産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2010年4月28日 第23号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。
◆下水鉱山!?
暖かくなってくると、家庭菜園の作業が忙しくなってくる読者の方
もいらっしゃるのではないでしょうか。肥料の三大要素は窒素、リ
ン酸、カリ。これはきっと多くの方がご存じかと思うが、リン酸の
原料となるリン鉱石が、実は全量を輸入に頼っていて、世界的に逼
迫していることをご存じだろうか?3年ほど前、原油高騰等をきっ
かけとして肥料価格、穀物価格が高騰し、店頭からバターが消えた
記憶も新しい。
リンはあらゆる生物にとって必要不可欠な元素であるというのに。
今回は、国内の廃棄物をリン鉱石に変えてしまうという、魔法のよ
うな技術を紹介しよう。この技術を開発・実用化したのは、「水」
を次世代に引き継ぐために進化し続けたいという想いを社名に込め
た、メタウォーター社。
さて、国内のどこに、そんな貴重な資源があるのだろう? なんと
下水道だ!
日本では、下水は下水処理場で浄化される。浄化された水を放流し
たあとに処理場に残るのが、どろどろとした下水汚泥だ。これは多
くの場合、焼却されて焼却灰となり、廃棄物となる。
この廃棄物である焼却灰から、リンを回収し、さらに残った灰をも
土壌改良材などに有効活用するという、資源循環のループシステム
が岐阜市で始動した。
下水汚泥からのリン回収については随分前から研究されてきたが、
今回実用化につながった理由は、大きく二つある。
一つは、循環型プラントによるコストダウン。もう一つは、プラン
トの販売にとどまらない、リサイクル製品の提供先までを含んだ幅
広いサービスシステムの構築だ。
このプラントでは、焼却灰に水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を添加
し、化学反応によりリン酸を抽出。リン酸溶液に消石灰(Ca(OH)2)
を入れてかきまぜると、消石灰の中に含まれるカルシウムとリン酸
が結合してリン酸カルシウム(リン鉱石の主成分)が析出されるの
だ。これを回収するというもの。
さてさて、抽出過程では水酸基(OH)のみ消費されNaが残り、析出
過程ではカルシウム(Ca)がリン酸と結合し、OHが残る。残ったNa
とOHが結合すると、なんとNaOH! 水酸化ナトリウムとなるのだ!
これをまた循環利用することにより薬剤費を大幅に抑えることがで
きる仕組みだ。
同社における技術開発の概念は、こうして回収したリン等の流通、
提供先を確保するところまでをも含んでいる。よって開発をしてき
た研究者が、販売ルート等の企画・営業をも担当する。
研究者でありながらの企画・営業活動に抵抗はないのか、という問
いに、最近はもっぱら営業に時間を割いているという研究者は、静
かな口調で答えた。
「先人から引き継いできた技術を、最後まで、売らないと浮かばれ
ない。また、そこには必ず開発要素があるのです。」
<取材協力> メタウォーター株式会社
R&D企画部 守屋 由介氏、広報部 小杉 秀昭氏
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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、仲
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