産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2009年9月24日 第16号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。
◆島の香り
何年か前にテレビ番組で紹介されていた島根県隠岐郡海士(あま)
町。獲れたての魚介類を鮮度をそのままに冷凍し、解凍しても生と
変わらないという。寿司までも冷凍できることに驚いた記憶がある。
そこで使われているCAS“Cells(細胞)Alive(生きている)
System”という技術を開発した大和田社長を訪ねて千葉県流山市の
株式会社アビーを訪問した。
長年、「論より証拠」と実践を重ねてきた大和田社長は、CASで
1ヶ月冷凍保存した海士町産いわがきを出して下さった。爽やかな
磯の香りが産地との距離をぐぐっと縮める。添えられた大根おろし
の辛みも香りもちゃんと残っている。茹でたほうれん草は冷凍食品
でも馴染みがあるが、見た目も食感も生のまま茹でたものだと言わ
れても疑う余地は全くない。
「証拠」は自身の目と舌で確認できたが、「論」はどうなっている
のだろう?
通常、食材が凍る時には、食材に含まれる水分が凍結によって膨張
し、食材の細胞膜は破壊されてしまう。解凍時、破壊された細胞膜
から旨味成分とともに流出するのがドリップだ。
過冷却という、物体の温度が凍結点より低くなっているにも関わら
ず凍結していない状態があるが、この状態に衝撃などの力を加える
と一気に凍結する。
CASでは、食材内部の水の分子を振動させながら温度を下げるこ
とによって、小さな水分子のまま、均一のままで過冷却状態とし、
その後急速凍結する。そのため、細胞膜が破壊されにくく、「生に
限りなく近く戻す」ことができるのだという。
細胞膜を破壊せず、生きたまま保存するこの技術は医療分野にも進
出。例えば、親知らずを抜いたら大事にとっておいて、将来必要に
なる時まで預けておける。さらに、臓器移植等の分野でも研究が進
んでいるとのことだ。
ところでCASは世界各地にも進出している。大和田社長は、世界
の人々が食の美味しさや質の良さを追求しはじめたことに気づいて
ほしいという。食の「安全、安心、美味しさ」が日本のブランドで
有り続けてほしいと。
大和田社長はさらに続ける。日本の食品を、世界に届けたい。豊作
だから、大漁だからという理由で廃棄される食材をCASによって
減らし、若い人が農業や漁業に戻れる環境作りに貢献したい。
日本の農業や漁業が輸出産業に? との問いには、「私はものづく
り職人。ものづくり職人はめげないのです。」 農業・漁業を輸出
産業に。けっして簡単なことではないかもしれない。しかし、日本
の“ものづくり魂”は、技術を駆使して農業や漁業の効率をあげ、
いつか輸出産業にしてしまうかもしれない。
産地でしか味わえなかった北海道のもぎたてとうもろこしの甘さや
太陽がさんさんと降り注ぐ九州の樹の上で完熟したマンゴーの沸き
立つような香りを、この人が届けてくれる・・・・目の前のものづ
くり職人に心の中で深々と敬礼した。
<取材協力> 株式会社アビー 大和田哲男代表取締役社長
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