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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2011年4月28日 第34号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆100年ぶりの技術進化

昨今、エコに全く興味のない人は少ないだろうが、環境に良いとい
う付加価値には、+αの費用や廃棄の際の手間がかかることが多い
ため、普段から環境に配慮して日々の生活を送る事は簡単ではない。

そんな中、お金も手間も余りかけずに、環境に優しい製品を使用し
たいという消費者の気持ちに応えてくれる文房具がある。それが、
針を使わずに紙を綴じることが出来るコクヨS&T株式会社の
ステープラーだ。

この開発には、同社が2008年度から行ったエコバツマークをゼ
ロにする取り組みが大きく関係している。製造、運搬、使用、廃棄
時点で、環境への配慮が十分ではない製品には、自社の商品カタロ
グにあえて×を表示し、併せて、2011年までの3年間で、これ
をゼロにするという大きな目標を掲げたのだった。

とはいえ、環境への配慮のみを考え、使い勝手を無視した製品では、
いっときユーザーに受け入れられたとしても、長くは続かないと認
識していた。そこで、環境に良いことはもちろん、無理なく使い続
けられるステープラーを新たに開発したいと考えた。

本来、ステープラーは金属の針で紙を綴じる構造なので、針をきら
すと使用出来ず、また、シュレッダー等の際に、金属と紙とを分け
る手間が発生する場合もある。

そこで、針を用いない方法について調べていくうちに、綴じようと
している紙の一部をU字型に切り抜き、折り返して、別の切り込み
から裏側に差し込むという方法が、100年程前から既にあったと
いう公知文献に遭遇したという。

この方法は、綴った際の保持力が弱く、綴じる枚数も数枚程度が限
界であったため、市場に広まることはなかった。しかし、針を使用
せずに綴じる方法としては、かなり合理的であったので、これを活
かし、問題点を解決していく方向で開発を進めることとしたそうだ。

まず、保持力を高めるために2ヶ所で綴じるようにしたところ、U
字型の切り抜きも増えてしまい見栄えが良くないため、この部分を
合理的なメリットとして活用出来ないかと考えた。そこで閃いたの
が、紙に出来る2ヶ所の切り抜き部分を、ファイリングする際の穴
として利用することだった。結果、紙綴じと同時にパンチでファイ
ル穴を空けたこととなり、そのままファイルに綴じられるように
なった。

また、顧客アンケート等から見えてきた10枚綴じを可能にするた
め、切り込みの形状にも改良を加えた。切り込み用の刃の形状を既
存のI型からH型にすることで、観音開きのような動きが可能となり、
よりスムーズに紙を通すことが出来るようにした。もちろん、切り
込み用のH型刃にも、コスト削減のためのアイデアが詰め込まれて
いる。

当初、環境配慮という観点から開発されものだが、針の誤飲やケガ
といった危険性がないことが、安全・安心につながるという点も高
く評価されたため、現在は、1ヶ所綴じのハンディタイプも製品化
されている。こちらは、当初4枚が限度だったが、切り抜きの形に
改良を加えて保持力を高めた8枚綴じも近々登場予定だ。

開発チームのリーダーを務めたコクヨS&T株式会社の青井氏は、
自らの開発ポリシーを次のように語ってくれた。

「いい物でありながら市場で日の目を見てない製品というのは、少
しだけ何かが足りない場合が多いんですよ。それを足してあげて、
新たに製品化することが出来れば、全然問題はないです。僕として
は、結果的に同じ性能が得られるのであれば、開発者のエゴで複雑
な機構を時間をかけて開発するより、既存技術の足りない部分を改
良して素早く提供することが、ユーザーのためには良いと思ってい
ます。」

<取材協力>コクヨS&T株式会社クリエイティブプロダクツ事業部
コアテックVU開発第1グループリーダー 青井 宏和、ECM部
コーポレートコミュニケーシュングループ 石丸 可奈子、コクヨ
ビジネスサービス株式会社広報部東京広報グループ 海老澤 秀幸

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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、金子
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