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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2014年8月28日 第74号
こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。
◆ロボットが作る物流と街の近未来
景気回復に伴い、サービス業における人手不足が深刻化した昨今。
この7月に、それを狙いすましたかのような新製品が発表された。
一言で言えば「台車ロボット」。オフィスや街で縦横無尽に活躍す
る台車に、ロボット技術で ①アシスト機能、②人への追従機能
及び③自律移動機能を持たせたものだ。
物流の効率化策としては、ITによる在庫・積荷管理や物流拠点に
おける搬送ライン整備など大きなシステムづくりがまず頭に浮か
ぶ。あの台車をロボット化してしまおうという発想は、おそらく
世界で初めてのものだろう。
開発したのは、ロボット・ベンチャーとして2001年に創業され、
最近は自動運転技術で大きな注目を集める株式会社ZMP。谷口社長
が一人で創業し、以降、年を経るごとに倍々ゲームで社員を増やし
つつ、現在に至っている。
メディアのインタビュー記事で幾度も「(ZMPでは)自分が面白い
と思ったことをビジネス化している」と語っており、今回の台車ロ
ボットも谷口社長の発案だという。直接のきっかけは、会社の近所
にある宅配便の事業所の様子を見たこと。小さな台車で同じコース
を何度も忙しそうに往復する従業員の働きぶりから着想したという
が、その土台には、ZMPがこれまでに販売した製品の歴史が積み重
なっている。
ZMPは、今では輸送機器やロボット教材、分析・計測機器など多様
な商品を扱っているが、最初の商品は、二足歩行可能な小型ロボッ
トだった。2006年に、(株)JVCケンウッドと組んで自律移動できる
音楽ロボットを商品化した際、コストのかかる二足歩行でなく、車
輪で移動する仕組みを選択したが、その時、「移動」という機能に
は高い商品価値があることを見出した。
音楽ロボットの発売後に起きたリーマンショックの影響で業績が悪
化したこともあって、次なる企画としては、市場規模の大きい自動
車産業に狙いを定めた。そうして開発したのが、これまでに培った
姿勢推定・制御技術等を組み込み、自律移動を可能にした1/10サイ
ズの自動車ロボット。「百万円もするミニカーが売れるわけない」
という声をよそに、自動運転技術に着目した自動車関連企業や大学
等の研究機関が次々と買い求めた。
ここに商機を見出したZMPは、一人乗りロボットEVを開発。次いで
市販乗用車に自社技術を組み込んだ自動運転ロボカーを商品化。そ
して、このほど発表したロボット台車の中にも、自律移動や制御技
術といった、二足歩行ロボット以来の技術が息づいている。
この台車ロボットは、機械部品大手のTHK株式会社と新規事業を模
索する中で、谷口社長から出た発想を具体化したものだが、話が進
み記者発表予定日まであと一ヶ月、というところで、やはり商品と
してきちんとデザインすべきだと思い至った。その時脳裏に浮かん
だのが、谷口社長が個人的に注目していた東京藝術大学の長濱雅彦
准教授。とりあえずアポを取って飛び込み、その場で台車のデザイ
ンをお願いした。
長濱准教授は、突然の依頼に「あと一ヶ月!?短いねぇ」と驚き、
笑いながらこれを快諾するとともに、話をするうち、発表時には、
この新提案をビジュアルにイメージしてもらえるプレゼンが必要と
の話題に至った。「大西さんっていう、いい絵の描ける若い人がい
るんだけど」という会話から生まれたのが、ZMPのWebページに掲載
されている、台車ロボットが活躍する社会をイメージしたCG映像だ。
こうして多くの才能を巻き込みながら、台車ロボットは7月2日の
記者発表に至った。発表後は、大手宅配便業者や小売事業者からの
引き合いが絶えず、海外からも問合せが相次いでいるという。
谷口社長が一人で立ち上げたZMPも、今や40名の社員を擁し、近く
100名体制を見込んでいる。若手が多いが、事業のとりまとめには
経験値が必須との考えから、大企業から中途採用した者もいる。さ
らに開発担当の半分は外国人で、Ph.D.取得者も30%と、非常に多
様な社員構成となっている。社長を継ぐイノベーティブな人材の台
頭も期待されるが、「GEですらクリエイティブな人材は0.1%もい
ないそうです。一時期、人づくりに悩みましたが、今はゆっくり構
えています。」と笑う。
谷口社長からいただいた名刺を見ると、下段に、これまでの主な製
品の写真が6点掲載されている。それぞれ全く個別の製品だが、こ
れらを支える技術には同じ血が流れている。
次に新たな名刺を刷る際には、台車ロボットの写真を追加する予定
だそうだ。
<取材協力> 株式会社ZMP 代表取締役社長 谷口 恒
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