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液状のこんにゃくが生み出す新しい波
産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2015年6月25日 第84号
こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じていただければ幸いです。
◆液状のこんにゃくが生み出す新しい波
こんにゃくがどのようにできるかご存じだろうか。
原料はこんにゃく芋という里芋の仲間の植物。こんにゃく芋に含ま
れるコンニャクマンナン(グルコマンナン)同士を化学的に結合さ
せて固体状(ゲル化)にする。
こんにゃく芋を粉にした荒粉(あらこ)や、荒粉を精製してグルコ
マンナンを濃縮した精粉(せいこ)を湯に溶かして、アルカリ分
(植物灰や消石灰などを水に溶かしたもの)を加えて混ぜ合わせる
と、固体化が始まる。十分に固体化したものをゆで、その後水にさ
らしてアク抜きを行うと、こんにゃくの完成だ。
グルコマンナンは、人の消化管ではほとんど消化されないため、カ
ロリーが極めて低い。加工食品などに加えると、水を吸収し保持す
る性質があるため、保湿性を高める。また、粘性や、冷凍耐性を高
め、吸油性を下げる。しかも、無味無臭である。
しかし、グルコマンナンの粉末は、水と混ぜると、膨張しのり状に
なり、時間が経つと沈降し一部で水の分離が起こる。扱いが少々難
しい。一方、一度固体化したこんにゃくは、水にも油にも溶けず、
他の食品に加えても吸水性や粘性といった機能は追加できない。
これらの問題点を解決するのが、液状こんにゃく「ナノコン」であ
る。
それは白っぽく半透明な流動性のある液体である。イメージとして
は、粒がなくなるまで煮込んだ薄いおかゆ(重湯)や葛湯といった
ところか。グルコマンナンが、固体化してコンニャクになる一歩手
前の状態であり、本製品を開発した蒟蒻屋本舗株式会社(埼玉県鴻
巣市)の櫻井社長いわく、「こんにゃくの小さなつぶつぶのカプセ
ルがたくさん入ったもの」とのこと。
櫻井社長は、グルコマンナンの水溶性植物繊維の状態での摂取を増
やすことを目的に商品開発に取り組んできたそうだ。
一般的に、水溶性植物繊維は、消化管内の老廃物等を吸着して体外
に排出したり、糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な
上昇を抑えたりするとされる。
グルコマンナンは、精粉の状態だと90%位は水溶性だが、固体化が
進むと不溶化が進み、板こんにゃくでは、95%位が不溶性植物繊維
になる。加工食品の原料として使いやすいよう、水溶性を維持しつ
つ、適度に固体化するよう化学反応を制御することが、本技術の肝
となっている。ナノコンの水溶性成分は約6割、不溶性成分は約4
割であり、水の中に均一に分散しているため分離しない。
この性質により小麦粉などの粉に容易に練り込むことができる。水
を加えてもナノコン自体が膨らむことはない。また、ナノコンは、
乳化作用を持ち、油と直接混ぜることができる。つまり、液状のも
のを含むほとんど全ての加工食品原料に加えることが可能なのだ。
小麦粉を使った製品などに加えると、保湿効果を保つことができ、
油で揚げても油の吸収を抑えられる。マヨネーズタイプの調味料に
使うと、卵無しで乳化し、植物油の使用量を大幅に下げることがで
きる。チョコレートにも入れられるそうだ。櫻井社長によると、
「加えると味が良くなる」とのこと。
ナノコンは、国産こんにゃく芋の精粉から製造されていて、加工食
品に加えた場合、原材料の表示欄には、「こんにゃく」と表記され
る。
ナノコンは、2009年から業務用に販売されている。当初はあまり売
れなかったが、近年は様々な商品に使われるようになってきたそう
だ。大手製パンメーカーの商品などにも使用されているという。液
状「こんにゃく」の用途は意外と広いのかもしれない。
ナノコンの特許は、蒟蒻屋本舗が持っているが、製造は全て他社に
依頼している。蒟蒻屋本舗は、ナノコンの販売と、ナノコンを使っ
た製品の企画を行っている。新しいアイデアが生まれると、自ら事
業化するのではなく、その分野の専門家に企画を持ち込むそうだ。
訪問した際に、ラーメンの麺の試作品を見せてもらった。こんにゃ
くを麺状に加工したものではなく、通常の麺と同様に小麦の味がす
る。一方で、伸びにくくなり、カロリーを抑えられる。ラーメン屋
と提携して店が出せないか検討中とのことだ。食事制限が必要な人
や、体型を気にしている人に福音をもたらすのではないか。
核となる技術をもとにして、その技術が活用可能な新たな分野への
展開を図っていく。新しいアイデアが浮かぶと、研究者を巻き込み、
科学的なデータを基にして賛同者を増やし、最終的にはその道のプ
ロに技術を活用してもらう。小さな企業が食品産業界に新しい波を
生み出す様を見た思いがした。
<取材協力>
蒟蒻屋本舗 株式会社 代表取締役 櫻井 誠也
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