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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2012年3月29日 第45号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆削って使うダイヤモンド

東京に桜が咲き誇る頃には、慣れない足取りで学校に通う1年生を
目にするようになる。背中の真新しいランドセルには、描かれてい
るキャラクターは昔とはかわっても、学習帳、筆箱、鉛筆、消しゴ
ムといったお馴染みの筆記用具と教科書が入っている。..と思っ
ていたのだが、かわったのはキャラクターだけではないようだ。

三菱鉛筆株式会社は、社名となっている鉛筆の製造から始まり、筆
記具を中心に学校やオフィスで使用する様々な文房具を製造してい
る。鉛筆やシャープ芯等の炭素材分野の開発を行う群馬研究開発
センターの北澤氏に、ナノダイヤを使用した鉛筆について話をうか
がった。

初めは、鉛筆に比べて売上げ量増加が見込まれるシャープ芯の開発
を優先したらしい。2005年当時、同社のシャープ芯は業界最強
であり、この強度を変えず、なめらかな書き味を加味するためには
どうすれば良いかと悩んだそうだ。そこで、同じ炭素系の素材で、
相性も良いと考えられたナノダイヤの使用を思いついたという。

ただし、平行して、他の素材も片っ端から集めて試作を繰り返した
上で、最終的にナノダイヤに決定した。その後、製法により異なる
形状や品質等の違いを調べ、最適な品種を選択したそうだ。

また、高価なナノダイヤによるコスト面の解決と共に、全体的なバ
ランスから、シャープ芯の原材料である黒鉛等その他材料もかえざ
るを得なくなり、最良の組み合わせを見つけ出すための実験の日々
が続いたらしい。

結果、芯の強度はそのまま保たれ、鱗片状の黒鉛粒子の隙間にナノ
ダイヤが均一に入り込むことで滑りが良くなり、黒鉛が紙によく乗
るようになって見やすさも向上したという。

2008年にナノダイヤ入りのシャープ替芯を販売したところ、反
響が大きかったことから、翌年、満を持して鉛筆の開発を再開した
そうだ。

通常、鉛筆の芯は、粘土と黒鉛を混ぜて焼き固めた後、ラードに浸
して完成となる。そこで、シャープ芯同様、粘土と黒鉛粒子の隙間
にナノダイヤが入り込むことで滑りが良くなるはずだと考えたという。

しかし、鉛筆は原材料全てが天然であるため、産出国による微妙な
違いや製造時期等による影響を受け易いらしい。このため、元来、
製造現場の経験による調整余地を残すことで、逆に、均一な製品と
なるようにしていたそうだ。

そこで、ナノダイヤを用いた新たな配合を見つけ出すという地道な
作業が始まったが、ここでシャープ芯の開発で貯えられた知見が役
立ち、2010年には、ナノダイヤ入りの鉛筆が完成したのだ。

この鉛筆は、ナノダイヤの特性を活かし、筆圧の弱い子供でもしっ
かりと濃い字が書けるように、小学校低学年向けの製品として開発
したそうだ。その際、ラードを専用の特殊オイルに変えることで、
テカリを押さえ、黒さがより引き立つようにしたという。これによ
り、摩擦低下も線の濃さも10%上昇したのだ。

「鉛筆の製法自体、かなり前から確立されており、新しい技術開発
が難しい状況にあることは確かです。しかし、当社は鉛筆からス
タートした会社ですので、キャラクターに頼るのではなく、技術に
立脚した製品を世に出して行きたいという思いがありました。」

そんな北澤氏の一言は、このこだわりと熱い思いが、1966年以
来、45年ぶりとなる新たな鉛筆を生み出したに違いないと確信さ
せてくれるものだった。

 

<取材協力> 三菱鉛筆株式会社群馬研究開発センター担当課長 
北澤 勝徳、社長室広報担当 飯野 尋子

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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、金子
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