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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第91号

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◆技術のおもて側、生活のうら側 2015年12月24日 第91号

こんにちは。ご愛読いただき、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支える産業技術を身近に感じていただければ幸いです。

物と物をつなぐ目立たないけど欠かせない重要部品

家電製品やパソコン、自動車等の乗り物、ビルなどの建物、工場や発電所などのプラント、これら我々のまわりに当たり前のようにあるものは、この部品を使わないと作ることができない。

ねじである。

江戸時代の日本では、ほとんど使われていなかったそうだ。ねじの技術は、古代ギリシャで発明されたとされており、利用が広がったのも、ヨーロッパのルネッサンス期以降という。比較的新しい技術と言えるのではないか。

現在、我が国でねじを製造している企業(従業員4名以上)は約千五百社。その生産量は、年間3千億本、重量3百万トン、数万種類の製品があるそうだ。

海外企業などとの厳しい競争の中で、地下及び海底トンネル、石油やLNGプラント、原子力・火力発電所などで使われる特殊ボルト・ナットについて、世界的に高いシャアを持つ企業がある。株式会社竹中製作所(大阪府東大阪市)だ。

竹中製作所のコア技術は、ねじなどの表面にフッ素やカーボンナノチューブなどが入った特殊な樹脂をコーティングすることにより、さびや腐食を防ぎ、耐久性を高めることである。

だが、その高度な技術の下支えとして、優れた素材で精密なねじを加工し、さらに、それぞれのロットについて、素材の品質、加工工程や加工日などをさかのぼって特定できるトレーサビリティを確立していることも強みとして挙げられよう。

ねじは、非常に広い用途に使われる。例えば、自動車では、鉄、アルミ、樹脂など異なる素材で形成されるシャシー、強い振動にさらされる足回りなどで、数多くのパーツをつないでいる。エンジンには、高温・高圧に耐えられるねじが必要となる。ねじの技術を使わずに製造するのは、まず無理だろう。

パーツをつなぐには、接着や溶接など他の方法もあるが、これらが使えない場合にねじ止めは主要な選択肢となる。また、継続的なメンテナンスが必要な場所に、ボルトなどのねじを使うことによって、分解整備やパーツ交換が可能となる。接合部のボルト自体も、必要に応じて交換ができ、製品自体の寿命を延ばすことができる。

ねじは、様々な素材から製造される。ただつなぐだけであれば、安価な鉄系(普通鋼)の素材にさび止めのメッキをしたもので良いが、接合部に力がかかるもの、さびやすい環境で使うものなどの場合は、それに耐えられるものが必要になる。

ニッケル・クロム等を含む特殊鋼(ステンレス鋼など)は粘りがあり、強度及びさびにも強くなる。海中などでは、一般的なステンレスでもさびるので、ニッケル等をより多く含む特殊ステンレス鋼が使われる。高温にさらされる場所では、スーパーアロイ(超合金)なども使われる。LNGプラントなど、極低温にさらされる場所では、低温でももろくならない素材が必要となる。

また、つなごうとするパーツの強度や素材の特性、接合部に求められる性能などによって、プラスチック、アルミニウム、銅、チタンなど様々なねじが使われる。

異なる金属が接する面は、電気が流れてさびやすくなることがあるという。この場合、パーツの素材に近い素材を使ったねじが有効となる。

金属製のねじは、主に転造法と切削法で作られるそうだ。

転造法は、素材となる鋼材を、溝を刻んだ金型に回しながら押しつけて、ねじの溝を付けていく方法である。金型の溝の山の部分が食い込んだ分だけ、ねじ山が盛り上がる。加工時間が短く、削りくずが出ないため無駄がない、圧力がかかることによって強度が上がるといったメリットがあり、また生産性も高い。大部分のねじは、この方法で成型される。

切削法は、旋盤などを使って、鋼材からねじの溝を掘り下げていく方法である。高い精度で加工できるが、削りくずが発生する。加工に時間がかかるため大量生産には向かない。コストが高くなるため、主に特殊用途向けになる。

特殊鋼を素材とする場合は、成型前に、強度や粘りを持たせるための焼き入れを行うのが一般的である。

成型後は、必要に応じてメッキやコーティング等の表面処理を行い、検査等を経て出荷される。

竹中製作所が製造するねじ(ボルト)は、巨大なものが多く、特殊用途向けがほとんどという。直径(ボルトの軸の部分)が300mm、長さが1300mm、重量1トンのものが、水力発電所の水量をコントロールする弁に使われているそうだ。

また、東京湾横断道路(アクアライン)の海底トンネルには、トンネルの円構造を支える鋼材(セグメント)を連結するために約30万本のボルトが使われている。表面処理されたボルトの設計寿命は50年以上。鋼材は、コンクリートで被覆されるため、その中に埋め込まれたボルトは簡単には交換できない。海底の塩分の多い環境でもさびない性能が評価されているようだ。

今後、人類の活動範囲は、海中や地下深く、宇宙空間や他の惑星など、飛躍的に拡がっていくだろう。機械・装置や建物などは、より厳しい環境で使用されることになる。そして、そこでは、さらに高い性能や機能を持ったねじが必要になるに違いない。我が国のねじ産業の更なる活躍を期待したい。

 

取材協力

株式会社 竹中製作所
  取締役 ボルト事業部 営業本部長 新家 哲司
  技術開発室 室長 西川 章

技術のおもて側、生活のうら側について

発行:経済産業省産業技術環境局産業技術政策課 担当/執筆:藤河、木村、田部井
〒100-8901東京都千代田区霞が関1-3-1
電話:03-3501-1511(代表)

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