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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第97-1号

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◆技術のおもて側、生活のうら側 2016年6月30日 第97-1号

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社外からの知恵がドアを止める(その1)

閉まろうとするドアを、一時的に開けた状態で止めたいときに、ドアストッパーを使うことがあるだろう。磁石などでドアにくっつけて使う上げ下ろしできるつっかい棒のような装置や、ドアと床面の隙間に挟んで使うくさび型のゴムなど。

今春、ちょっと変わった室内用ドアストッパーが発売された。株式会社三洋(東京都中央区)の「Door Cube」(ドアキューブ)だ。

中央部に丸い大きな穴が空いた一辺5cmの正方形の透明な樹脂の板を6枚つなげたような正六面体の外枠、この中に、直径約4.6cmのスーパーボールのようなゴムの玉が入っている。玉の色は、ピンク、青、茶の三種類。

外枠の材質は、軟質のポリ塩化ビニル。玉は、一般的なスーパーボールの原料であるブタジエンゴムに、天然ゴムの成分と同じイソプレンゴムが混ぜてある。ブタジエンゴムだけより、摩擦力が強くなるそうだ。

閉まろうとするドアの前に置くと、外枠が床の上でわずかに滑り、顔を出した玉とドアが接触したところでぴたっと止まる。(床によっては止まりにくい場合もあるそうだが。)

では、なぜドアは止まるのか。実は、ゴムの玉が活躍しているのだ。

閉まろうとするドアに玉が接触すると、床面だけでなく、ドアの面とも接することになる。この2カ所に働く摩擦力こそがミソである。

玉がドアに押されると、ゴムでできているので、床面と接している部分に摩擦が発生し、閉まろうとするドアと反対方向に摩擦力が働く。

しかし、玉は、球状で引っかかる部分がないので、抵抗しきれずにドアに押されて転がろうとする。

この時に、玉とドアの接点の方に、ドアの面の下(鉛直方向)から上の方向に玉が回転しようとする力がかかるのだが、ここでも摩擦が発生し、その反対方向である接点を下に押し下げる方向で摩擦力が働く。

つまり、閉まろうとするドアの反対方向に働く摩擦力と、ドアとの接点を下の方向に押し下げようとする摩擦力が合わさって、玉がドアと床の隙間に潜り込むような力が生まれ、ドアが止まる。

さらに、ドアに押されて変形したボールが元に戻ろうとする反発力も加勢しているそうだ。

このような仕組みなので、ドアと床面の隙間が小さく、くさび型のドアストッパーが使えないような場所にも有効だ。ドアの蝶番(ちょうつがい)を痛めることもない。

外枠は、玉だけだとどこかに転がって失踪してしまうかもしれないので、それを防いでいるとのこと。また、全ての面に大きな穴を空けることによって、どの面が上になっても、ドアストッパーとして機能するようにしている。

三洋は、昭和20年代前半に、ポリ塩化ビニルをはじめとする合成樹脂類の販売商社として営業を開始し、後に、その加工にも進出している。樹脂を合成する化学企業(大企業が多い)と、樹脂を使用して最終製品を製造する企業(中小企業が多い)の間に立って、両者をつなぐ役割を果たしているそうだ。

また、これまでに培ってきた素材に関する知識と加工技術を駆使して、合成樹脂素材を使った特注品などを、企画立案、設計、試作し、自社内の加工工場や外部の製造企業の協力を得て製造している。

Door Cubeも、試作までは自社で行い、製造は、国内の協力企業に委託しているそうだ。メイドインジャパンにこだわったという。

実は、本製品のアイデアは、三洋で生まれたものではない。社外の人が、コンセプトを持ち込み、三洋の開発部門と協力して練り上げたものだ。

なぜ、このようなある意味面倒なことをしているのか。ここに、ポリ塩化ビニル業界を挙げての取組と、三洋のユニークな経営方針が隠れているのだが、長くなるので、続きは、来週木曜日に。

取材協力

株式会社三洋
 代表取締役社長     海渡 清
 専務取締役       堀井 裕之
 開発事業推進部長    三砂 仁
 東京第二営業部第二課長 清水 敬祐
 東京第二営業部第二課  佐渡 拓哉
 

技術のおもて側、生活のうら側について

発行:経済産業省産業技術環境局産業技術政策課 担当/執筆:藤河、大和田、天野
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