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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2012年5月31日 第47号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆餅は餅屋

製品は、塗装工程を経て色鮮やかに着せ替えられる。この際、塗料
に含まれる重い成分が缶の底に沈殿してしまうため、色ムラ等を防
ぐために必ず攪拌するそうだ。今回は、この攪拌機の常識を変えた
エディプラス株式会社代表取締役の村田氏からお話を伺った。                                                              

話は、ヤマテック株式会社で20年以上電子基板関係に携わった同
氏が、2006年に工業塗装部門の工場長に就任したことから始ま
る。当時は、軸の先に取り付けたプロペラ状の羽根等を回転させて
攪拌するのが普通で、全ての塗装業者は、同様の方法で行っていた。

しかし、羽根が触れた際に缶の底や内壁の金属を削ってしまい、塗
料に混ざった削りクズを取り除く手間が常時発生する上、混ぜる際
に泡が発生し易かったそうだ。また、誤ってスイッチが入り、羽根
で手足等を傷つける心配もあったという。このため、攪拌作業は経
験を積んだ職人にしか出来ない作業だった。                                                              

塗装は素人だった同氏だが、問題があるのを知りながら、当たり前
のように使い続けていることがとても不思議だったそうだ。そこで、
安全で簡単で手間の掛からない攪拌に改善するため、手弁当で取り
組んだのだった。

まずは他の攪拌機を探したが、半年調べても見つからなかったそう
だ。次に、羽根等の改良を試したのだが、人や缶を傷つけないため
には、羽根を取り、軸の先端を半球状にするしかないという結論に
至るまでに1年半近くを費やしたという。

次でダメなら開発を諦めようと考えていた最後の試作品が思わぬ結
果をもたらした。軸の先に付けた半球型の金属の側面と天井部に穴
を開けて回転させたところ、遠心力により底部の液体が側面から出
て来ることで流れが起きて攪拌されていたそうだ。実際に見たこと
で逆に原理が理解でき、その後、実質2ヶ月程度で現在の形が完成
した。

しかし、ここに至り、現場の職人達の反発が壁となって立ちはだ
かったという。安全性、使い易さ等をいくら説明しても、使い慣れ
た物に固執する職人が多く、仕方なくアルバイトに使わせ始めたそ
うだ。

最初は、不良品が出る度に攪拌機のせいだと言われたが、月単位で
の不良品率は変わらず、逆に削りクズの混入はなくなったという。
更に、アルバイトが使用しても塗料の飛び散りが起きず、清掃等の
手間も減少した。すると、頑なだった職人の態度にも変化が現れ、
製品の良さを理解する者が少しずつ増えてきたそうだ。

後日調査で類似の技術がないことがわかり、県の知財センターから
は特許の取得を薦められたが、同社に本業以外を行う気がなかった
ため、この技術を事業に活かすべく、同氏自らが特許を取得し、
2010年に株式会社エディプラスを設立したという。

当初、自分達で製造販売するつもりだったが、食品、化学品、排水
処理等、幅広い分野への対応が求められ、規模も試験管からプール
サイズと様々なので諦めたそうだ。かわりに、企業とライセンス契
約を結び、企業がそれぞれの得意分野でこの攪拌機を製造販売して
いるという。

「当社がこの技術を独占して得られる利益が10だとして、
1000社が使って使用料を1%ずつもらっても同じ10なら、よ
り多くの企業に使ってもらい、市場が広がる方が良いですよ。この
技術がどこまで広がっていくのかとても興味があるんです。」と話
す同氏の瞳は、大好きな玩具を見つけた子供のように輝いて見えた。

<取材協力> 株式会社エディプラス代表取締役 村田 和久

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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、金子
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