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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2008年10月30日 第5号

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今回は、夜光塗料について、根本特殊化学株式会社の石松さんにお
話を伺いました。

◆夜光塗料、命の道しるべ

帰宅して夜空を見上げた時、小さな星の輝きや柔らかな月の光に気
持ちが和まされる。

まわりが暗いほど存在感をアピールする、夜の光。

都内にお住まいの方は、地下鉄駅構内の通路や階段等でひっそりと
黄緑色の光を放つ標識をご覧になったかもしれない。人が逃げるよ
うなピクトグラフがついていて、ビルの非常口などにある誘導灯に
よく似ている。気をつけて見ると、誘導灯と違って、その標識には
電気が使われていない。

暗くなると黄緑色に輝きはじめるこの標識には、根本特殊化学が開
発した「新・夜光塗料」が使用されている。寝室で光る時計の針、
といえばご存じの方がほとんどだと思う。

夜光塗料。このどこかロマンティックな響きをもつ製品には、かつ
ては微量の放射性物質が使われていたが、1993年に放射性物質
をまったく含まない新しい蛍光体を開発し、従来品の10倍の明る
さで一晩中発光を続けるという、画期的な変身を遂げた。同社広報
誌の言葉を借りれば、「夢の輝き」。

夜光塗料はなぜ光るのだろう。光のもとは蛍光体だ。蛍光灯やテレ
ビのブラウン管など、広く使われている蛍光体は、電子線や紫外線
等の刺激を受けて発光する。もともと蛍光体の研究はカラーテレビ
の開発と歩調をそろえ、光の残らない蛍光体を創ることを中心に発
展した。光が残ると画像がぼやけてしまうため、瞬時に発光してす
ぐに消えることが求められた。

一方、夜光塗料で使われる蛍光体は、蛍光灯や太陽光からの紫外線
のエネルギーをいったん内部に蓄積し、暗くなると徐々に光として
放出する。夜光塗料に求められることは、明るく、長く光り続ける
こと。世の中の蛍光体研究の全く逆の研究を究めることによってこ
の画期的な夜光塗料は誕生したのだ。

放射性物質を使わなくなって、従来使われていた時計等の密閉空間
から、大きく用途が広がった。中でも特筆すべきは、地下鉄の通路
等に設置されている避難誘導表示板だろう。

地震や台風などの大規模災害時に停電になったとしても、暗闇で光
を放ち、人々を安全に誘導する。平常時は電気も使わずにただそこ
にある。なんだかすごいヤツだ。

9・11同時多発テロ事件以後、ニューヨークでは非常階段等への
夜光塗料によるマーキングが義務づけられている。米国防総省本庁
舎(ペンタゴン)でも、この日本製品が階段や非常口に使われてい
る。日本では東京都が火災予防条例の一部を改正。だから、都内の
地下鉄駅構内では夜光塗料の誘導表示板が設置されているのだ。

「日本中の暗闇を明るくしたい」 小さな時計の中で静かに時を刻
み続けた創業者の夢は、70年近い時を経た今、海を渡り、世界中
の人々の命の道しるべとなる。

<取材協力> 根本特殊化学株式会社経営企画室 石松浩一郎氏

◇刊行◇資源高時代に対応した新成長ビジョン『新経済成長戦略2008改訂版』
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