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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2011年1月27日 第32号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。
◆マグロ肌の効果
地球温暖化対策の必要性が叫ばれる中、CO2削減のため、世界中
で様々な試みが行われている。そんな中、日本でまた1つ新しい技
術が開発された。それは、船舶に塗るだけで、通常の塗料の効果に
加え、燃費が向上する一石二鳥な塗料である。
この船底塗料について話を聞くために、日本ペイント株式会社の子
会社で、船舶用塗料を専門に扱っている日本ペイントマリン株式会
社を訪問した。
船舶用塗料の主たる目的は防汚だが、これは美感的な目的ではなく、
実質的な弊害を取り除くために行っている。船舶は、航行している
時はもちろん、港にいる時でも、船底は常に海水に浸かった状態で
あるため、何もしないと、防波堤にあるテトラポットのように、フ
ジツボ等の貝や海藻類が付着してしまう。
この状態で航行すると、水中で余分な抵抗を受けてしまい航行の妨
げとなるため、予め防汚塗料を船底に塗装することで貝や海藻等の
生物が付着することを抑え、船底と海水との摩擦の増加を防いでい
るのだ。
しかし、現在の防汚塗料は、生物の付着を防ぐという面では、ほぼ
完成系に近い状況までたどりついているものの、水の抵抗を小さく
するための効果的な方法を考え出すには至っていなかった。これが、
新たな塗料の開発にとりかかるきっかけとなったようだ。研究を始
めた1999年当時は、原油価格が右肩上がりの高騰を続けており、
燃費向上による省エネ効果に大きな期待が寄せられたことも開発を
後押しした。
摩擦抵抗の低減のために同社が着目したのは、水中を早く泳ぐこと
が出来る生物だった。マグロ、ペンギン、イルカ等の海洋生物の皮
膚構造を塗料で再現することで、今以上に水中での抵抗を抑えるこ
とが出来るのではないかと考え、たどりついたのがマグロだった。
マグロは、粘膜で覆われた皮膚を持ち、時速160kmの速さで泳ぐ
ことができる。この粘膜と同じような効果をもたらす物質として、
コンブ等のぬめりに含まれるヒドロゲルという物質に巡り会い、そ
の後、様々な種類の中から、塗料と組み合わせる素材として最適な
ヒドロゲルを探し出した。
このヒドロゲルを用いて、いわば人工的にマグロの肌を再現したの
がこの塗料である。ここにたどりつくまでにも多くの時間を費やし
たが、更に、今までの防汚という観点での研究開発とは全く異なる、
新たな実験方法や装置の開発、その効果検証の方法等を考えるのは、
塗料のスペシャリストである同社の研究員の方々であっても、並大
抵の苦労ではなかったという。
開発に当初から関わった山盛技術本部長は「塗料の研究は、基本的
には化学の世界ですが、この時は、工学分野の知識が必要となりま
した。今では、我々も当たり前のように説明していますが、以前は、
船の航行速度と燃料消費の関係等も理解していませんでした。」と
照れくさそうに話してくれた。
これらの苦労が実り、航行状況にもよるが、従来の塗料に比べ約4
%の燃料削減効果が見込まれる製品が開発され、2007年から本
格的な販売にこぎ着けた。既に400隻以上の船に塗られ、201
0年のエコプロダクツ大賞審査委員長特別賞を受賞している。
現在、国や日本海事協会の支援を受けて、2013年を目途に、燃
費効率を約10%まで高める新製品の開発も始めたところだ。
世界の海を航行している船舶数を考えると、更に、地球温暖化防止
に大きく貢献出来る可能性を秘めている新製品の開発にも期待せず
にはいられない。
<取材協力> 日本ペイントマリン株式会社
執行役員兼技術本部長 山盛 直樹、東京営業所長 猪原 一夫、
日本ペイント株式会社 R&D本部技術統括部 課長 立花 敏行
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