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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第40号

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2011年10月27日 第40号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆水で発電する単3型電池

東日本大震災の後、一時期、様々な品物が店頭から消えた。パン、
牛乳、納豆、ティッシュペーパー、乾電池等を求め、スーパーや商
店を歩き回った方も多かっただろう。特に、屋外や避難所、自宅で
も停電等で電気が通じない場合に、懐中電灯、ラジオ、携帯電話の
充電等に必要な電池はかかせない。

しかし、乾電池を防災用に購入しても、自然放電により、一定期間
を過ぎると使用出来なくなったりすることがある。だが、未開封で
あれば20年近く長期保存が可能な、水電池と呼ばれる単三型の電
池が既に販売されているのだ。これを開発した日本協能電子株式会
社の石川代表取締役社長に話をうかがった。

2003年に会社を辞め、起業の準備をしていた時に、水電池を動
力とする時計等を製造していた友人を通じ水電池に出会い、これだ!
と思ったそうだ。自然界に存在する物質のみを材料としており、こ
れを乾電池の形状にし、同等近い能力を持たせることが出来れば、
用途が広がり必ず売れると考えたという。

そして、友人と一緒に会社を立ち上げ、2007年6月に安全で環
境に優しいをコンセプトに水電池を販売したそうだが、当時の製品
は、乾電池に比べかなり値段も高かったため、販売当初は全く売れ
なかったらしい。

そこで、軽量で長期保存が可能、使用時に、わずかな水が必要だが、
使用後は不燃ゴミとして廃棄できるという特性から、この電池の能
力が活かせる災害時用品として販売していくこととしたのだが、そ
れでも余り売れず、会社は厳しい状況が続いたそうだ

水電池がクローズアップされたのは、残念な話だが、東日本大震災
の後になってからだ。買い置きしていた乾電池の保存期限が過ぎて
おり、使用できなくなっていたという状況が発生したらしい。そこ
で、通常の乾電池で使用可能な機器に利用でき、長期保存が可能な
水電池に注目が集まり始めたのだった。

水電池の原理は、乾電池と大きく異なるわけではなく、金属で出来
た電極2つの間に電解質を含む水があるだけの、中学校の理科の実
験にも使われたことがあるくらいシンプルなものだ。根本的に違う
のは、乾電池には製造段階でこれらが全て含まれており、すぐに使
用出来るが、水電池は、使用する際に水を入れることで発電が始ま
るという点だ。このため、保存中に自然放電することがなく、長期
保存が可能となっている。また、水に限らず、ジュース、コーヒー、
尿、唾液等の水分でも発電が可能なのだ。

一番苦労したのは、安全性を保つため、電池の液漏れや変形を起こ
さない構造を作り上げることだったそうだ。注水により発電が始ま
ると内部の物質が膨張するため、外側の材質・構造等の強度を高め、
更に、内部の圧力を逃がすような工夫等を加え、変形しない構造を
作り出したのだという。 

「当初、共同開発してくれる大手メーカーを探したのですが、どこ
も本気で取り合ってはくれませんでした。確かに、原理は昔からあ
りますが、このような電池型にして発売しようと考えたのはうちだ
けです。」と少し誇らしげに石川社長は話してくれた。

今後は、より多くの機器に使用できるよう、電力量を更に上げたい
と考えているという。また、災害時用品とは全く違う分野だが、水
電池の原理を用いた尿センサーを開発し、人手不足が深刻な介護分
野での活用も考えているそうだ。

日常生活において、お金を払って買った物を使わないでいるのは
もったいないことだが、本来の用途で水電池を使う機会は、やはり
来ない方が良い。しかし、これで約20年先までの安心が手に入る
のであれば、その意義は大きいのではないだろうか。

<取材協力> 日本協能電子株式会社代表取締役社長 石川 忠

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