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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2014年7月31日 第73号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆イノベーティブな「事務の王様」が創るおもしろカメラ

業務時間のほとんどはオフィスで過ごす、という方であれば、一度
ならずお世話になっているはずの事務用品大手「株式会社キングジ
ム」。同社が2010年から販売しているインターバルレコーダーが、
画質や防水性を向上させ新型に生まれ変わった。

インターバルレコーダーとは、一定間隔(1秒~1日)ごとに撮影し
た静止画像を自動的につないで動画を作成してしまうデジカメの一
種。既存のデジカメやスマホアプリにも、一定間隔ごとに撮影する
機能を持つものもあるが、動画にするための編集作業は必須。編集
作業が不要な専用機としては他社に類似品はない。発芽した植物が
にょきにょき伸びていく様子や、飛ぶように変わっていく空と雲の
動きなど、自然ドキュメンタリーなどでお馴染みの早送り動画が素
人でも撮影できてしまう面白みがある。

この製品で作成した動画をYouTubeに投稿するユーザーもいるなど、
映像を楽しむためのハイテクおもちゃと見ることもできる。

それにしてもなぜ、事務用品メーカーから、このような畑違いの製
品が世に出されたのか。

「企画が社内会議で承認されたので、製品化しました。」何も特別
なことではない、という口調で、同社商品開発部の木次谷リーダー
は言う。

「既存商品と商圏が違うといった理由で、新しいアイデアを否定す
るような空気は、当社にはありません。」

では、取扱店舗も全く異なる種類の製品を「売れ」と言われた営業
部隊は、この商品を前にどう反応したのか。逡巡することはなかっ
たのだろうか。

「当社の営業スタッフは、新しいジャンルの製品を売り込むのには
慣れています(笑)。」

広報室の井村さんによると、今や同社の看板商品となった「テプラ」
も、25年前の登場時は、ファイルなどの既存商品とは商圏が異なる
ものだった。今では文具店でも家電量販店でも取り扱われているが、
テプラ登場前の主要取引先に、家電の小売店があるはずもない。

では、このインターバルレコーダーをはじめ、売る側が分類に悩む
ような新規性の高い商品は、どのように産み出されるのだろうか。

同社の開発部門には約40名が所属しているが、設計や技術開発が仕
事ではない。「企画」することが業務の核だという。言わばアイデ
ア勝負の仕事なので、開発担当社員には文系出身者も多く配属され
ている。

企画が承認されると、エンジニアリング課(こちらは理系人材の組
織)のスタッフから技術的サポートも受けながら、社外の協力企業
に作業を依頼する形で製品開発が進められていく。

「当社は、大企業のように技術開発を行っているわけではありませ
ん。製品に使われる技術も一般化されているもの。それをいかに活
かすかが大事。」と木次谷リーダーは言う。そのような認識が良い
割り切りを生み、製品化工程では、協力企業の力を引き出していく
ことに力点が置かれる。協力企業側の提案が採用されることもある
など、企画を最終製品という形にしていく作業は、徹底したオープ
ンイノベーションによって進められる。

主力商品である「テプラ」も、現社長の宮本氏が外部の識者と意見
交換を重ねる中、将来、オフィスから紙がなくなる日が来るかもし
れないと危機感を抱いたことをきっかけに、既存商品と異なる発想
の新製品を模索する中から生まれている。

製品化に当たり、最初の企画を出した開発部門の担当者の責務は、
当初のアイデアがぶれないように取りまとめることだ。

同社製品の共通した特徴は、機能をシンプルに絞り込んでいること。
例えば、テプラに次ぐ電子文具のヒット商品となった電子メモ帳は、
ワープロ機能のみに特化しており、文字の打ちやすさを追求した結
果が選ばれる要因にもなっている。「単独機能では商品性が低いの
では」と気にするあまり、変に機能を増やして使いづらい商品にな
ってしまわないよう、当初の理念を担当者に貫かせるのも、開発部
門の上長の仕事だという。

製品化を社外に丸投げするわけではない。今回のインターバルレコ
ーダーでは、高性能なデジカメ群の中に埋もれないよう、デジカメ
に見えない愛らしい外観にすることや、定点観測しやすいよう耐候
性、簡易な操作性を確保することにこだわって協力企業と調整を進
め、現在の形を作り上げている。

ファイル・バインダーの専門メーカーであったキングジムからテプ
ラが生まれて25年。さらに25年後には、想像もつかない商品を頭に
戴く企業に変わっているのかもしれない。

<取材協力>
株式会社キングジム 開発本部 商品開発部 開発二課  リーダー 木次谷 健
          広報室                 井村 桃子

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