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「公共施設における誘導用音サイン」に関する国際規格が発行されました

視覚障害者の安全と安心を守る音~「聞き取りやすさ」が国際規格に~

 駅で鳴っている「ピーン・ポーン」という音、耳にされたことはありませんか?
 ご存知の方も多いかもしれません。あの音は、特に視覚障害のある人に、駅の改札口や建物の出入り口などの位置を知らせる、大切な「誘導サイン」の一つなのです。
 今回、この「誘導サイン」にふさわしい「聞き取りやすい音の特性」を規定した国際規格が、日本提案のアイデアの下で新たに発行されました。

1.規格制定の背景
 「ピーン・ポーンとは聞こえるけれど、いったいどこで鳴っているんだろう?」と疑問に思ったことのある方もおられるのではないでしょうか? 音には、ヒトの耳で聴いたときに、発生源の位置が分かりにくい音と分かりやすい音のあることが知られています。せっかくの誘導サインなのだから、その位置ができるかぎりわかりやすい音の利用が望まれます。
 公共交通機関や建物などで視覚に障害のある人たちの移動を助けるこの「ピーン・ポーン」の「誘導サイン」が使われ始めたのは昭和51年。当初は、視覚障害者に関連する施設の入り口や点字図書館などの周辺への設置にとどまっていましたが、徐々に、不特定多数の人が利用する駅へと広がっていきました。

従来のピーン・ポーン♪(wav形式:238KB)

 ところが、広く普及してきた従来の「ピーン・ポーン」には、周囲の壁や天井などに反響してしまってどこで鳴っているのかがわかりづらかったり、特定の騒音下では聞こえにくかったりといった難点がありました。どこで鳴っているのかがわかりにくいので、その分音量を上げなければならないという問題もありました。

2.規格のポイント
 今回、日本からの提案で発行された国際規格は、「ISO 19029 アクセシブルデザイン-公共施設における聴覚的誘導信号」という名称で、視覚に障害のある人々の誘導に使用する「音サイン」に適した音の特性と、望ましい音響装置の条件を規定しています。
 規格のポイントは、
 (1) 「音サイン」に適した音の立ち上がりの速さ
 (2) 「音サイン」に適した音の周波数成分
 (3) 「音サイン」に適した音の量子化精度と圧縮率
 (4) 「音サイン」の再生に適したスピーカーの設置位置と設置方向
 (5) 「音サイン」と周囲の騒音の大きさの関係
で、下図のように表される音の成分をもつ、新しい「ピーン・ポーン」が「聞き取りやすく、方向定位のしやすい音サイン」の一例として規定されています。

包絡線

新しいピーン・ポーン♪(wav形式:521KB)

 上図のような音の国際提案にあたっては、日本で約50名の視覚に障害のある人を対象に、6種類の異なる音を使った聞き取り実験が行われました。また、国内でも、この提案と平行して、JIS T 0902(高齢者・障害者配慮設計指針-公共空間に設置する移動支援用音案内)を立案し、平成26年に制定しました。

3.「移動支援用音案内」の国内規格
 JIS T 0902(高齢者・障害者配慮設計指針-公共空間に設置する移動支援用音案内)では、「音サイン」に適した音の特性だけでなく、そのような音を用いた「チャイム」の鳴らし方や、自動放送等の「言葉」による案内、鳥のさえずり音や水音のような「自然現象から類推できる音」による誘導案内についても規定しています。また、音による誘導案内が周囲の音環境にもたらす影響について考慮していることも、このJISの特徴です。
 このJISの内容は、バリアフリー法の移動等円滑化基準の望ましい整備のあり方を示した「バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編)」(平成25年改訂)(以下リンク参照)にもいち早く取り入れられ、現在、その内容に基づいた音案内が国内の駅等で普及し始めています。
 たとえば、駅の改札口に係員がいる窓口が併設されている場合、「ピーン・ポーン」の誘導案内は、このガイドラインに基づいて、その窓口付近に設置されています。これによって、視覚障害のある人も、その音を頼りに、改札の位置がわかるだけでなく、駅係員の居場所をも知ることができるのです。

4.国際的な普及を目指して
 音による誘導案内は、特に視覚障害のある人にとって、安全な移動の手がかりとなるとても大切な配慮です。周囲の環境も考慮した日本生まれの「聞き取りやすい」音が、今後、国際規格の発行をきっかけに世界に広まっていくことが期待されます。

お問合せ先

産業技術環境局 基準認証ユニット 国際標準課 高齢者・障害者支援担当
E-mail:jisc@meti.go.jpメールリンク
電話:03-3501-9277(直通)
FAX:03-3580-8625

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