産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2011年9月29日 第39号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。
◆距離を縮める繊維
今年の夏も暑かった。熱中症対策に水分補給は欠かせないが、飲ん
だそばから汗にかわっていくかのようだ。体にとっては必要な汗を
かくという行為だが、すぐにシャワーを浴びることが難しい時に、
ふと頭をよぎるのは臭いの問題だ。
嗅覚には個人差があり、同じ臭いをかいでも気にならない人もいれ
ば、不快と感じる人もいる。このため、気付かない内に周りの誰か
を不快にさせているのではと不安を抱える人もいると聞く。しかし、
こんな心配を解決してくれる消臭効果のある下着や靴下が開発され
ているのをご存じだろうか。
ファッション向けの繊維から自動車内装、住宅資材、医療やエレク
トロニクス分野での高機能資材まで、多彩な事業領域を持つセーレ
ン株式会社の東京本社でインテリア・ハウジング資材部門住生活・
環境資材グループ部長の今井氏他、商品開発に関わった方から話を
うかがった。
きっかけは、広島大学病院の大毛宏喜教授からもらった1通のメー
ルだそうだ。医療の現場に多く存在する臭いに悩む人々のために、
臭いを包み込んで瞬間的に消し去る消臭繊維を開発して欲しいとい
う相談だった。これを受け、2005年に医療・介護向けとして大
毛教授監修のもと、開発が始まったそうだ。
まず、臭いを消し去るには、その発生源の近くで瞬間的に消臭する
のが一番効果的だという大毛教授の理論に基づき、消臭機能が高い
アンダーウェア(下着)の開発に取りかかった。色合い、肌触り、
洗濯耐久性等といった新たな条件も求められることとなり、ハード
ルは更に高くなったという。
商品開発チームでは、まずは人体から発生する様々な臭いとその成
分を調べる事から始めた。そして、それぞれの異なる成分全てを消
臭出来る方法を探し、特殊セラミックスと金属イオン成分の多種複
合使用にたどり着いたそうだ。驚いたことに、それぞれの臭い成分
に対して、高い消臭効果が発揮されるよう、商品毎に組合せは異
なっているらしい。
更に、この消臭成分をナノ化することで消臭スピードを格段に上げ、
特殊な接着技術により、優れた洗濯耐久性を持たせた生地へと加工
することに成功したという。
元々素材メーカーであるため、商品化は下着メーカーに依頼する予
定だったが、受けてくれる企業が見つからなかった。そこで、自社
の一貫生産機能の一部を用いて、自ら商品化することを決めたそう
だが、この先の工程が何よりも大変だったそうだ。
「一番はやはり最終製品化ですね。当社はBtoBビジネスが主で、
特に下着において最終製品まで手がけることがほとんどありません
でした。製品化に最適な糸加工や編み方も良く分からず、裁断・縫
製のノウハウやパタンナーもいなかったので、製造しては評価を繰
り返し、今までにトータルで約1万通りはテストを行いました。」
と商品開発第2グループ次長の岩佐氏は話してくれた。
当初、医療・介護向けに開発し、2008年から販売を始めた同製
品だが、ニュース等で知った一般のビジネスマン等からの問い合わ
せが非常に多く、臭いを気にする人がここまで多いことに開発チー
ムの誰もが驚いたという。
そして、このような声に応えるべく、デザイン性や着心地をより高
めた消臭下着等を2009年に、その翌年からは靴下も販売し始め
たそうだ。
高機能の証は、商品購入のリピ-ト率の高さに現れている。臭いに
過敏な現在の日本社会において、外に出て1日働くビジネスマンに
とっての鎧となっているのかもしれない。
<取材協力>セーレン株式会社東京本社インテリア・ハウジング資
材部門住生活・環境資材グループ部長 今井 暢之、セー
レン株式会社研究開発センター商品開発第2グループ
次長 岩佐 陽一、総務部広報担当主任 吉田 乃美
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