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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第42号

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2011年12月22日 第42号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆水と油の最強タッグ

相性の悪い組合せをたとえて「水と油」というが、水と油は本当に
合わないのだろうか。
JX日鉱日石エネルギー株式会社は、様々な石油製品の製造販売を
行っている。その中には、間接的には私達の生活に大きく関わって
いるものの、存在が余り知られていない製品もあるのだ。

同社の中央技術研究所潤滑油研究所に所属する本山氏に、2009
年に開発したさび止め油について話をうかがった。

日常、私達が目にするのは、自転車チェーンや扉の蝶番等に使うス
プレー式のものだが、同社が扱うのは事業者向けの製品で、ベース
オイルにさび止め効果のある化合物を加えて作られている。家電や
自動車等の鉄製の部品や工作機械等は、塗装したものを除くと
100%さび止め油が使われているそうだ。

しかし、それでもさびが発生する事があったので、同社が原因究明
を行ってきた事例を過去から集計したところ、全体の3分の2程度
は、製品に付着していた塩化物が原因である事がわかったのだ。製
造過程で人の手が触れた際に指紋・汗等の塩化物が付着するため、
これを取り除かないと、さび止め油を塗ってもここからさびが発生
することがあるそうだ。

これを防ぐためには、直接触れないようにするか、指紋洗浄処理後
にさび止め油を塗るしかないのだが、多くの中小企業ではスペース
や人員等の問題から対応が難しく、根本的な解決が望まれていた。

そこで、指紋洗浄とさび止めを同時にこなす製品が開発できれば、
ユーザーへの大きなメリットにもなるとの考えから、2005年に
研究を開始した。

元々、環境等への影響を考慮し、半世紀以上前から一般的であった
バリウム系添加剤を使用しない製品開発を行っていた。このため、
新製品についても脱バリウムを掲げたが、そのためには、解決しな
ければならない大きな問題があった。

それは、指紋除去に必要な水分が、当時、バリウムに代わる添加剤
として主に使用していたカルシウムと反応してしまい、製品に悪影
響を及ぼすという点だ。そこで、水の影響を受けずに高いさび止め
効果を発揮するバリウムでもカルシウムでもない新しい添加剤の開
発に着手したそうだ。

また、塩化物は油ではなく水に溶けるため、その指紋除去に必要な
水分をさび止め油にバランス良く含ませ、効率的に洗浄するために
は、使用する界面活性剤の選択も大きな問題だったようだ。

これらの課題は、個別には解決出来ても、製品化した際にそれぞれ
が影響し合い、当初の効果が出ないということもあるらしい。そこ
で、それぞれの開発を同時進行で行う中で、可能性が高いもの同士
を組み合わせて複数の選択肢を作り、試験を繰り返したそうだ。

本山氏は「今回の開発では、試験の結果が出る前に、ダメだった場
合のバックアップは用意しているんだろうなと散々言われました。
今やっていますと説明すると、それがダメだった場合も考えてある
んだろうと更に詰められる事が多くて...、大変でした。」と当
時感じていたプレッシャーを話してくれた。

四方を海に囲まれ、1年を通じて気温の差が大きく、夏場の湿度が
高い日本の気候は、鉄鋼製品には厳しい環境と言えるだろう。だか
らこそ、日本のさび止め油はここまで進歩し、これからも進化して
いくに違いない。

<取材協力> JX日鉱日石エネルギー株式会社 中央技術研究所
潤滑油研究所機械・加工・基油グループ 小宮 健一、本山 忠昭、
潤滑油事業本部潤滑油販売1部潤滑油3グループ 小松 富士夫、
広報部広報グループ 塚原 恵美子

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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、金子
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