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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2015年2月26日 第80号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆「未来」を現実にした空中ディスプレイ

映画のスクリーンやブラウン管、ディスプレイの中。スイッチひと
つで何もない空間に映像が現れ、それに触れることでセキュリティ
の解除や機械の操作ができてしまう。そんな物語や動画を観た記憶
のある方もいるだろう。

要するに、空中への映像投影は、比較的最近まで未来技術の扱いで
あり、想像上の産物であった。

だからこそ、CEATEC JAPAN(映像・情報・通信の国際展示会、電子
情報技術産業協会等主催)において株式会社アスカネットが試作品
のデモ展示を行った時は、ちょっとした騒ぎになった。それが大手
映像機器メーカーではない企業からの出展だったことも、驚きを持
って迎えられた。

仕組み自体は、それほど複雑なものではない。とある映像を、AIプ
レートと称する2層構造の鏡を通してみると、プレートを挟んで対
象の位置にある空中に像が結ばれるというものだ。

我々人間は、光を捉えることでものを見ることができる。一方、光
には、常に円錐状に広がっていく性質がある。このプレートには、
広がった光を内部で2度反射させ、再び1点に集約させる効果があ
るため、その集約点である空中に像が結ばれるわけだ。

アスカネットとしての商材はこのプレートであるが、昨年のCEATEC
では、サンプル提供したユーザー企業と共同で、空中映像を使い各
種操作ができるソリューションを展示して見せた。空中映像では、
スマホやタブレットのタッチパネルのように指先の静電気を捉える
わけにはいかないので、ジェスチャーを読み取るセンサーを使い、
操作を実現している。

同社の東京ショールームには、銀行のATMを想定したデモ機が設置
されている。タッチパネルの感触に慣れているので、うまく操作す
るには、ジェスチャーを派手にするなど工夫が必要だったが、空中
のキーボードから確かに暗証番号を入力することができた。

操作性自体は、センサー利用の最適化で改善が可能と考えれば、様
々な可能性が広がる。

この技術は、同社の福田社長が「将来性あり」と見込み、特許を買
い取るとともに発明者を迎え入れ、量産が可能なレベルまで同社で
開発を進めたものだ。

プレートの構造そのものは単純であり、現物を入手すれば理解でき
てしまうが、空中での結像が歪まないよう構造の精密さを崩さずに
量産するには、製造上のノウハウを要するという。同社では、この
生産技術の部分を非公開にするとともに、日本以外の国でも特許化
することにより、自社技術としての守りを固めている。

同社には現在、国内外の多くの企業から問合せが届いており、プレ
ートのサンプル提供を通じビジネス拡大の可能性を探りながら、量
産化の準備を進めているという(取材当日も、別のテーブルで顧客
と思しき企業へのプレートの説明が行われていた。)。

問合せの中には、3D画像の結像ができないかとの相談もあるとい
う。アスカネット自身でも、元画像の拡大や結像位置の移動など、
顧客のオーダーに柔軟に対応できる多様な結像の実現に向け開発を
進めている。

もともと同社は、広島で写真館を営んでいた社長の福田幸雄氏が、
1990年から始めたデジタル事業部門を独立させる形により、1995年
に設立された。

1990年と言えば、日本におけるパソコン市場の礎を築いたNECのPC
98がまだ現役だった頃だ。現在の同社の主要業務は、ウェブを活用
したデジタル画像データの加工サービスであるが、その事業を始め
た1992年には、国内で一般消費者向けデジカメは市販すらされてい
ない。

デジタル画像の市場が未成熟だった状況下で将来性を見通し、ビジ
ネスを成長させてきたのが同社の歴史であり、福田社長の先見性が
同社の経営を支えてきた。

そのような企業史を知ると、この空中画像の将来にも期待したくな
る。

<取材協力>
 株式会社アスカネット  AI事業開発室  マネージャー 大西 康弘

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