び貼付け直すことも可能
だ。塗料自体は水性で、有害な溶剤は必要としない。

この商品を生み出したのは、遮熱・防汚など機能性を備えた業務用
塗料を製造・販売する太洋塗料株式会社である。

同社は、日本塗料工業会の初代会長を務めた松本十九氏による1951
年の創業以来、建設業や製造業向けの特殊塗料を主力商品として事
業展開してきた。それが全く異なる領域のビジネスに参入するきっ
かけとなったのは、大田区産業経済部からの働きかけである。

東京都では、2012年度から、都内ものづくり系中小企業の製品とデ
ザイナーの発案を結びつけ新商品を提案する「東京ビジネスデザイ
ンアワード」を主催しており、大田区からの働きかけは、その第一
回アワードへの出品をしてはどうかという誘いだった。

その頃の太洋塗料は、公共事業費の削減とリーマンショックの影響
が響き、業績低迷の時期にあった。参加する余裕はないと断ること
もできたはずだが、同社は、せっかく誘っていただいたという思い
と、挑戦しなければ何も始まらないという平本代表取締役の判断か
ら、応募を決意する。

応募するには、まず、新しい活用のアイデアを欲する「素材」を社
内から選ばなければならない。社員皆で検討し選んだのは、保管中
の自動車部品等に予め塗布する保護用の塗料。乾燥すると簡単に剥
がせる特徴を生かせる、良いアイデアが寄せられないかと期待した。

同社の出品に対し、二十数名のデザイナーから提案が集まり、審査
を経て、小関隆一氏が提案したペンがテーマ賞を受賞した。

受賞提案をみた太洋塗料の関係者は、部品保護用の塗料をペンにす
るというアイデアもさることながら、シンプルでポップな商品デザ
イン、販売店舗におけるディスプレイ案、取扱店を限定したプレミ
ア商品としての販売戦略に至るまで、提案一つ一つの完成度の高さ
に驚愕した。消費者向け商品という、自社で経験のないビジネスス
タイルに感心するとともに、これまで取引したこともない販売店と
いかに契約するのかという戸惑いも生じた。

社員一同が残念に思ったのは、最優秀賞・優秀賞が得られなかった
こと。だったら商品化を一番にしてやろうという意気込みが生まれ、
1月下旬の受賞発表から5か月後には、見本市「インテリアライフ
スタイル展」に試作品を出展するに至った。

デザインが完成していたとは言え、何の問題もなく商品化できたわ
けではない。垂直面に文字や絵を描く前提なので、塗料の粘度を液
だれしない適正な水準に再調整する必要があり、はめ込み式だった
キャップをスクリュー式に変更する必要もあった。最も苦労したの
は色の調整だ。担当役員の林常務によれば、デザイナーの小関氏が
理想とする色調が出せるまで、開発担当者は涙をこぼしながら試作
を繰り返したという。

消費者向け商品の見本市という経験のない場への出展に、どのよう
な反響が得られるか全く見通せないでいる中、太洋塗料のブースに
は、これまでの同社の客層とは全く異なる女性来場者が大勢押し寄
せた。大勢の来場者が集まるブースには、マスコミの取材も集まる。
さらに来訪者の中には、アワードへの提案の中で小関氏が取引先と
仮定していた大手販売店のバイヤーがおり、すぐにでも欲しいと望
外の声が得られた。

販売店担当者が「1か月のうちに売り切りたい」とオーダーした初
期納品分は、2週間で売り切れ、その後半年で1万本を販売するに
至った。今では海外市場も視野に入れ、語学力が足りない点は、都
や区の支援を借りながら取り組む。平本社長は、「未知のことも多
いが、昨年、この商品にいただいたグッドデザイン・ものづくりデ
ザイン賞(中小企業庁長官賞)も、いろいろ踏み出す勇気となった」
という。

アワードへの応募を契機に、全てが良い方向に回っている太洋塗料
だが、その流れを生んだのは、特徴的で高水準な技術力という礎と、
判断を迫られたときに、挑戦する方を選択した決断力であることは
間違いない。

<取材協力>
   太洋塗料株式会社 代表取締役  平本 光雄
            常務取締役  林  清史

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