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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第44号

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2012年2月23日 第44号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆100%植物由来

子供の頃は絵本や図鑑、学校に入れば教科書や辞書、大人になれば
新聞に雑誌等、私達は様々な印刷物に囲まれて暮らしている。意識
するのは書かれている情報で、紙の上に見えているインキ自体を意
識することはないだろう。しかし、この印刷インキについても、新
たな技術が開発されていることをご存じだろうか。

現在、世界中で供給される商業印刷物は、オフセットという方法で
印刷されているものが多い。原材料である顔料や樹脂から、オフ
セット印刷インキを初め多様な印刷インキを製造している東洋イン
キ株式会社プリンティング技術統括部の落合氏に、米ぬか油と再生
植物油を用いたオフセット印刷インキについて話をうかがった。

大まかに言うと印刷インキは、色の元である顔料、ベースとなる樹
脂、インキ表面に被膜を作り乾燥させるための油、その他様々な調
整機能の助剤と言われる成分から出来ている。

元々は、植物系のアマニ油等と石油系の鉱物油が使われていたが、
1990年代を過ぎた頃から、限りある資源である石油の使用を減
らす目的で、植物油が多く用いられるようになった。当時は、大豆
油が一般的であったが、品質的に全てを変更することは難しく、あ
くまでも石油との併用であった。

この後、持続可能な循環型社会に向けた製品開発が進められていく
のだが、この過程で3点大きな変更をしたそうだ。

1点目は、脱石油化を更に進めるべく、2000年ごろから始めた
100%植物油インキの開発だ。しかし、開発当時の品質は今と比
べると格段に劣るものだったらしい。

2点目は、世界的な食糧危機の懸念や輸送によるCO2削減の観点
から、食用でもあり、大半を輸入に頼っていた大豆油の使用をやめ、
代わりに国内で自給出来る米ぬか油を使用したことだ。

2008年に、最初の製品を発売したそうだが、大豆油に比べ乾き
にくい米ぬか油を使いこなす為にはインキ組成の変更が必要であっ
た。加えて、開発を進めていたインキ中に石油系溶剤を一切使用し
ない100%植物油インキへと展開するには更なる改良が必要で
あった。

そこで、補助剤の成分や比率だけでなく、ベースとなる樹脂自体を
大幅にかえ、従来のインキと同等以上に乾きやすく、扱いやすい製
品に改良したのだ。しかし、撥水性を利用するオフセット印刷では、
印刷インキの成分同士だけでなく、水との相性も考慮しなければな
らず、開発者も苦労させられたという。

3点目は、再生植物油への展開だった。こちらは食糧問題の改善や
環境負荷の低減に寄与するだけでなく、廃棄物の減量にも貢献する
のだ。主に、学校給食、食品メーカー等から使用済みの植物油を回
収し、精製販売している事業者から購入しているという。

これらの改良を重ね昨年発売された新製品は、優れた環境負荷低減
が期待され、第8回エコプロダクツ大賞優秀賞を授賞したのだ。

同社は海外生産も行っているが、地産地消という考え方に基づき、
マレーシアでは、椰子から作ったパーム油を原料とした印刷インキ
を製造し、近隣諸国に輸出しているそうだ。

一見同じように見える印刷インキも、それぞれの国に適した環境に
優しい植物油が用いられている。そんな事実を知ってから目にする
印刷物は、今までよりも少しだけ輝いて見えたような気がした。

<取材協力> 東洋インキ株式会社プリンティング技術統括部技術
2部第4課 落合 可江、経営企画部プロモーショングループ
山崎 美紀

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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:白井、金子
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