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産業技術メールマガジン/技術のおもて側、生活のうら側 第29号

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◆技術のおもて側、生活のうら側  2010年10月28日 第29号

こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。

◆進化する液体移送

普段、何気なく使用しているテレビやパソコンに使われている液晶
ディスプレイには、表面を保護し、外光の映りこみを防ぐために何
種類もの機能性フィルム(光学フィルム)を貼り合わせている。

画面の大型化や美しい画像に対応するためには、フィルムの膜厚を
コンマ数%以下のレベルで一定に保つ技術が必要とされている。
...といっても、今回の主役は、液晶ディスプレイでも光学フィ
ルムでもなく、それらの生産を陰から支えているポンプである。

1956年の創業以来、一貫してポンプの製造・販売を行ってきた
株式会社タクミナで、同社が開発した脈動のないダイヤフラムポン
プについてお話をうかがった。

ポンプと聞いてまず想像するのは水の移送。しかし、今や鉄鋼、化
学、製紙等といった産業プラントや、医薬、バイオテクノロジーや
燃料電池といった最先端分野の工場では、水以外の多種多様な液体
の移送に使われている。そこで求められる機能もどんどん高くなっ
ている。

薬剤や特殊な液体に使われる従来のダイヤフラムポンプでは、完全
密閉構造で異物混入や液漏れがないという特長はあるが、心臓から
流れ出る血液のような脈動が起きてしまう。その脈動により振動や
騒音が発生し、ポンプのみならず配管等の設備にも負荷がかかる構
造となっていた。

また、配管内のエネルギーロスも大きく、太い配管を設けるか脈動
減衰器などの補助機器の設置が必要であった。

このような中、脈動率の少ないポンプの開発はメーカーにとっての
大きな課題であったが、そこで山田社長が掲げたのは、脈動率1%
以下のポンプの実現というとてつもなく高い目標だった。

流体機器開発グループの研究者達は、従来のポンプで使用していた
カムを全く新しい機構のものに切り替えるなどのアイデアを具体化
し、1年後には試作機を完成させ、3年後には製品化にこぎ着けた
のだった。

脈動がないことによる利点は非常に大きい。まず、ポンプ効率が高
く、より小型のモーターでの移送が可能となるため、省電力でCO2
削減にも貢献できる。

生産工程から見ると液体の流量を一定にできるため、流量計を用い
た自動制御も簡単に行える。また、ポンプ内でも液体に過大な圧力
をかけないため、液質の変化もなく、高機能薬品の移送を安全かつ
簡単に行うことが出来るようになった。

冒頭で触れた光学フィルムのコーティングや、携帯電話の外装の塗
装の際、従来式のポンプを使うと脈動のため塗装ムラが生じやすく
製品のエラーにつながっていたのだが、このポンプのおかげで塗工
・塗装技術が格段に向上したという。

「脈動のないダイヤフラムポンプの生産は、まだポンプ全体の3割
程度だが、この機能を必要としているユーザ-は多い。一人でも多
くのユーザーの問題解決のために役立ちたい。」と山田社長は語り、
実物ポンプを載せた「ポンプ道場」という愛称の研修専用トラック
を全国のユーザーの工場に走らせている。

ポンプは、人間の体にたとえると血液を押し出す心臓に相当するが、
その働きは、まさに生命にかかわるものである。様々な場面で使わ
れているポンプは、私達の目にはあまり触れない裏方だが、実は現
場の生命線と言えるのかもしれない。

<取材協力> 株式会社タクミナ 代表取締役社長 山田 信彦、
東京支社長 早坂 孝之、
流体機器開発グループ主任研究員 伊藤 寿英

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