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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2015年5月28日 第83号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

◆自分だけの宝物のために使える免震装置

飾りたいのだけれど、地震の揺れなどで倒れたら壊れそうで、躊躇
しているものはないだろうか。アンティークの置物、コーヒーカッ
プ、トロフィー、高価なお酒のボトルなどなど。花瓶、水槽、TVや
パソコンなども、心配だ。

こうした不安を解消してくれるかもしれない小型の免震装置がある。

仕組みはシンプルである。一見して、直径207mmのアクリル板の上に、
直径150mm、厚さ約14mmの合成ゴムの円盤状の台が載っているだけ。
合成ゴムの台は、裏側が凹状に成型されており、外周部分の下部に
ボールベアリングが埋め込んである。アクリル板と合成ゴムの台は、
中央を支点にスプリングでつながれている。

地震や生活環境での揺れが発生すると、合成ゴムの円盤のボールベ
アリングがアクリル板上を自在にスライドし、免震装置の上に載っ
ているものへの揺れを吸収し転倒から守る。

免震装置は、通常建物等に使われており、大型のものが多い。大型
のものは可動域が広く、免震の効果も得やすい。逆に、可動域が狭
くなると、大きな揺れへの対応は難しい。そこで、免震機能を維持
しつつ、日常の生活シーンで使用可能な小さくコンパクトなものを
作る、これが本製品開発のコンセプトだったようだ。

開発したのは、子供靴でも有名なアキレス株式会社だ。同社は、プ
ラスチック加工メーカーとして、様々な素材や、加工技術を送り出
してきた。その培ってきた幅広い技術や可能性をつなげて、新しい
商品や分野の開拓を行えないかとの考えから、2014年1月に、既存
部門からメンバーを選抜し横断的な組織となる開発営業部を新たに
立ち上げた。

免震装置は、ここで開発されたものだ。

社内のある研究者が、10年ほど前から免震技術取り組んでいた。こ
れに目をつけ、市場調査とターゲットの絞り込みにより商品化に結
びつけた。開発にあたっては、すでに市場に多くでている大型のも
のではなく、「小型」ということをキーポイントとした。

まず、コンビニの棚向けの装置を検討したが、可動スペースの関係
で導入は困難と判断された。ならば、棚の中に置かれる個別の瓶等
の転倒防止に使えないか。また、地震の際、水槽の水があふれた経
験から、ここにも使えるのではなど、こうした試行錯誤を繰り返し、
最終的に現在の形になった。

すでに違う色のものができないかといった問合せもきているそうだ。
プラモデルの完成品やフィギア、仏具などを載せるといった用途も、
今後期待できそうである。

さらに現在、日常生活レベルでも起こりうる小さな揺れを嫌う精密
測定装置の業界など、当初想定していなかった分野からの関心も寄
せられているという。

開発営業部は、他にもユニークな製品を世に送り出している。工場
の配管を洗浄するためのスポンジ製の球状清掃用具である。食品工
場など、日々湯や薬液などで洗う配管の中に入れ、密着させながら
水流によって通過させて、汚れや沈殿物などを掻き出す。

配管の中を通して清掃に使う用具をピグというそうだが、一般的に
は堅い砲弾型のものが多く、これは配管内側の汚れを削り取るとい
うイメージで、内部の損傷も懸念される。

一方、この製品には、アキレスが蓄積してきたウレタン加工技術が
用いられており、配管内をきれいにするための特殊な加工を製品表
面に施してある。柔らかいスポンジ状で容易に変形するので、L字管、
T字管、口径が途中で変わる配管でも洗浄効果は高い。また、管の
内部に凹凸があっても大丈夫。配管内部に優しく、薬液使用を減ら
し、且つ廃液コストも軽減する自然にも優しい製品といえる。これ
も横断的組織あっての成果だ。

様々な分野で、日本の厳しいユーザーニーズを満たすための技術開
発が進んでいく。このような磨き込まれた技術を、一度並べて眺め
てみることによって、新しい組合せや使い方が生まれてくるのでは
ないだろうか。横断的な組織の活躍により、新たに斬新な製品が生
まれることを期待したい。

<取材協力>
 アキレス株式会社 開発営業部 開発営業課 課長   定森 正徳
          開発営業部 開発営業課           藤井 俊
                          マテリアル販促宣伝課     島田 泉

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