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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第41号
◆技術のおもて側、生活のうら側 2011年11月24日 第41号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。
◆ばねとはさみは使いよう
各家庭で蛇口をひねれば安全な水が出てくる日本の水道環境は、世
界的に見れば整っているが、飲料用は購入、もしくは浄水器を設置
しているお宅も多いようだ。
一般的には、家庭用でも工業用でも、水が紙・布・セラミック・化
学物質等のフィルターを通過する際に浄化される仕組みとなってい
る。このため、水に含まれていた物が付着するフィルターは、一定
期間毎に洗浄や交換といったメンテナンスが必要となってくる。
しかし、不可欠だと思われていたこの手間が必要ない、ろ過装置が
既に開発されていたのだ。そこで、生みの親である株式会社モノベ
エンジニアリングの物部代表取締役社長に話をうかがった。
このろ過装置は、フィルターではなくらせん状に巻いたばねを用い
ている。そもそも、弾性エネルギーを蓄積するためのばねが、なぜ
ろ過に使われることになったのだろう
元々、自動車やパラボラアンテナのセンサーに使われる部品といっ
た、非常に細かい加工を扱う精密加工メーカーだった。しかし、製
造し始めると必ず他社が参入し、価格競争に陥るという繰り返しに
このままではダメだと考え、今から16年前、他社が真似できない
新しいろ過装置の開発にとりかかった。以前、他業種の工場に行っ
た際、フィルターのコストや手間に関する不満を多く聞いており、
必ず商売に繋がると考えたそうだ。
最初の2年は、市場に出回っている様々なフィルターを調べ続けた
らしい。そして、一定間隔でミクロン単位の隙間が開くように加工
したばねを作れば問題は解決するという結論に至ったという。そこ
から、試作と実験を繰り返すこと18回、4年半の月日を重ね、特
殊ステンレス製のコイルばね式フィルターを作りあげたのだった。
ポイントは、ろ過する前の液体に含まれている不純物や助剤として
加えた珪藻土等が、ミクロン単位のばねの隙間に入り込んでフィル
ターの効果を出すという点だ。そして、この方法がメンテナンス不
要の秘密に大きく関係している。
通常、水の流れはばねの外側から内側に向かう構造なのだが、水流
を逆にすることで、助剤と残った物質が一気にばねの外側に排出さ
れ、隙間が綺麗に洗い流される仕組みになっている。これを定期的
に行うことで、常に目詰まりのない清潔な状態が保たれるそうだ。
しかも、逆水流で洗浄した水は別ルートで外部に排出し、残滓と汚
濁液に分けることで、残滓に含まれる有価物を回収し、汚濁液は再
度ろ過に回すこともできるため無駄が発生しない仕組みだ。
平成17年からは、バラスト水のろ過技術に関して九州大学と共同
研究を続けているそうだ。生態系保護のため、タンカー等の大型船
が、バランスを保つために船内に積んでいる海水を排水する際に、
浄化処理後の排水を義務付けることが世界的に検討されているらし
い。この新たな用途開拓を見据え、早めに準備を進めているようだ。
「ランニングコストはかからないし、金属、セラミック等のフィル
ターより安くしてるのに、なかなか買ってはもらえないです。もの
を作るのは得意ですが、売るのはからきし苦手なので、営業は息子
に任せました。ただ、なんせ小さな会社なので、営業といっても来
たものに対応するだけで今は手一杯といったところです。」と現状
について話してくれた。
自ら語ったように、立て板に水のセールストークが得意といった印
象はなかったものの、照れくさそうな笑みを浮かべつつ、言葉を尽
くして、一生懸命に話す姿からは、同社のものづくりに対する真摯
な姿勢が見えた気がした。
<取材協力> 株式会社モノベエンジニアリング
代表取締役社長
物部 長順
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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、金子
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