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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第37号

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2011年7月28日 第37号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆室内に流れる自然の風
7月に入り本格的な夏を迎える中、エアコンによる電力使用を抑え
るため、例年になく扇風機が売れている。その中には、破格の値段
でありながら、消費者の心に響く機能とすっきりとしたデザインが
受け、予約待ちをしても購入される製品があるらしい。

そんな話題の扇風機を自ら企画開発したのは、バルミューダ株式会
社の寺尾代表取締役社長だ。お話をうかがったところ、元々、機能
的でデザイン性に優れた家具・家電等に興味があり、2003年に
ミュージシャンをやめた後、ものづくりメーカーとなるためにたっ
た1人で同社を起ち上げたという珍しい経歴の持ち主だ。

最初は、自分が欲しいと思う製品を細部にまでこだわり製造してい
たが、多くの人に使ってもらえる製品を作りたいという気持ちが次
第に大きくなり、どうすれば良いのかを真剣に考えるようになった。

そこでたどり着いた結論は、消費者が必要だと感じる機能をもった
製品を作れば、価格が高くても購入してもらえるのではというシン
プルな回答だった。

そして、今から3年前、同社の今後の方向性を省エネルギーの冷暖
房機器の開発と位置づけ、根本となる送風技術を極めていく中で扇
風機の開発にもとりかかった。当時は、メーカーだけでなく消費者
からも扇風機は過去の技術だと考えられており、新機能の開発と
いった発想はどこにもなかったため、これは大きなチャンスだと確
信したそうだ。

扇風機に長時間あたると疲れを感じる人が多いことを思い出し、皆
が心地よいと感じる自然の風を再現することを思いついた。調べて
みると、羽根を回転させて起こす扇風機の風は渦を巻いているが、
この渦を一度壊すことで、自然界のように面の状態で風が押し出さ
れてくるようになるため、効果的だと思われる様々な方法を試して
みたという。

きっかけは、テレビで見た大人数で行う二人三脚競争だった。小学
生が横一列に並び、隣の子と足をつないで走るのだが、足の速さに
個人差があるため足並みが乱れることがあり、その際に横一列が崩
れる動きがヒントとなって、現在の方法にたどりついたそうだ。

羽根の中間に設けたリングにより、中心部の送風効率は落とし、外
側はMAXに引き上げる構造となっているため、それぞれの風速は
倍程度にまで異なっている。これらの風が同時に吹き出されると、
流体の法則として差をなくすよう混ざり合おうとするため、羽根の
約40cm前方で中心に集まりぶつかる。

これにより、渦は壊れ、その後に反射拡散して吹いてくる風は、ま
るで屋外にいるかのような心地よい風に生まれ変わっているのだ。
もちろん、当初の目的に沿った省エネ性にも大変優れ、新開発のサ
イレントモーターの搭載により、今までにない静かさというメリッ
トも加わった。

今後は、この送風技術を活かし、人が暮らす空間で起こる様々な空
気の問題を解決したいと考えているという。既に、冷暖房機の開発
も行っており、来年には空気清浄器、加湿器等にも着手するそうだ。
「この扇風機が当社の初めてのヒット商品なので、今回、初めてわ
かったこともあります。商品が売れるとすぐに真似されるんですよ。
ただ、真似する会社と真似される会社があった場合、次に新しい製
品を生み出す力があるのは、確実に真似される会社だと思います。
自分達は、真似されることに目くじらを立てるよりも、次の事に目
を向けて進んでいくしかないと思っています。」と寺尾社長は力強
く語ってくれた。

扇風機の販売開始前のことを、約束のない道を全速力で突っ走って
いたようだったが、今までで一番、死ぬほど楽しかったと笑顔で話
してくれた社長の言葉に、ものづくり大国日本の強さを見たような
気がした。

<取材協力> バルミューダ株式会社代表取締役社長 寺尾 玄、
       経営企画部部長 佐藤 弘次

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