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産業技術メールマガジン 技術のおもて側、生活のうら側
◆技術のおもて側、生活のうら側 2010年2月25日 第21号
こんにちは。ご愛読頂き、心より感謝いたします。
このメルマガでは、身近な生活シーンから、社会生活に密着した産
業技術を生活者の目線で紹介していきます。私たちの暮らしを支え
る産業技術を身近に感じて頂ければ幸いです。
「地震が起きたら火を止めて」と以前はよく言われたが、最近はあ
まり聞かない。消防庁でも「地震が起きたら、身の安全の確保を優
先」と言っている。これは、キッチンなどで火を使っていても各家
庭に設置されているマイコンメーター(ガスメーター)が、震度5
程度の地震で自動的にガスの供給を停止して消火するということも
貢献しているという。ではその先は?
いざという時のための防災システムが、人知れず整備されているら
しい。今回は、東京を中心とした首都圏にガスを供給している東京
ガスにお話を伺った。
なんと、東京ガスの供給エリア内では、世界でも例を見ない高密度
の地震防災システムが整備されている。道路の下に網の目のように
張り巡らされているパイプライン(ガス導管)の各所で、地震の揺
れを観測してガスの供給を停止する機能が整備されているのだ。
このシステムには非常に多くの工夫がされていてとても興味深い。
全てはご紹介できないが、大きなポイントは2つだ。ガス導管が破
損するなどの被害のあった地域一帯の二次災害を未然に防止するた
め、ガス供給を迅速に停止する。そして、被害のない地域へはガス
供給を継続する。ガスの供給停止地域を限定して最小範囲に抑える
ことによってライフラインの早期復旧を図るのだ。
このためには細かい単位で地震の状況を把握、被害を推定する必要
があり、ここで活躍するのが、このシステムの要である地震計「S
Iセンサー」だ。これが首都圏には約4,000個も設置されている。
気象庁や自治体等の地震計が全国で約4,200個というから、SIセン
サーがいかに高密度かということが判る。
地震の激しさの指標は、体感的なものとしては「震度」、測定値と
しては「最大加速度」を用いるのが一般的とのことだが、この最大
加速度は、瞬間的な測定値であることから、地震被害との相関が低
いケースがあり、被害の程度を必ずしも表していないらしい。
一方、SIセンサーでは、「地震によって家屋などの一般的な建物
がどれだけ揺れるか」を表す「SI値」を測定する。揺れの大きさ
だけでなく、どの位のタイミング(間隔)で、どれだけ継続して揺
れていたのかを測定するのだ。
最大加速度が同じであっても、その揺れのタイミングや継続時間に
よって、建物に与える影響には相当違いが出るらしい。
揺れのタイミングが建物に与える影響をイメージするにはブランコ
を想像してみて欲しい。ブランコを押して数秒後に戻ってきたその
タイミングにもう一度押してあげれば、更に大きく振れる。それが
空中ブランコのように長いものであれば、普通のブランコより戻っ
てくるまでの時間が遅いため、普通のブランコと同じタイミングで
押しても揺れが大きくなることはない。これと同じだ。建物が地震
の揺れによってある方向に押され、戻ってきたちょうどその時にも
う一度揺れによって押されれば、揺れは更に大きくなる。
一般的な建物では、0.1秒から2.5秒の間の揺れが繰り返されると大
きく影響を受けるそうだ。そうした性質の揺れがどれだけ速く、大
きく、長く続いたかということを計算したものがSI値とのこと。
このSI値を測定するSIセンサーが、約900m四方に1基とい
う高密度で設置され、きめ細かな単位で制御されている。建物に大
きな影響を与えるであろう程度の地震の揺れを感知するとガスの供
給は自動的に停止され、更に被害の大きかった地域一帯で自動停止
していない箇所があった場合は東京ガスの本社から遠隔操作によっ
て遮断できる。こうして地域一帯のガス供給をコントロールし、二
次災害を確実に食い止めるというシステムだ。
ガスのパイプラインはガスを送るためだけのものではなく、緊急時
の防災ラインとしても威力を発揮する頼もしい見張り番だったのだ。
<取材協力> 東京ガス株式会社 防災・供給部 萬來 雄一氏
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発行:経済産業省産業技術政策課 担当/執筆:森澤、仲
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