産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2011年6月30日 第36号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。
◆天気予報の強い味方
子供の頃、履物を蹴り上げて跳ばし、落ちた面が表なら晴れで裏な
ら雨というように天気を占う遊びがあったが、梅雨のこの時期、天
気予報は生活に欠かせない情報だ。最近では、翌日の天気予報の的
中率は約86%らしいが、ここまで精度が向上した背景は一体何
だったのだろう。
天気予報では、気象庁のネットワーク観測システムの「地上気象観
測網」、「地域気象観測網(アメダス)」で得られたデータ等が使
われているが、これらの観測で使用されている機器の精度向上も要
因の1つと言えるのではないだろうか。
そこで、これらのシステムに採用されている日照計・日射計を製造
している英弘精機株式会社にうかがい、執行役員の大久保氏に話を
お聞きした。
まずは、これらがどういった機器なのかだが、日照計は日照時間、
日射計は地表に降り注ぐ太陽光エネルギーを計測するためのものだ
という。このように聞くと単純な機器をイメージするかもしれない
が、全天候下での連続計測に耐えうる様々な機能と堅牢さを重ね
持った精密機器なのだ。
同社は、計測機器を輸入する商社から始まったが、扱う機器の修理
等の必要性から社内に技術部門を起ち上げ、開発・製造を行うよう
になった。その技術力を買われ、1955年に気象庁から国産第1
号となる日射計の製作を依頼されたそうだ。アメリカ製品をお手本
に、数年後、苦労の末に完成させた全天日射計は、第一次南極観測
にも採用され、その後の事業に大きな影響を与えることとなった。
有人の地上気象観測網160ヶ所では、観測開始以来、同社の全天
日射計と回転式日照計が使われていたが、無人のアメダスでは、太
陽電池式日照計が一般的であった。回転式の採用には、メンテナン
スの容易さや長寿命化だけでなく、全国800ヶ所に設置するため
に製品価格を抑えることも求められていた。
同社は、年間を通じ正確に直達日射量のみを計測するには回転式日
照計がベストだという思いから、モーターの長寿命化、コンパクト
化を図り、計測部と一体化させることでコストを押さえることにも
成功したのだった。
そして、現在、アメダス全官署では、日照計の主軸に取り付けられ
た反射鏡を主軸にそって一定速度で回転させることで、散乱光の影
響を受けずに測定出来る同社の回転式日照計が使用されている。
大久保氏は「2004年以降にアメダスで使用する機器選定が行わ
れた際、初年度は、今まで同様、日照計という定義であったことも
あり、太陽電池式日照計が採用されました。しかし、翌年には、仕
様書に回転式という言葉が明確に記載されたのです。これを見た時
に初めて、やっと我が社の方式が認められたのだと確信しました。」
と笑顔で話してくれた。
気象計測機器分野では、アジアでは既に高いシェアを持つ同社だが、
これで満足してはいない。全世界で通用する製品を作りたいと考え、
欧米の子会社と共同研究を行い、次世代の日射計を開発中である。
また、培った知見を活かし、最近では太陽光発電の評価等といった
分野に力を入れている。これら新たな分野でも、世界規格に準拠し
たシステムに対応可能な機器を開発し、いつか自らが世界標準とな
ることを目指しているそうだ。
普段余り目にすることはないが、全国各地でひっそりと、しかし、
今この時も変わらず正確に、これら計測機器はデータを刻み続けて
いる。それが、何とも言えず誇らしく、頼もしい存在に感じた瞬間
だった。
<取材協力> 英弘精機株式会社執行役員 大久保 憲郎、環境機
器事業部営業部海外グループ営業専任課長 塩原 誠
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